二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼   ———刹那の契り——— ( No.290 )
日時: 2013/02/17 11:20
名前: 亜鶴 (ID: V9P9JhRA)

リメイク版 第十一話 同じ…


 琴音をこの部屋へと誘導してきた土方は、戸を閉め静かに腰を下ろした。

「お前はそこに座れ」
 
 言われた通り、指定された場所に渋々座る。
 

「あなた方は一体…何者なんですか?」
 恐る恐る尋ねる琴音。


「新選組だ。俺は局長の近藤勇。こちらの山南君は総長で、こっちは歳、いや土方歳三は副長…「近藤さんっ!!これから詮議する相手に自己紹介はないんじゃねぇのか?」と新選組局長は、隅っこの人に注意された。他の人はクスクス笑っていた。


(新選組!?嘘でしょ…)

(けど、新選組って京の町では恐ろしい“人斬り集団”って耳にするけど、…局長さんは優しい)

 意外な新選組の一面を知り、驚く。


 だが、すぐに土方によって話は切り替えられた。
「で、この冊子は何だ?」
 土方の鋭い視線が琴音に突き刺さる。ほかの人たちも加勢して、琴音に視線をぶつける。これは罪を犯した罪人を見るような目つきだった。


(うっ、千鶴ちゃんまで…そんな目つきで見るんだね)
 少しがっかりする琴音。


「私にはその冊子にどんな内容が書いてあるのかは、分かりません」
 素直に言うが、皆の目つきは変わらない。


(あの冊子は新選組と何の関係があるの?)



「そんな嘘が通じると思っているのか!疑わしい奴はそう言うんだよっ!」
ときつく怒鳴られる。
 それにビクっと体が震えた。


「何で!?私が疑われなきゃいけないの!?私、何も悪いことしてません!!」
 琴音はたまらず癇癪(かんしゃく)を起こす。


「それ本当かなぁ?正直に言わないと、君斬っちゃうよ?」
 沖田は怪しい笑みを浮かべ、そう言う。


「あなたねぇ!私は頼まれた身なんです!ですから、詳しくは知りません!
そもそもあなた方はそんなことを聞き出して、どうしようとするんですか!?」

 一気に抑えられない言葉を吐く。


「何が、目的なんですか!?町民の届け物に、何か問題でもあるんですか!?」


(更新再開)
琴音の問いにその場の空気が重くなる。だが、数秒した後、山南が口を開く。

「土方くん、彼女が知っていい範囲であれば…こちら側の事情を説明してあげては?」

土方は叶わないなという表情で、あぁと頷いた。

「お前が持っていたこの冊子は幕府の密令とまったく同じことが書かれていた」


「幕府の密令…!?それって何ですか!?」

「これ以上は教えられません」

「まぁ、君がもう二度と外に出れなくなりたいと言うのなら、別だけどね。あはは」
 沖田はそう言う。
 
 沖田の言葉に、琴音はぞっとした。

「それよりこの冊子はどこで手に入れたんですか?」
 目を険しくさせ、山南は琴音に問う。


(幕府の密令…あの冊子には相当重要なことが書かれているのね。けど…どうしてそんなものを父様が?)

(幕府に、新選組…何かしら答えなきゃ、自分の身が危ないかもしれない。父様には悪いけど、言うしかない!)

 身の危険を察して、決意をする琴音。

「父から預かりました」


「君の父親の名前は?」
 近藤は尋ねる。

「橘 幸成です」

 その言葉に、千鶴以外の人達は驚く。
続けて、琴音は全て告白する。

[回想]

 私は父に頼まれたんです。あの風呂敷を【笹木屋】という旅館に宿泊する【雪村綱道】氏に届けろとのこと。

 私に風呂敷の中身を教えてくれなかったこと。
 
 路地を迷っていたところ…見知らぬ男に声を掛けられて、風呂敷を狙われたこと。

 父に風呂敷は誰にも渡すなということだったので、必死に守ったのだが、その男がとても強くって、私には叶わなかったこと。


「以上です。その後のことは知りません」


(更新再開)
 皆は驚きを隠せない様子だった。

「幸成さんは綱道さんと未だ通じていたと考えられるな」
「あの人ら、裏で何をこそこそとやっているんだろうな?」
「そりゃあ、疚(やま)しいことだろう」
 そんな幹部らの呟きが脳裏を過ぎると、
「疚しいこと?父は疚しいことをする人ではありません!」とまたもや癇癪を起こしてしまう琴音。


「落ち着いて下さい」
 山南の言葉で正気を戻す。
「貴女の事情はとりあえず分かりました。次に我々の事情を聞いてもらいたい」


 
 
 彼らがまだ【壬生浪士組】と名乗っていた頃、幕府からある物を作り出せという命が下り、千鶴の父【雪村綱道】とその助手【橘幸成】によって、それは作り出されたらしい。
 しかし綱道が詰めていた診療所で火事があり、それ以来二人の行方は分からなくなっている。
 何らかの事件に巻き込まれたとみて、新選組は行方を捜しているそうだ。


 事情を聞いた後の琴音は戸惑っていた。


(家族で、一番信頼していた父様のこと…思い返してみれば、私何一つ知らなかったのかも)

(私の知らない父様)

(この人達が言ったように、父様は疚しいことをする人なのかも。けど、けど!)


———私の父様は泣いている子供がいたら、真っ先に駆け寄って声を掛け、自分が拵(こしら)えた菓子をあげる優しい人

———父様の菓子は人を幸せにできる


———そんな父様のことが大好きで、尊敬していた。そんな人が疚しいことをするはずない


 そう思いたいのと裏腹に、父を疑ってしまう自分に恨めしく思ってしまった。
 そっと涙を浮かべる。

「…泣かないで下さい」
 千鶴も辛そうな表情をして、声を掛けてきた。彼女も涙を浮かべていた。


「千鶴、お前は自室に戻れ」
 土方がそう言うと、千鶴は頷き、立ち上がった。そして部屋から立ち去っていった。


「お前らは似てるな」


「あいつはな、綱道さんを捜しに京まで一人で旅をしてきたんだ。知らぬ内に密令に巻き込まれてしまい、その密令に綱道さんが関わっていたことを知っちまったんだ」
 

「っ…」

(どうして女の子が新選組にいるのかと思っていたけど、千鶴ちゃんも巻き込まれた側なんだ…)
 
 

 “琴音と千鶴の共通点”








続く




読むのお疲れ様です。

ご感想やアドバイス下さいな(*゜▽゜*)