二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼   ———刹那の契り——— ( No.300 )
日時: 2013/03/10 10:27
名前: 亜鶴 (ID: V9P9JhRA)


リメイク版 第三話 緋色ノ着物


(綺麗…私なんかよりも)



緋色の着物。
それも女物の着物だ。
それを身に纏った少年の麗しい姿に琴音は見惚れていた。

「琴音さん、着物ありがとうございます」
少年は礼を言ってきた。
「よかった…大きさぴったりどすな。それとごめんなさい」

「平気ですよ。誰だって失敗はあります」
ふわりと微笑み、そう言う少年の言葉は琴音にとって救いだった。
そっとありがとうと伝える。





「それにしても…お客はんがおなごはんだとは気づきませんどした。私、そそっかしくて、鈍いんどす。だから気づかへんかった。ふふっ」
自身の短所に苦笑い。
琴音の言う通り、少年の正体は男装した少女だった。
二人は向かい合って、笑いあった。

「あなたのお名前は?」
琴音は少年いや、少女の名を尋ねた。

「雪村千鶴です」

その苗字になぜだか、ずきっと心が痛んだ。
「……っ。千鶴ちゃんって呼んでええかな?」
千鶴はコクりと頷いた。

「私のことは琴音でええよ」
「じゃあ琴音ちゃんでいい?」
「うん、それでええよ」


「千鶴ちゃん、これも何かのご縁や、私と友達になってくれへんかな?」
まさかの申し出に千鶴は驚いた素振りを見せるが、
「え!?私で良ければ、全然いいよ」と言ってくれた。

「千鶴ちゃんだからこそ、なりたいの」
「ありがとう、琴音ちゃん」



こうして舞妓と客の関係から友達になった琴音と千鶴だった。



「さあ、お座敷に戻ろうか?お連れはんも待っとることやし」
と声をかけ、戸を開け放つ。
振り向いて、千鶴を見る。
すると彼女の頬は真っ赤に染まり、決して琴音とは目を合わせなかった。
「千鶴ちゃん、どうしたの?」
「沖田さんたちにこの格好…見せるの恥ずかしくて」
もじもじと恥じらう千鶴。
そんな彼女を見て、琴音は
(初々しくて、可愛いなこの子)と思い、ふふっと微笑む。
そして千鶴の後ろに回り込み、
「大丈夫や、千鶴ちゃん。綺麗やし、恥ずかしがることなんてないわ。もっと自信を持って!」
肩をとんと押して、勇気づけた。
すると千鶴はちらっと後ろを見て、苦笑いした。
その仕草はとても愛らしかった。




その部屋を出ると、外は相変わらず真っ白な雪が降っていた。
(寒いな…)
小刻みに体が震えた。
早くお座敷に入りたい衝動を抑え、長い廊下を歩いた。
向かうは一番奥のお座敷へ————




続く



まだ続きがあるんですが、今日はここまで!

感想、アドバイスなどください