二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ小説集 ( No.4 )
日時: 2011/12/06 18:42
名前: 藍蝶 (ID: gZQUfduA)
参照: ごめん緑翠、ノートがないからどこまで書けばいいか分からん^^;

第1話 鈴視点


また、まただ。

「マジ可哀そう!独りでよくいられるね〜」
「え〜、慣れたんじゃない?」
わざと大声で話す悪口。皮肉ったらしい。
独りぼっちの僕はただただ、何も書かれていない黒板を凝視するだけで休み時間を終わらせていた。
でも大声は笑う集団が存在するのはどこでも当たり前なわけで、同じ部屋で笑う奴らが憎かった。僕の事を嘲笑っている事が多いのは、周知の事実である。
予鈴が鳴った。聞きなれた福音、すぐに教室を飛び出す。移動教室の授業だ。

授業中でも当たり前の様に小さい嫌がらせが続く。「死ね」と書かれた紙がそこらから沢山飛んでくる。僕は読むことのない紙切れが犠牲になるのを、たまに同情していた。いや、同情するようになった。
(アンタ達も千切られて捨てられて可哀そうね)
授業中、催眠電波を流す教師の前で寝ることはなかった。紙切れが飛んでくるせいで。おかげで授業はまともに聞けるから、感謝すればいいのか。

帰り際いつも耳元で囁かれる言葉。
「お前、家に父さんも母さんもいなくてどうしてんの?独り虚しくただいまですか〜あ?」
一度ムカついて相手を殴り飛ばした。なのに、担任はこっちの非しか言わない。味方がいないと分かったのは、まさにその日だった。

「……あ」
雨がポツポツと降り出した。今日は傘持ってきてないんだっけ。
置き傘はあるかな、と一瞬思って諦めた。多分”また”壊されてるか誰かに取られてるんだろう。
仕方ないからそのまま通学路に出た。靴の中に雨水が滲みて、とても冷たかった。僕のところまで走ってきた女子達は傘を半開きにし、また勢いよく開けることで溜まった水滴を僕に向かって飛ばしびしょぬれにさせた。
僕が顔を上げた時、彼女等が遠くに笑いながら走っていくのが見えた。
勢いを増す雨は、虚しくて悲しくてさびしい、まるで僕の心の中同然であった。


また次の日も、その次の日も同じような内容だった。
独りでいる、笑い話にされる、ハブられる、帰る。もう飽きた。
今日も独りで本を読んでいたら、隣の席の男の子が数人の取り巻きを連れてやってきた。
「鏡音さんだっけ。同じ苗字の人だよね」
同じクラスの女の名前くらい覚えろ、とは言わなかった。
「何」
「いやちょっとさ、皆笑ってるのに鏡音さんだけ笑ってないな〜って」
「それで?」
「うん」
「そう」
「……あのさ、鏡音さん」
「何」


「笑ってみたら?」

その言葉は僕の腹を立たせるのに十分過ぎた。
バンッと勢いよく本を机に叩き付け、立ち上がった。その音に周りがいっせいに静かになる。
「僕だって好きで無愛想じゃないんだ!!アンタみたいな人気者がそれ言うとホント腹立つ!!!」
それを僕が言った後、皆何も言わなくなった。
もう一人の鏡音さんが何か言い返すのを待っていたけれど、何も言わず固まっていたので、諦めて
「もういい」
とだけ言って、逆回しした様な動作で席に座りなおした。
————これだから嫌なんだ。人と関わるのは。皆が元に戻ったのは、僕が本を読むのを再開して二行目に差し掛かった辺りだった。