二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

            第一話  『真実の先触れ』 ( No.5 )
日時: 2011/12/03 13:50
名前: ミズキュウラ・ドラッテ (ID: 9ySylEp9)







 いつもの公園で、僕は彼女を待っていた。塗装が剥がれたベンチは、今や元の色が判らないほどにボロイ。此処の公園には正式に腰を落ち着かせるところがこのベンチしか無く、必然的に僕は座る羽目になっているのだ。
 
 それにしても、この公園はこんなにも寂れていただろうか。休日なのに、誰もいないなんて…。

 少なくとも僕が知っている限りでは、此処は人気があったはずだ。近くに住む家族連れが多い故に。今では、錆が目立つほどに廃れてしまっている。
 「————待った?」
 「え?」
 突然声をかけられて、僕は間抜けな声を上げた。声の主が誰であるか判っているのだが、近づいてくる気配が無かったので心底一驚する。
 「ごめんね。折角のデートなのに遅れちゃって」
 彼女は申し訳ない笑みを幼い顔に浮かべて、僕の隣に腰を下ろした。…いや、ぼくとしては、こんな寂れてしまった公園の錆びれてしまったベンチに彼女を座らせてしまうのが、申し訳ない。
 「ううん。待ってない待ってない。俺も今来たところだから」
 風の吹く音を聴きながら、僕は彼女を見た。その瞬間。
 ——あれ?
 何かが心に引っかかった。何かが足りないと思った。彼女自身は特別何も変じゃないのに(むしろ可愛いくらいだ)、それが足りないだけで全てに違和感を感じた。…何だ?
 「どうしたの?」
 僕が固まってしまったのに異変を感じたのか、彼女が瞳を覗き込む。そこではた、と僕は気づいた。
 「——…そうだ、猫だよ」
 「へ?猫…?」