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二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- 第一話 『真実の先触れ』 ( No.6 )
- 日時: 2011/12/03 14:10
- 名前: ミズキュウラ・ドラッテ (ID: 9ySylEp9)
何を言われてるのか判らずキョトンとするので、僕は彼女に言った。
「うん、猫。君はいつも出かけるとき猫を連れるよね? 散歩の次いでと。今日は…違うのかい?」
「————……っ」
途端の彼女の表情ったら、なかった。隠してたものを暴かれた、そんな意味が取れる瞳の奥で、僕を見る。
しかし、それは束の間。彼女は状況を読み込むと、何事も無かったかのように平静を装った。
「…えっと、今日は…ほら。デートでしょ? だから…連れて来てないの…」
だめだった?と上目遣いで言外に告げるもんだから、僕は目をそらした。やばい…。今のは効いたぞ。
「———でも、どうしてそんな事訊くの?」
そんな事…ね。
でも、どうしてだろう。僕自身にも意味がわからない。ただ猫が居ないだけで、こうも不自然に移るものなのかと戸惑っている。
それに対し、彼女が「デートだから」という最もな理由を述べられても、納得していない自分が居るのも確かだ。
——どうしてだろう。
猫が居ないだけでこんなにも不安で、それでいて安心なのは何故だ。
何も変わらないのに——————
『夏は、嫌いかな』
「は?」
僕は思わず彼女を振り返った。
「な、何?」
唐突の反応に彼女は驚いていたが、僕は構わずに訊く。焦燥感が、胸を突いた。
「…前にも、さ。こんなやり取り…した?」
「…っ、し、してないと思う…。デジャヴ…何じゃないかな…?」
笑いながら必死に誤魔化す彼女。僕はそんな彼女を見ながら確信めいた物が自分の中に生まれた。
彼女は、死んだんだ。
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