二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ぬらりひょんの孫〜愛してくれたから〜 コメント募集中!! ( No.13 )
- 日時: 2011/12/03 23:13
- 名前: このみ (ID: 1kkgi9CM)
第四幕 落とすは落とすでも…
夜の山。
二人の若(そうに見える)い男女が歩いていた。
男が女を抱きあげながら…。
『あの…下ろしていただけませんか…?』
「はっはっはっ」
『笑い事じゃありません!!!』
男、ぬらりひょんは、女、輝夜をじっと見つめた。
輝夜は顔を赤らめながらも少し睨む。
そこでぬらりひょんが、ぼそっと呟いた。
「やっぱりお主、綺麗じゃのぅ」
『いっ!?』
「『絶世の美女』にも負けんくらい、綺麗じゃ」
『……出会って速攻口説くのはどうかと…』
「速攻じゃないわい。結構経っとる」
『……』
一時間も経ってませんけど…と言いそうになったのを、輝夜は飲み込んだ。
この男に何を言っても聞かない、そう思ったのだ。
やがて、輝夜の住む寺が見えてきた。
『ここです』
輝夜はぬらりひょんに下ろしてもらうと、少し急ぎ足で寺の前まで行った。
この寺は、昔はそれなりに有名な寺だったそうだが、もう輝夜以外誰も住んでいなく、建てられてからかなり経っているため、廊下などは歩くと少しだけ、ギシギシ、という音をたてる。
輝夜はこの音が好きだった。一人の時も、一人ではないような気がしたから。
『中にお入りください』
「おう」
客間に通し、輝夜は台所に行ってお茶の準備をし始めた。
その時————
『!?』
「なぁ、輝夜」
ぬらりひょんが輝夜の後ろに立ち、抱きしめていた。
『は、はい!?』
「うちに来ないか?」
『…え?』
「ワシの屋敷に来ないか?」
『……』
その言葉に、輝夜は困ってしまった。
《妾は…人前に出ることは…できない》
自分は人々に会うことは許されていない。
〈月〉がそう輝夜に言ったのだ。
『『『『お前は決して人前に出ることは許されない。それはお前が〈力〉を制御できるようになってからだ』』』』
この世界に来る前、そう言われたのだ。
まだ制御は完璧には出来ていない。
『…ごめんなさい』
「なぜじゃ?」
『妾は、人前に出ることは許されないのです。妾が〈力〉を制御できるようにならないと…』
「制御できるようになったじゃねぇか」
『完璧には…できません。〈力〉が暴走しては、たくさんの人が死にます。妾はもう…人が死ぬ姿を見たくないのです』
無意識とはいえ、自分の〈力〉が暴走してやってしまったのだ。輝夜がやったのと同じだ。
「…そういや、なんでその〈力〉とやら、制御できないんだ?」
『それは…』
「?」
『妾の〈力〉が大きすぎるのと…妾が弱いから…』
「弱い?」
『〈力〉とつり合うような心…つまり精神力ですかね…それがないんです。月でも、たくさんの仲間を殺してしまいました…』
痛みに耐えるように、目をぎゅっと閉じた。
「大丈夫じゃ」
『…?』
「もし暴走しても、ワシが何とかしてやる。だから大丈夫じゃ」
ぬらりひょんは抱きしめる力を少し強くした。
上から輝夜を覗き込み、にっと笑って見せる。
「そうと決まれば、早速行くぞ!!!」
『うぇ!?まだ決まってませ…ひゃあっ!!!』
この屋敷に来る時と同じように輝夜を抱きかかえると、屋敷から飛び出した。
一気に空に舞い上がる。
『お、落とさないで下さいよ…?』
「はっはっはっ」
『落とさないで下さいよぉ!!??』
輝夜はぬらりひょんの首に手を回し、ぎゅーっとしがみついた。
ぬらりひょんは落とすかもなぁ、と言いながら空を飛ぶ。
「落としはしないが…別の意味で落としてみせるさ」
『…?』
その言葉の意味が分からなくて、輝夜は首を傾げた。
十六夜の月に、美しい二人が映った————
(落としてみせるさ。心の方を…な)