二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ぬらりひょんの孫〜月下美人〜 ( No.242 )
日時: 2012/07/07 13:01
名前: このみ (ID: 3/dSGefI)
参照: http://yaplog.jp/momizi89/


第二十二話  金色の光



ぬらりひょんが珱姫を屋敷へ返してから、約八時間が経った。
そこでは珱姫を豊臣秀頼の側室にしたいと言う話が持ち込まれていた。
しかし金をもっと出させるためにそれを断った珱姫の父は、話を持ち込んだ妖に殺された。
そして、夜————。
ぬらりひょんが返事を聞きに屋敷へやって来た時には、珱姫は大阪城へ連れて行かれていた……。つまり、羽衣狐の所へ……。
ぬらりひょんは畳の上に投げ出された祢々切丸を掴むと、大阪城へ向かうべく走り出した。



その頃————。
羽衣狐は宮子姫、貞姫の胆を食べ、珱姫に手を出そうとしていた。

「ゆだねよ、美しき姫………………」

口が触れ合う、胆が食われる、殺される…………。
これでまた力が付く…………。
それぞれの想いが絡まる。
そして、あと数寸で口が重なる————その時。


ドオオオン————!!!!


「なっ、なんじゃこれはああああ!!!???」
「え…………」
「羽衣狐様!!!!」

金色の光。
眩しすぎて目が眩むような、金色の光が、羽衣狐を襲った。
身体の右側、右肩から下までが焼けていた。
そして羽衣狐は気付いていなかった。
自分の妖力が、削られているという事に……。
体が焼けたことの原因を知ろうと金色の光が落ちてきた、上を見上げると、屋敷の天井には巨大な穴が開いていた。
そしてそこから見える、満月————。
有り得ないほどに輝く、月。
その輝きは徐々になくなり、気付いた時には普通の月へと戻っていた。
予期しなかった出来事に、誰もが落ち着きを失う。
その時。

ダン!!ダン!!ダン!!

《妖……様!?》
ぬらりひょんが羽衣狐に向かって刀を振り下ろす。
しかしその刀は四人の妖によって遮られた。
一度距離を取り、態勢を整える。

「……何じゃ?侵入者か」
「何奴じゃ!!」

ビリビリと着物が破けていく。
そこから覗いたのは……。

「……ヤクザ者か」

背中に広がる、刺青。

「ワシは奴良組総大将ぬらりひょん。
こいつはワシの女じゃ。わりぃが連れて帰るぜ」
「なんと……。妖が人を助けに?
異な事をする奴じゃ。血迷うたはぐれ鼠か何かか…………!?」

そう言った時、部屋の壁から無数の妖が出てきた。
人型の者、小妖怪、鬼の形をした者————形は人それぞれ違う。
しかし皆、ぬらりひょんの背中に並んだ。

「なんだ……。きたのかてめーら」
「百鬼夜行ですからな」
「刺青だけじゃ——寂しいでしょう」
「…………バカな奴らじゃ」

口ではそう言いながらも顔は笑っている。
京妖怪と奴良組の、戦いが始まった。



誰も気付かなかった。
しかし、確かにある。正確には……あった。
金色の光が落ちてできた穴から、一輪の小さな月下美人の花が————。
ぽとり、と静かに畳の上に落ちて、金色の粉となり消えた。
それは誰にも見てもらうことは出来ずに、けれど確かにそこにあった。
一人寂しく眠るように、消えた月下美人の花。
もしそれが起こると予知できていたのならば、ぬらりひょんは珱姫を追いかけては来なかっただろう。
しかし誰にも未来は分からず、ただひたすら走って走って……。
後悔して、泣いて。
それが、今へと繋がるのだ————。