二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リボーンと】月下で交わる二つの橙【BLEACH】 ( No.3 )
日時: 2011/12/02 15:00
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)


「行けー! 走れー! あいつから逃げるのだー!」


 休日、誰もいないはずの廊下を、一人の、小柄で、叫びたおすバカを抱えて六人の生徒が昇降口に向かって走っていた。本当のことを言うと、五人の人間がもう一人から逃れるために必死で走っているというのが正しいのだが。その現状に耐えかねた短気なダイナマイト使いは、どこからか愛用の爆弾を取り出した。

「さすがにリング使うと問題だから、こいつで充分だろ!」

 咥えている煙草型の装置を使い、着火しようとしたその瞬間、隣で走る了平に止められる。彼の言うセリフにしては珍しく理にかなっていると思ったが、一番上の学年で最も付き合いが長いからだろうと彼らは頷いた。

「それはダメだ! 校舎に傷でもついたら本当にあいつは怒るぞ!」

 それを聞いた獄寺は、着火寸前のそのダイナマイトを渋々どこかにしまい込んだ。毎度毎度どこから出しているのだろうかと思うが、今はそんなことを言っている暇はない。何せ、修羅のような男が後ろから追いかけてきているのだから。

「ヤバいって! とりあえず校舎から出よう!」

 だからこそ、こうして六人は校舎の出口へと向かっているのだった。確かに校舎の外の方が範囲が広く、逃げやすいのだが、校舎の中だと校舎を傷つけないために手を抜く可能性を彼らは考慮していなかった。

「逃がさないよ」

 そう言って、追いかける男はトンファーに仕込んだチェーンを伸ばした。走るスピードよりも遥かに速く伸びたので、あっという間に空を切って前方に回り込もうとする。だがその瞬間に、そのチェーンは発射された方向へと弾き返された。
 金属同士がぶつかり合う、大きな音がした後に、チェーンは真っ直ぐ撃ちだした本人に向かって行く。それにいち早く対応し、回避した雲雀がバランスを崩している後に彼らはできるだけ距離を開ける。

「山本 武か……」

 剣で打ち返したのは山本だった。普段は竹刀のように見えるその剣は、とある剣術を使う時だけその真の姿を表わす。

「よし! もうすぐ出口だ!」

 危険を弾き返してくれた山本が、全体を鼓舞するためにそう言った。実際、もう下駄箱はもうすぐそこまで迫っていた。沢田の指示で皆は、外靴を取り出すだけ取り出して、上靴のまま外に出た。校則違反と言われてさらに罰が下るとも知らずに。
 後ろから、さっきよりも少し間を開けて雲雀は追ってきた。なぜ間が開いたのだろうかと考えると、並中の秩序、つまりは校則を守るために靴を履き替えていたからだと察せられた。
 それに、上靴は実際とても走りにくい。普通の靴の方が遥かに土やコンクリートの上では走りやすいのだ。見る間に差は詰められていく。その様子を見て焦った六人がさらにスピードを上げた時、妙な事が起きた。
 沢田がいきなり、何も無いところで転んだ。別に、普段『ダメツナ』と言われている彼が転ぶことは稀ではなくしょっちゅうだ。しかし、今回ばかりは様子がおかしかった。
 沢田は、何も無いはずの空間で、何か大きな壁に当たったかのような反応を取って転んだのだ。この様子には、追う側の雲雀も奇妙そうな色を浮かべた。

「十代目!」
「ボス!」

 転んだ沢田に獄寺とクロームは声をかける。このままではあの鬼に咬み殺されると思い、近づこうとした時に、その彼の命令によって歩みを止めることになる。

「皆来ちゃダメだ!」

 急に、全員に向かって彼は言葉を強く言い放った。なぜそんなことを言うのか、彼らには全く分からなかった。

「沢田ぁ! 一体何が起きたのだ!?」

 その疑問が最高潮に達した了平が守護者を代表して彼に大声で問う。すると、何やら心霊現象を目の当たりにしたような解答が返ってきた。

「分からないです……何が起きたかなんて……でも、これだけは確実に言えます! ここに目に見えない何かがいます!」

 切羽詰まった、青ざめた表情で沢田は全員に言い放つ。もちろん雲雀にも。沢田がぶつかったのは、何か目に見えない何かだと。彼が引き継いだボンゴレの超直感が告げていた。
 そんな折に、今まで身を潜めていた赤ん坊が降り立った。その表情も、何やら悪い事に巻き込まれたことを暗示しているように見えた。

「何か変な感じがするぞ……そこいらの葉っぱが空気中で動かずに止まってる。多分、何か巻き込まれたみたいだぞ」

 その驚愕の一言で、彼ら全員の顔つきは変わった。折角恐ろしい未来から帰って来たというのに、またしても何かに巻き込まれるのだということに。それよりも、何が起きたか調べるために、リボーンはクロームに指示を出した。

「魔レンズを使って、辺りを調べてくれ」

 そう言われた彼女は、黙ってゆっくりと頷き、手元のリングに意識を集中させた。途端に、藍色の宝石の付いた方の指輪が、藍色の炎を上げて輝きだした。死ぬ気の炎、リングを変換装置として己の強い覚悟を炎状のエネルギーに転化させたもの。そして、指輪から発せられる炎は隣のフクロウの指輪に働きかけた。途端にそのリングは、本物のフクロウと化した。
 グーフォ・ディ・ネッビアVer.V(バージョンボンゴレ)、彼女の使う匣アニマル(ボックス————)。匣とは、死ぬ気の炎を動力源として動く、戦闘兵器。中でも、動物の形をしたものを匣アニマルと呼ぶ。そしてさらにその中でも特殊な、ボンゴレが独自に改造したものをVer.Vと呼ぶ。そのVer.Vだけ、未来から持って帰る際に、天才科学者に持ち運びやすいように指輪状にしてもらった。その指輪のことをアニマルリングという。

「形態変化<カンビオ・フォルマ>」

 そしてアニマルリングになったVer.Vにだけ施された特別な性能、それが形態変化。その掛け声と共に、その動物は武器へとその姿形を変える。その武器は、最強と謳われた初代のファミリーと同じ武器。
 そして彼女の持つ武器は、D・スペードの魔レンズ。幻術で姿を隠した敵の姿を察知したり、未知の敵や現象について解析することができる。

「おいクローム髑髏。幻覚で俺たちにも見えるようにしてくれ。少し癪だが雲雀にも頼む」

 さらに、今度は獄寺が指示を出す。幻覚で色や形を付けて、自分たちにも見えるようにしろということだ。自分一人が見えても到底太刀打ちできないだろうと思い、自分の見ている景色を彼らの視覚と同調するように幻覚を設定する。
 その奇妙な何かを目撃するのは、全員同じタイミングだった。

「ひぃっ! 何こいつ!?」
「な……んだこいつ?」
「オイオイ、ちょっとヤバくね?」
「ワオ……」
「ワハハ! お前誰だ! 変な奴やーい!!」
「極限に誰だ!?」
「怖い……!……」
「こいつはヤベーな、俺も見た事ねーぞ」





続きます