二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リボーンと】月下で交わる二人のオレンジ【BLEACH】 ( No.5 )
日時: 2011/12/02 18:18
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Rc3WawKG)
参照: いきなりBLEACH乱入でございます

「こいつ……一体何なの——!!!!」

 そこに現れた奇妙なものを見て、沢田は盛大に叫び声を上げた。そこには、今まで誰もが見たことが無い何者かがいた。今まで彼らが見てきた中で最も人の道を踏み外していたのは死茎隊であった。雲属性の炎の基本的能力、『増殖』によって戦闘力を上げる、人であることを捨てた者たち。
 だが、この目の前にいる者はどこにも人間とは思えなかった。それ以上に地球上の生命物体には到底見えなかった。彼らが、この未知の敵が元々人間だったと知るのはかなり後のこととなる。
 その生物のサイズは、大体象ぐらいのもので、四足歩行であった。だが、通常の動物と一線を隔していることがいくつかあった。一つは、胸だ。胸のあたりにぽっかりと孔が開き、向こう側の景色が見えている。次に注目すべきは顔。その頭部は白い骨のような何かに全体が覆われていた。その骨の外甲は、どこか仮面のようにも見えた。
 するとそいつは、いきなり大音量の咆哮を上げた。その音圧は、すぐ近くにいる彼らに絶大な振動を感じさせ、周囲の建物をびりびりと音を立たせて振動させた。
 ふと、周りの景色が歪んだ。その咆哮のタイミングに合わせて、並盛とはもう判別ができないほどに。

「しかし、こやつは一体何者だ? 見たところ炎は感じられんぞ」

 見ただけでは相手の正体が分からない了平が、当てもなく他の者に問うが、もちろんのごとく返事はない。もうそろそろ、この目の前の存在には慣れてきた。だが、それが何なのかは誰も分からない。最強の赤ん坊、『アルコバレーノ』の一人のリボーンでも、だ。

「誰でも良いよ。並盛が何だか変なことになっているというなら、君たちより先に彼を咬み殺すだけさ」

 力強くそう言いきって、雲雀は狩りの対象を変えた。その腕章を誇示するがごとくにも見えたが、並盛が関わることにおいて、その危険をはらう事に関しては、彼の右に出る者はいない。腹を決めた雲雀は、金属製のその武器を握り直し、力強く地を蹴った。
 そのスピードは圧巻のもので、見る間に化け物との距離は詰められていく。その動きを目にできるほど、スピード面に優れているのは、やや気の緩んだその状況では、普段から慣れきっている沢田、そしてリボーンの二人だけだった。
 硬い物同士がぶつかり合う鈍い音がした。その方向を見ると、雲雀は化け物の頭に、トンファーで渾身の一撃を叩きこんでいた。ガラスにひびが入るような音がし、その真っ白な仮面に亀裂が走る。これが、最強かつ最凶の、風紀委員長の実力だと、彼らは息を呑んだ。
 だが、その程度で倒れてくれるほど楽な敵ではないようで、その化け物は反撃に転じようとした。顔にトンファーを押しつけられたまま、両手で挟みこんで攻撃しようと、したのだが、紫色のぼんやりとしたエネルギー体に阻まれた。死ぬ気の炎を初めて見たようで、少し驚いたようだった。
 死ぬ気の炎には、七つの属性があり、持ち主によってどの属性かは違う。まあ、八人集まれば誰かは確実に被るのだが。それはさておき、その中の属性は、オレンジ色の光を放つ『大空』。赤色の炎を放つ『嵐』。青色の炎を生じる『雨』。緑色の、電撃に良く似た、一応炎である『雷』。黄色い炎を上げる『晴れ』。藍色の炎を発生する『霧』。そして、今雲雀が使っている紫色の炎を起こす『雲』だ。それぞれには、固有の性質があるのだが、それはまたの機会に。
 中指についた宝石のついた指輪から、雲雀の全身を覆い尽くす雲属性の炎が発されていた。その属性の炎は大して耐久性にはすぐれないのだが、このぐらいの攻撃ならあっさりと防げた。そして、化け物が動揺を隠し切れていないうちに彼は飛びのき、奴の射程範囲から離れた。
 するとようやく、その化け物は驚きから立ち直った。それに対して雲雀は、退屈にして、詰まらなさそうに欠伸をしている。人外の生命体ながらこれは勘に障ったようで、狂った雄叫びを上げながら雲雀に向かって突進していった。いったのだが……

「もう遅いよ、球針体(きゅうしんたい)……」

 途端に、その化け物の周りに無数の紫色の球体が出現した。それら一つ一つが、鋭利かつ、威力の高い何本もの棘を持っている。そしてそれら全ては、水が水蒸気に変わり、雲となる時に一気に膨張するように一斉に膨れ上がった。膨れ上がった無数の棘付きの球体はその白い化け物に襲いかかる。四方八方から押しつぶされたその化け物はいきなり、分解されるようにバラバラになり、霞のようになり、消えていった。

「今の奴は一体……UMAか?」

 ふと、獄寺の口から言葉が漏れる。それは無いだろうと、いつもなら誰かが言うのだが、今そのようなことを口にしている場合ではない。
 雲雀が至極あっさりとその奇妙な何かを倒してくれたのだが、彼らの中にはかなりの不安と疑問が渦巻いていた。さっきのモンスターのようなのは一体、何であるのか。炎エネルギーを感じないのに、あんな敵がいるのか。もしも……もしも何かに巻き込まれたというのならば、それは一体何であるのか。

「それにしてもやっぱり、雲雀さん激強だ」

 先の事に感嘆するように、胸をなでおろすように沢田は呟いた。得体のしれない奴が相手でも、動じずに対応できるのは、彼にしか無い強さだろうとひしひしと感じている。

「これぐらい……やっぱり物足りないな。誰か相手にならないかい? 赤ん坊でも良いよ」
「俺はパスだ。ツナとやっとけ」
「ふざけんな! 絶対嫌だからな!」

 まだまだ物足りなさそうにしている雲雀に、それならばいっそ沢田と闘えとリボーンは返した。しかし、問うの本人は完全に嫌がっている。それも仕方ないだろうと、山本、獄寺、了平、クロームの四人は冷や汗を流していた。

「コラー! ランボさんをほったらかしにして皆だけで盛り上がるなー!」

 緊張を打ち破るようにして、牛のような服に身を包んだ幼い男の子は大声でそう言った。もちろん、今そんなことを言い出したらおもいっきりトンファーという名の鈍器で殴られるなんてことをその子はまだ知らない。

「へえ……でも残念だけど君は詰まらないって分かってるからいいや」

 面白そうにランボの方を見て雲雀は呟くが、強くないと雲雀の中では認識されているようで、ランボは助かった。

「さっきの奴より数段強くて、十倍ぐらいのサイズがあればいいんだけど」

 雲雀がそう小声で自分の願望を話しながら、弱いため息を吐くと同時に、沢田はとあることをしかと我が目に収めた。空が、まっすぐ縦に割れたのだ。それに驚いてじっと目を離さずにいると、まるで何者かがカーテンを開けるようにして、厳かにそいつは現れた。

「雲雀さん……今から出てくるのが、もしもさっきの奴の百倍ぐらい大きかったらどうします?」

 後に知る事なのだが、現れたのは、下級大虚<ギリアン>と呼ばれし存在。



続きます