二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集、アンケートしてます】 ( No.57 )
- 日時: 2012/02/24 17:48
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: gWvD8deM)
>>56
3DS持ってるんですか、俺はないですね。
そもそも最近ゲームする時間無いんで……
じゃあ、新しい話書き始めます。
「手ごたえあったか……か?」
漆黒の月牙天衝を放った一護は大事を取って後方に退く。一通り前方を吹き飛ばした月牙は、煙のようになり払われていく。そして直撃したノイトラがその場に現れた。
例のごとく硬すぎる外皮に阻まれて傷は付いていないが、多少の痛手にはなったようだ。顔には少し、痛みによる顔の歪みが生じている。さらには、武器を破損させることにも成功した。咄嗟に鎌を盾にしたノイトラは、自分を護ると共に武器を犠牲にした。攻撃手段が激減したノイトラの情勢は悪い方に一気に傾く。
以前圧倒した経験のある者に対してこの様である彼は怒りと憎悪から眉間にしわを寄せる。ただ、ここで無理やり突っ込むのは命を捨てることと同意、その程度理解している彼は退く決心をした。
「ちっ、仕方ねえ、退くか……」
「待てよ、何でお前が生き返ってんだよ」
「ああ? 何で一々説明してやらねえといけねぇんだよ」
「何でもだ、さっさと答えろ」
「別に。ちょっと新しいボスがな」
その瞬間に彼は少し下の方を見る。前髪が目元を隠し、表情が分からなくなる。じっと見てみるとノイトラが特徴的な長い舌を出しているのが分かる。
何か考えている、それに気づくのは遅すぎた。彼は下方向に向けて全力の“虚閃”を撃った。地面を陥没させ、砂煙を巻き起こし姿をくらませる。慌てて一護も月牙天衝で振り払おうとするももうすでに、その姿は無かった。
「くそっ、逃げられたか」
「どうかしたの、黒崎くん?」
「えっと……沢田、だよな? 今のは説明すると長くなるけど……とりあえずは昔の敵だ」
「昔の? それって……? そして生き返ったって、一体……」
「あいつは剣八って奴に斬り殺された筈なんだよ」
剣八、その名前にはこっちに来たばかりの一行でも聞き覚えが合った。宇木良平という男が霧属性の力で化けていた者だ。ウニみたいな頭の、鈴を髪の先に括りつけた、眼帯を付けた男。彼は十一番隊隊長と言っていた。
「ねえ……隊長って何?」
「ん? ああ、この戸魂界には護廷十三隊っていう組織があるんだ。主な仕事は虚……化け物の退治とこの街の警備だ」
「十三隊……それだけの部隊に分かれてるって訳か?」
「お前は、獄寺だったな? そうだ、全部隊には隊長と副隊長がいる。全員が恐ろしく強い」
そこまで言った途端、彼は口を閉じた。巨大な門がいつの間にか門番の腕力で入り口を開いていたのだから。そして中から十人程度の死神が出てきた。誰もかれも死覇装の上に白い羽織を着ている。そこには一人一人違う数字が漢字で書かれていた。
戦闘に経つのは頭に管のような飾りを付けた澄ました男の人、それ以外にも銀髪の少年や二足歩行している犬、例の更木剣八、髪を左右で括っている女性や妙な仮面を付けた者もいる。
「報告通りだな、黒崎一護。来るのを待っていた」
「おい白哉ぁ……こんなに隊長が揃ってどうしたって言うんだ?」
「分からないのか? 少し考えればすぐに分かる」
「ん? ああ、こいつらか……」
今さら気付いたかのように一護は後ろの沢田達を指差す。そんな中、若干の例外を除くその一団は緊張していた。つい先ほど恐ろしいほど強いと説明を受けた隊長が全員並んでいるのだ。その威圧感は緊張なんてものじゃ足りないくらいで、冷や汗が頬を伝うことすら忘れさせた。
若干の例外とはリボーンと雲雀だ。リボーンは流れと雰囲気から察して、目の前の連中が味方だと分かっている。つまりは緊張ではなく心強さを感じている訳だ。そして雲雀はというと、実力者が揃っていることに高揚感を感じていた。戦闘マニアの彼ならではの反応である。
「もうすでに浦原と夜一様から連絡は受けている。違う世界から来たとほざく連中だという事もな」
「あぁ? そこの女喧嘩売ってんのか?」
「貴様ら相手には喧嘩にもならん」
「んなっ……てめえっ!」
浦原の時しかり激昂した獄寺はダイナマイトを取り出す。すぐさま対処される事を分かりながら。それでも導火線に火を付けようとしたその瞬間に、もうすでに対応されていた。
浦原と比べても引けを取らない。それどころか彼をも凌ぐ速度で女性隊長は間合いを詰める。いきなり懐に入り込まれ、銀髪の少年は悪寒を感じる。彼女の右足が消える、それぐらいのスピードで蹴りが放たれる。咄嗟に腕で庇おうとしたとは言え、受け身も取れていない獄寺は一直線に吹き飛ばされる。
「大丈夫か!? にしても速ぇなあ……」
「ああ、今、何が起きたか分からなかったぞ」
「蹴りが入ったのさ、三発ね」
あまりの出来ごとに驚嘆している山本と了平に、雲雀が横から口を挟んだ。その会話の内容にさらに二人は驚いた。あんな短時間に一発どころか三発も攻撃しただなんて信じられないと。
ただ、その言葉を聞いて女性は、得意げな笑みを浮かべていた。どうやら何も分かってはいないな、と。ただしそれも、この直後の沢田の一言で崩れることとなる。
「えっ……その前に二回ぐらい平手で突き飛ばしてたけど……」
沢田の一言に蹴りを入れた当の本人————砕蜂<ソイフォン>————を初めとするほとんどの隊長が目の色を変えた。霊圧の欠片も持たないただの“人間”が、最速の隊長の動きを見切ったのだ。彼女が手を抜いていたとはいえ、これは信じ難い事態、明らかな驚愕の表情を皆が浮かべていた。
そんな中、一際冷静に努めている白い髭を大層長く伸ばした老人が現れる。左腕は無くなっており右腕には杖を持っている。
「どうやらただの人間ではないようじゃの……」
「元柳斎殿、これより我がこの者たちに説明を始めたいと思うのですが、よろしいでしょうか」
「構わん。頼んだぞ」
名乗りを上げたのはパッと見ただの犬の姿をした隊長、狛村左陣。犬がいきなり喋ったと思った沢田は酷く仰天する。と言うよりそもそも二足歩行していた時点でかなり気にはなっていたのだが。
「黒崎一護、確か相対した者の名を宇木了平と言ったな」
「えっ、あぁ……」
「おそらくそれは元々護廷十三隊に所属していた」
「……いつ頃?」
「貴公が死神になる、五年程度前だ。確か二番隊の七席だったな、砕蜂殿?」
「ああ、間違いない。隠密機動からの脱走者だ。現世に亡命しようとしたとある死神を追っていくふりをしながらそのまま行方をくらませた」
「当時奴は自らの斬魄刀を偽っていたはずだ。それは貴公らの報告で分かった」
「なるほどな……で、藍染の騒動があってこっちが混乱してる隙に攻め込もうとしたって訳か」
「そのようじゃの。虚圏<ウェコムンド>まで乗っ取って良い気になっておる」
「それで、そろそろ攻めこんでくると思い、ここで待機しているのだが中々現れない」
何かまだ準備が出来上がっていないかのようにと思っていると、ノイトラがやってきた。いざ応戦しようとしたら一護が退却させたという流れだ。
そこまでの説明を終えると口をつぐんだ。敵の正体、そして大体の現状ぐらいしか未だ分かっていない。それ以上を口にしないところからそれは察することができた。
しかし用意が出来ていないとしたらその要因は何か? そういう疑問が出てきたら分からない。そこでようやく結びついたのが、イレギュラーな要素の異世界の者たち。彼らをこちら側に呼びだしたことと、まだ攻めあぐねていることはどこかしらで繋がっていると踏んだ訳だ。だからこそ緊急事態の現在、揃いも揃って隊長が出てきたという訳だ。
「こういう展開……前にもあったな」
ぼそりとリボーンは呟いた。それを聞いた沢田は気付く。彼らの目的に。
「もしかして……リングが狙われてるんじゃ……」
「どうした少年? 心当たりでもあるのか?」
思い返す、霊圧と炎圧は強く反応すると言っていた宇木の言葉を。炎の性質を利用するために、ボンゴレリングを呼ぶために自分たちごとこちらに連れてきたのだとしたら、全てのつじつまは合う。ただ攻めただけでは返り討ちに逢うのは当然なので、何か変わり種を探した訳だ。
そこで彼らは異世界の力を選択した、勝利のために。だから最も強い炎を呼びだすことが可能なボンゴレリングのために沢田達をこちらに誘い込んだ。
「白蘭と一緒か……リングが欲しいから俺たちを誘った」
「なるほど、流石十代目っす。とすると俺たちは」
「狙われている、という事なのだな、沢田?」
「多分そーだな。そろそろ、何か仕掛けてくるのが普通だぞ。きっと現実世界に来るだろうな」
「なっ……! 洒落にならないぞリボーン!」
「笑い取るために言ってんじゃねえ、可能性が高いんだ」
突如、とてつもなく大きなサイレンのような音が聞こえてきた。けたたましく音を轟かせながら誰かの声が告げる。
————現世が、何者かの手によって襲われていると。
二話『ソウル・ソサエティ』完結です、
三話『開戦』に続きます。