二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【三章開始】月下で交わる二人のオレンジ【キャラ募集】 ( No.74 )
日時: 2012/03/03 13:34
名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: 0BucpTCd)
参照: 沢田綱吉VS篠原鈴


 雲雀と時空との対戦が決着することより遡ること数分、まだ篠原が時空と一緒にいたころ、篠原は上空に飛び上がる沢田を見つけた。ようやく標的発見だと意気揚々とした彼女は一緒に走っていた時空を放置して跳び上がった。隠していた自分の武器である二枚の鉄扇を取り出し、超モードに突入している沢田に向けて炎を飛ばす。案の定、すぐさま反応した沢田はあっさりと空中で回避し、発射した篠原を視界に収める。
 そしてそのまま思い返す、映像に出ていた一人一人の顔を。そして、その内の一人に、確かに存在していることを思い出す。それならばと、沢田の方も戦闘の準備は万端となる。相手が女だからだろうか、少々気乗りしない表情だ。それを目に収めて軽く篠原は舌打ちをする。女だからと甘く見るものではないと。実際に篠原自身時空同様の腕を持っており、雲雀クラスの実力を持ち合わせている自信はあった。

「お前が、この世界で暴れたのか?」
「そうだよ。あんたらが来るのを待ってたんだぜ。特に私はあんたをな! 先に言っとくけど、女だからって嘗めんなよ」
「……そのつもりだ」

 重力に負けて、一旦地面に降りた篠原に、跳びながら彼は声をかける。淡々とした口調で、静かな怒りを携えながら。それを聞いた篠原はさも当然と言いたげに嬉々として返答する。来るのを待っていた、というからにはおびき出すために街を壊したのだろう。それがすぐに察せられた沢田は、今度はむき出しの怒りを表情に出す。ただ、自分たちを呼び出したいのなら、正面からそう言えば良い。
 それなのに、無駄に人を傷つけるようなやり方を選択した相手が許せなかった。たとえそれが、マフィアに向いていないと罵られようと関係無い。彼自身マフィア自体になりたくない理由の一つに、そういう無暗に人を傷つける人間が数多くそこに存在していたからだ。
 手加減する、その理由が消えた。手のグローブに一気に感情を乗せる。途端に沢田は加速し、その姿が視認できないほどの速度に到達する。初っ端から全力だという状況にさらに歓喜する篠原、どうやら雲雀と同じタイプのようだ。
 超高速の沢田綱吉の動き、完璧に見えると言えばそれは明らかに嘘だ。どちらかと言えば見えないに近い。ただし、多少感じ取ることはできる。意識を集中して、炎圧の強い部分を察知すれば、そこに必ず存在している。
 休むことなく動き続ける炎の動きが、一瞬ぴたりと止まる。ほんの一瞬、瞬きよりも短いような刹那の感覚だが、篠原は反応する。静止したのは自分の丁度真後ろ。得意げに、「見切った」と呟きながら鉄扇を振るい、先端の刃から斬撃状の炎を発射する。直撃する、とまではいかないだろうがきっと足止めやかすり傷程度には役に立つだろう。
 だがここで篠原は侮っていた、超直感、そういうものの存在を。
 鉄扇から飛び出したその半円型の攻撃は沢田を捉えることは無かった。そこに沢田がいたであろう一に残った微かな炎圧だけを斬り裂いて空ぶりに終わる。しまったと思いながら察知を再開しようとしたその時、左側から強い威圧感が訪れる。そっちにいると気付いた彼女は即座に防御に転じる。両手に持った二枚の扇で、大空属性の炎圧を込めた二筋の突風を巻き起こす。吹き荒れる二つの猛風は衝突し、うねりを上げて螺旋を始める。炎で出来た小さな竜巻、それは沢田の進行を阻害した。
 かろうじて開戦早々の危機を脱した篠原は、安堵の息を吐く。こちらの一手を先読みしての超高速の方向転換、思っていた以上の強さに感嘆する。明らかにスピード面は圧倒されているだろう。しかし、それぐらいのビハインドぐらいは、産めないといけない。
 二枚の扇で発生させた炎の竜巻はまだ吹き荒れている。咄嗟に出したものだから、それほど長時間は残らないだろうが、三十秒は残るだろう。その間に、できるだけ多くの竜巻をさらに作りだす。
 いくら超スピードでも、コースを制限してやれば、先読みはできる。それがこの数カ月叩き込まれた沢田対策。縦横無尽に駆け巡るからこそ沢田のようなタイプは強い。よって、あらかじめこちらが障害物を設置しておけば格段に闘うのが楽になる。
 鉄扇の骨組みの接合部、そこが炎を灯す特殊な素材でできている。そこに点いた炎が扇全体をコーティングしているのだ。そして振るう瞬間、任意のタイミングで飛ばすことが可能。そうやって斬撃や燃え盛る突風を巻き起こしている。
 かなりの時間留まり続ける竜巻を目に収めて沢田も考える。もしかしたらこれはそういう目的で設置されているのではないかと。その可能性を考慮した沢田はもう一度攻撃に転じようと速度を上昇させる。もう一度、篠原の目で追えぬ速度に到達する。
 大体の事は気付かれてしまったと察知した篠原は焦りながらも不敵に微笑み、両手に持った鉄扇を使って空気を叩く。一つ目のものとは違い、かなりのクオリティで作りだした二つ目の竜巻は規模、威力、耐久時間、それら全てを圧倒していた。
 速攻で片付ける必要があると判断して正面から踏み込んだ沢田は進行方向と同じ方向に炎を撃ちだして減速する。左手のグローブの炎圧を急上昇させる。反作用の力で右サイドに回り込む。しかし、それも大体対処は打たれていた。もう一つの巨大なとぐろを巻く炎。左手の強力な炎に反応した篠原が瞬時に作り上げたものだ。
 今度は今の位置から正反対の立ち位置の、さっきの位置から考えて左側に回りこもうとする、しかしそう判断する前にすでに、半円型の斬撃が空を飛んでいた。咄嗟に半身捻って躱そうとするが、軽く腕の辺りを掠める。大した板でにはなっていないが、傷口からうっすらと血が滲み出る。
 一発回避して安堵する暇も無く、次々と飛んでくる橙色の刃を回避し続ける。右へ左へと回避するが、段々と動けるスペースが減ってくる。先程から隙を見て篠原が竜巻の数を増やしていたからだ。

「さて、そろそろ自分も行きますか」

 そうして沢田に向かって、ジャンプする。かなりの脚力のようで、もろにその衝撃を受けてしまったコンクリートの地面はひび割れる。細かいコンクリート片が舞い散るのを目にした沢田を目を見開く。蹴り技には充分注意、そう思った矢先に発見する。篠原の膝より下が炎に包まれているのを。
 確実に喰らう訳にはいかない。沢田は残されたラスト一つの逃げ道である上空に向かう。ただし今度は篠原は重力に負けなかった。その強靭な脚力で空を蹴る。相当の衝撃を叩きこまれた大気から、反発する力を受けて上昇する。まるで、空を歩くかのように。
 両足に纏われた炎が視界にちらつく。もう一度、喰らう訳にはいかないと反復する。さらに高度を上げるも、やはりついて来る。だが、もうすぐ竜巻の高さも足りなくなる。大体竜巻の高さは一番高くて二十メートル。
 ただしそれも、篠原が高っ差を付け足さなかったらの話。そして彼女は、持てる限りの力を込め、自分の作れる限り最大の竜巻を巻き起こす。それは沢田を襲うことなく、二人を取り囲むように風邪が巻き起こり、監獄のように二人を閉じ込めた。それも、情報を塞ぎこみ、逃げ場を無くして。
 確実にこれで終わりだ、そう思ったその時に沢田は、アニマルリングに炎を流し込み、大空ライオンVer.V<レオネ・ディ・チェーリ・バージョンボンゴレ>を呼びだす。瞬間その小柄な獅子は輝きを上げる。

「形態変化<カンビオフォルマ>・モードディフェーザ」

 途端に漆黒のマントが現れて沢田はそれを纏う。篠原の蹴りを真っ向から受け止める。初代のマント<マンテッロ・ディ・ボンゴレプリーモ>、それが沢田の形態変化の武器のうちの一つだ。ボス自身の身を護る堅牢な鎧、それが初代のマントだ。
 黒衣と革靴が、お互いに炎を衝突させて火花を巻き上げる。軍配が上がったのは篠原の方だった。黒い衣を纏った沢田は逆に押し込まれる。

「くっ……。かなりの威力だ……」
「負け惜しみはそれだけ?じゃあ、こっちから……!」

 最後の留めの一撃、それを決めるために今までで最も力強く空気を蹴りつける。自分が吹き飛ばした沢田にすぐに追いつき。体を回転させて物理的なエネルギーを溜めこむ。まだまだ体勢は崩れている。
 これでお終いだと、口に出して銘打って、彼女は脚を振り上げる。マントもない状態で沢田は受け止めようと手を伸ばす。鳩尾を庇うように、両手で。焦りが現れているのだろうか、額の炎は強弱を繰り返す。
 篠原の革靴が完全に沢田の体に入る。その瞬間に、黒い煙を残してゆっくりと沢田の額の炎は完全な鎮静に向かう。篠原はこの一瞬で勝利を確信した。

「よし! 勝……利……?」

 よしと叫び、勝利と言おうとしたその瞬間、再び沢田の頭の炎が点く。何事かと思い注目するとまた消える。点いては消え、点いては消えを繰り返すその様子に、脳裏をよぎる一つのアンサー。
 不自然な炎の明滅、間違いなく、零地点突破改————。

「そん……な……」
「終わりだ」

 勝利を確信したというのに、嵌められたのは自分だと気づく。沢田の手元では両手の親指と人差し指を組み合わせた正方形に、篠原の脚が掴まれていた。
 死ぬ気の零地点突破、そういう境地がある。死ぬ気正の方向にある時、人は爆発的な強さを発揮する。そして、その死ぬ気の対照的な位置にあるのが零地点突破だ。別に本当に死んでしまう訳ではなく、相手が攻撃として放った炎の威力を軽減させることができるのだ。
 死ぬ気の零地点突破とは、その境地そのものの事を指す。攻撃の威力の軽減が主な効果だ。それに対して沢田が独自に改良した零地点突破改はれっきとした技だ。その効果は、軽減ではなく、吸収。触れている所から敵の炎を吸収する。
 根こそぎ炎を体中から吸われていくのを感じ、篠原は溜め息一つ吐く。まさかこれほどまでに強いとは、と。完敗だと、本人に伝わるか伝わらないか分からないぐらいの声で呟く。そこで彼女の意識は一時途絶え、気絶する。その体を支えるように沢田は両手を伸ばす。
 こうして、二つ目の闘いは決着した。




篠原VS沢田完結です。次回は獄寺山本達が双竜姉弟と対決予定です。
二対二なのでいつもよりも時間かかります。
そして……やはり700記念ではなくもう少し進んでからになりそうです。
今のところの予定は……

1、篠原VS雲雀
2、鈴音&詩音&紅蓮VS一護(強さ調整含む)です。

勝敗は執筆時の雰囲気に任せます。
ご希望の勝敗(ドロー含む)があったら言ってください。