二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 【三章完結】月下で交わる二人のオレンジ【4/1最新話!】 ( No.82 )
- 日時: 2012/04/04 18:34
- 名前: 月牙 ◆nadZQ.XKhM (ID: Us9WpvjK)
- 参照: 700記念の短編その一、篠原VS雲雀
えっと、以前にアンケートを取った記念短編をようやく実施します。今回はまず、篠原鈴と雲雀さんでやってもらいます。
勝敗はこの後に及んで決まっていませんが、この二人だと完全な肉弾戦になります。
鉄扇使いとトンファー使い、正直30巻と酷似します。
あの時アーデルハイト蹴り技使ったしね……それに鈴の得意技は一応蹴り技……
まあ、本編を越えるぐらいの質にしたいと思ってます。
「で、この茶番って一体何なの?」
「さ……さあ? 私には分かりかねます……」
いきなり真っ白で何も無い空間に連れてこられた二人は、それぞれ異なった反応を取っていた。雲雀は不機嫌そうに辺りを見回している。こんな変な所に閉じ込められたのだ、多少の束縛感を感じているのだろう。束縛を嫌う風紀委員長はご機嫌斜めのご様子。それに対して篠原は、雲雀という、自分よりも年長者と二人きりになってしまい、少し委縮していた。
ちょっと冷や汗を流し、体中硬直してしまっている彼女の姿に雲雀はつまらなさそうにする。どうにも、相手にならない感覚がするのだ。これではウォーミングアップにならないだろうと思っている。
「いきなり闘えと言われても、こんな小動物とは嫌だよ。どうせなら、僕をここに閉じ込めた君が出ておいでよ」
天井に向かって誰かを挑発するが、別にそこに閉じ込めた犯人なんて居ないのだから答えは返ってこない。余計にイライラの募る雲雀に対して、年上が苦手な篠原はびくびくしていた。その様子がより一層雲雀としては我慢ならないようで、余計に機嫌を悪くする。彼が今考えているのは、武器を携帯しておいて戦意が無いだなんてどういうこと? という事だ。戦闘意欲が無いのならばそんなものを見せる必要は無い。自分のように闘いを欲する者にとっては冷やかし以外の何者でもない。だが、彼の性格上、そうであるとしても咬み殺すのだが。
肩に引っ掛けるようにしている学ランに隠していたトンファーを取り出し、両手に構えてみせた。右手の中指に付けたボンゴレリングから、巨大な雲の炎が放たれる。トンファーを紫の炎が覆い尽くし、威力を底上げする。重たい錘が圧し掛かってくるような、それでも突き刺すような矛盾したプレッシャーを、篠原は全身で感じた。間違いなくこれは、殺気。
殺気に当てられた篠原は、普段の彼女を取り戻す。一種のショック療法だ。雲雀という名の猛禽類相手に、竦み上がっていた一羽の小鳥から、もう一匹の猛禽類として立ち直る。目には、歴戦の勇士としての、それなりの眼光が宿った。それを見届けた雲雀は顔つきを変えた。
「へえ……何だ、できるじゃないか。予想外だったよ」
「それは良かったな。あのまま油断してたら、アンタ私に負けてたぜ」
「ふうん、それは何の冗談かな?」
未だに余裕を持ち続ける雲雀の話している途中で、篠原は攻撃に転じるために、一歩踏み込む。しかし、篠原が動いても、特に雲雀から仕掛けてくる空気が見えなかった。
先手を取ったので、意気揚々とした篠原は、そのまま靴と鉄扇に炎を灯す。上る朝日のように鮮やかで、純度の高いオレンジの炎。右手に持った扇を真っ直ぐ縦に振りおろす。持ちての反対側の、刃になっている部分から、纏われた炎が放たれた。弧を描くような形状のその炎は、燃やし切り裂く炎の刃。触れたらただでは済まない。
瞬間、ボンゴレリングが一層強い炎を放った。際限なく溢れ続ける雲属性の炎は、洪水のようだった。篠原の炎の斬撃を真正面から受け止めて、押し返す。鋭利で強力な斬撃でも、圧倒的な質量の前では歯が立たなかった。
「嘘だろ……動かずに対応するなんて……!」
「この程度なのかい? やはり君はただの……小動物のようだね」
一瞬、学ランがはためいた。学ランの中で待機させていた腕をその黒衣の中から登場させたのだ。今度こそ、本格的に攻撃が始まると言う事。雲雀風に説明を入れるとするならば、咬み殺し始めるということ。
攻撃の手を、決して休めてはいけない。そのように直感した篠原は駆け出した。受け身になった瞬間に倒されることは納得だ。相手は雲雀、恐ろしさは納得している。
すぐそこまで迫った彼が、向かって左側のトンファーを後ろに向かって引いた。攻撃直前の予備動作、防御用の炎を左手の鉄扇に集中させて右手の鉄扇を一閃しようとした時、視界にトンファーが飛び込んできた。最初の大仰なものは囮で、反対側のトンファーが本命だったようだ。
安直に左側の防御を厚くしてしまったことを後悔しながらも、身を屈める。後ろの方の髪の毛を掠められたが、打撃は受けていない。良い調子だと思ったが、そうでもなかった。最初に囮として使った雲雀にとって右手での攻撃は続いていたのだ。上から下に、地面に垂直に叩き下ろされる無情な一撃に、咄嗟に両手で防御する。炎最大の鉄扇をも盾にしたが、難なくその程度の壁は打ち砕き、トンファーを篠原ごと地面に叩きつけた。
「あっぶねぇー……」
「……! 凌いだんだ、やるね」
ほんの刹那の話だ、回避不可能であると判断した篠原は、反射的に傾けた状態の鉄扇を壁にした。側面をレールのように伝わったトンファーは、そのまま受け流されて地面を割った。変に真っ白い空間だからすぐに修正されたが。
次々と、想像以上の実力を発揮する篠原に、より強い興味を雲雀は抱き始めた。この目の前の少女は最後にはどれほどの力を隠しもっているのか、早く暴いてみたい気分。目の色がより、好戦的なものに変わる。
「君の牙の長さ……測り損ねたみたいだ。今からちゃんと、測って見ようかな?」
「ご遠慮いただく……ことにします」
攻撃を逸らしたと言っても、まだすぐそこには雲雀が居る。体勢的に両手を塞がれているも同然、正直ピンチだ。しかし篠原の一番の武器は、鉄扇ではない。状態は取り押さえられているが、下半身に注意は向いていない。しかし殺気を出せば確実に気付かれる。直接攻撃するのを諦めた篠原は、地面をおもいっきり蹴りつけた。
先程雲雀がトンファーで叩きつけたのと同等、もしくはそれ以上の力で地面を蹴ったので、反作用の力を貰う。それこそ、人二人を宙に浮かせるほどの。突然空気中に浮き上がり、ほんの少しの動揺を垣間見せた雲雀は飛び退いた。激しい運動に学ランははためくも、肩からはずり落ちない。急速に後ろに飛んだので、バランスを崩した雲雀が体勢を立て直し、前を見据えたその瞬間、篠原の姿は無くなっていた。
手元のリングの炎を薄く広げる。リングの最も自分自身に近い位置の部分の炎が揺らめいた。つまりは、背後を取られた。それでも雲雀が慌てることはない。それどころか、またしても予想を上回る実力に嬉々としながら高速回転させたままのトンファーを、後方に一閃した。紫色の横向きの竜巻が扇型の軌跡を残して床を削る。予想だにしない反撃に篠原は判断を送らせる。まさか開匣していない雲雀が遠距離攻撃をしかけてくるとは、思いもしなかったからだ。
そして、リングの炎をレーダー代わりに使う闘い方も知らなかった彼女は、なぜ背後を取ったのがばれたのかも分からなかった。回避がちょっと遅れただけなのに、雲属性の炎の竜巻は、頬の辺りの皮を掠めた。思わず顔をしかめてしまうぐらいの威力。
「何で……後ろにいるって……」
「炎を使えば、できる話さ」
背中を向けたまま、首だけ回して右半分の横顔で彼は答えた。右目から放たれる、狂気に染まった狂喜が、より一層篠原の感じる悪寒を強くした。まるで喉元に、切先を突きつけられているような。相手の持つ武器は、鋭利な刃物ではなく、鈍器だと言うのに。
雲雀を振り切れるスピードを出せるか、はっきり言って危ういが、正気を見い出すとすればとすればその一点しか無い。沢田のような大空の炎の超加速で対応するしかない。靴に灯される炎がより一層強力なものに変わっていく。
全力で、彼女は足元を蹴りつけた。走るというよりも、地面に押し返してもらうように、駆けるのではなく翔ける。空中では方向転換が取りづらく、単調で直線的な一撃をあっさりと雲雀は回避する。だが、これは推測通り。方向転換には靴ではなく、扇を用いる。開いた鉄扇を団扇のように、つまりは本来の扇としての機能を働かせることで、自分の背後に気流を作りだす。それに後押しされてもう一度雲雀に向かう。余裕丸出しだった雲雀がこれに対応するのは相当遅れ、気付いた時には会費は不可能。両手のトンファーを壁にして防ぐも、篠原の脚力にあっさりとトンファーは吹き飛んだ。
「くっ……まさかここまでとはね」
「もうあんたに武器は無い。次でとどめ……」
「戦闘終了、とりあえずお前らもう引っ込んでろ」
突如乱入してきたのは、死覇装を着た黒崎一護。戦闘を楽しんでいた最中、邪魔をされた風紀委員長は気分を害する。
「邪魔しないで。君を咬み殺すよ」
「武器弾かれた時点でお前の負けなんだよ。次は俺達の番らしいから、退いててくれ」
「そんな理由で、僕が納得すると思ってるの?」
「分かった分かった。脇で楽しんでてくれ。真ん中を譲ってくれ」
「……仕方ないね。でも、一つ条件があるよ」
「何だ? 言ってみろ」
「君を後で、咬み殺す」
数時間後、篠原との勝負が終わった雲雀は、死神状態の一護に敗北し、余計拗ねてしまったのは別の話。
篠原VS雲雀はここで決着です。一護理論では篠原の勝ち、実質引き分けです。
次回は一護VS双竜姉弟&鈴音風花です。
ていうか本当に1000に到達しました、いつも読んでいただきありがとうございます。
そういえばですけど、今日リボーンの38巻発売日らしいですね。
俺? ……買いました。