二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【オリキャラ募集】KAMISAMA!【銀魂】 ( No.29 )
日時: 2011/12/29 04:12
名前: 夏雲あざみ ◆iYEpEVPG4g (ID: WPJCncTm)
参照: http://loda.jp/kakiko/?mode

  
07 【campus】
          



「あらそちらさんは、いつかの。」
 
 日が傾きはじめている。冬空は、別に雲が多いとか悪天候だとかそういうのと関係なく、薄く灰色のかかった色をしていた。これも気温が下がり続ける毎日だから、そんな暗い色に見えるのかもしれない、と思った。
 
町で買った、ふわふわ兎みたいな感触のイヤーマフラーが覆ってくれる部分以外、どこもかしこもひゅう、と隙間風が通り抜けていくようだ。こんな時、外見に気を使う年頃の乙女(、じゃなかったけどまあいいや)はとてつもなく辛い。お洒落に寒さなど気にしてはいられないのが彼女達の現状だ。さっき町を颯爽と歩いていった、超ミニスカートを履いていた若いおねーさんや、閉めれば寒くはないだろうにコートの中の可愛らしい赤いワンピースを見せたいが為に前のボタンを外して彼氏と手を繋ぐ女性などがそれに当たる。
  
「税金ドロボーさんじゃありませんか。」

 ばったりと顔を会わせてしまった、彼。寒さ云々ファッション云々そういった物は吹き飛んだ。何せ、この男は以前わたしがケツが痒いと言っているのに放置プレイを決め込んだ奴だ。おかげさまでナイロン100%の生地にしてやられ、ケツと背中があかーくかぶれてしまった。

「とぼけたツラしやがって!わたしにゃあん時の恨みがまだ残ってんのよ!」
 
 罵声が大音量で鳴った。おっと心の声が。・・・あり?
目の前の男を睨むと、さも楽しそうに意地悪く笑ってこちらを見た。
 
「って顔してまさァ。」
 
してやられたという敗北感と同時に、ただただ怒りが込み上げてきた。
ほぼ顔見知りというだけということも、最低限の大人としてのマナーも心がけていた筈・・・なのに、真っ白にきれーに、忘れた。
 
「良い性格してるわねえってふざけんじゃないわよ!ケツの恨みはつよーい!!」
「ケツケツケツうっせェなァ、ちったあ恥じらいってモンを持ちなせェ。」
「わたしに恥じらいを求めるって言うの?!そんなのFFシリーズに原点復帰をしろって言うぐらい無茶に決まってるじゃないの!
零式とかもうアレFFじゃないじゃん!XIII-2なんてもうファイナルですらないじゃん!最後じゃないじゃん!」
 
「そうですかィ悪い悪い、単細胞には理解できやせんねェ。」
「分裂するぞコラァ!」
「無闇に増えると始末に終えねえや。」
 
 おいおいやめてくれ。本気で刀を持ち出すな。背筋が冷やりとして、やっと言葉を失って息を呑む。冷静になったところで、きらりと光った刀身があかねの瞳に映る。

「・・・・・・・、まあ此処は良い年しておとなげないから、わたしの寛大な処置で許してあげ・・・・うー・・・。」
「おとなげない?アンタ、俺と同年代がそれより下じゃねェのかよ。」
「あー、うん、まあ。そういうことにしておく。」
 
 頬を膨らませて悔しがる彼女は、子供っぽくて幼稚で、まるで頼るものがない弱い生き物のようだった。きっと見るものの庇護欲が膨らむだろう。だけど俺には虚勢の張ったその姿に随分と加虐心が煽られた。
あかねという女は不明瞭で、いつもどこか掴めない。と言っても、もう会うこともないだろうと思っていただけに、始めて見る表情や感情が多くて心なしか、楽しい。
面白がってあかねの耳元のイヤーマフラーを外す。何をされるのかと戸惑った彼女の反応が見たかった。
 
 耳元からすぽっと音を立ててそれが空中へ消えた。ひんやりした空気に晒されて鳥肌がたつ。
 
「ぎゃあ!」
 
間抜けな声が出てしまった。空中でふらふら揺れていたそれが薄い栗色のさらさらな髪の間に装着されてしまった。
 
「コレ、いいですねェ。」
「良いも何も、わたしから唯一の防寒具スーパーフルもっふもっふウサ子を奪おうというのですか総悟くん君は。」
 
「ネーミングセンスの欠片もねえ。」
「あ、ちょ、返しなさいったら!返せやこの税金ドロボー!
おまわりさーんこの人窃盗罪で捕まえて、・・・ってああアンタじゃないのさー!」
「やだ。」 
 
 シンプルかつ的確な回答をありがとう。東の山の方で、山鳥がちゅんちゅんと鳴いている。江戸の店はどこを見渡しても人がいっぱい。世界中を股にかけて(ただの放浪とも呼ぶ)フラつきまくっていたのだが、こんなに活気のある場所を訪れたのは初めてだった。
浮かれ気分で外に出て、これである。
 
「そんなに気に入ったんなら、同じの買ってこよーか?」
「お断りしまさァ仕事中ですしねェ、それに。」
「ことに及んで仕事中かよお前は!さっさと働きやがれー!」
 
「・・・・・・まァ、いいか。また今度、俺に似合うの選んでくれますよね。」
「いつにならない約束はするもんじゃないよ?」
 
 赤い髪が揺れる。薄い桜色の唇が、くすりと笑った。
まだまだ彼女のことはよく知らない、むしろ正直言って解らないけれど、俺の中で彼女は可愛い人、だと思う。直ぐに逆上するバカな子供だと思えば、こんな心の奥を全て見透かされてしまうような顔をする。年上のような素振りをして、見当ちがいなことを言い出す。
 
「夏になって、買ってきたら怒る?」
「そんときゃ観念して付けて、あかねにも付けさせまさァ。」

「それはやだなあ。ま、忘れないうちにね。とびきり恥ずかしいやつ選んでやろーっと。」


 おぼろげで、憂鬱だった冬の空を見上げた。とびきり綺麗で澄み切った硝子球のような青だった。雲はふよふよ漂っていて、日差しは黄色みがかかった飴細工のような色をしていた。
もし今、白のキャンバスに絵を描いたならきっと、素敵なものになるだろうとふと、思った。