二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: KAMISAMA!【銀魂】 ( No.4 )
日時: 2012/01/22 17:36
名前: 千鶴 ◆iYEpEVPG4g (ID: WPJCncTm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode

01 メランコリー・アイディンティ




「いやっほうぎんときー!キュートでプリティーなあかねおねーちゃんが会いに来たよー!いやあおっきくなったねえ、でも相変わらずアホみたいなツラは変わらないねー。」
        
 これに至ったまでを考えてみよう。
               
朝目覚めて、寝起きが悪かったから布団も片付けず歯ァ磨いて、定春に餌やって、いちご牛乳飲んで。
朝飯か昼飯がなんだか分からない時間帯にたまごかけごはんを食ったぐらいは覚えている。
 
        
アルバイトの2人は今日は来ないらしいから、そのままぼけーっとだらだらした1日を過ごすつもりだった。
録画した再放送のドラマを再生しようとリモコンを探したが、
どこへ行ったのやら見つからず、真っ黒のテレビ画面が空しくあるだけだった。
        
そして外の空気でも吸うかと思い立って寝巻きのままチェーンロックを外して玄関を開けた。
                 
そしたらこの見知った顔がひとり。
数年前となにひとつ変わらない。もし一般人から見たなら目を引く赤い髪を覗けば外見は中高生くらいに見えるし、ちょっとばかし古臭い喋り方するなくらいの認識だろう。詐欺女め。
                  
いや、問題はそれじゃあない。何故、この女が家の前にいるのかだ。
     

                 
「何で?ねえ何で?タイムスリップ?不老不死ですかあんたァ?!」
「やーねえ、でも最近は昼寝の時間とか増えてきてるしちょっと運動能力が落ちたかなあって。
あと70年ぐらいでじき死ぬわさ。
けど自称16歳、心も16歳、体も16歳、いやァもう16歳ってことでいーんでない?」
                      
「良くねーよ若作りがァ!」
「褒めてくれてありがとう、でも何をしようとこの胸の小ささは埋められないのよ!
ボインの夢は叶えられないのよう!
一生若く美しいままで居られるってなら大歓迎だけど自身の容姿に満足してないままで成長が止まるってのはどうよ?」
「一生まな板のまま過ごせ。脳ミソの成長も止まってるよな、え?」
                                        
「まあまあ、5年、いや10年以来かなあ?住所調べるのに半年もかかったんだから。会いたかったよー。」
              
 悪戯っぽい目元がにっと笑って、口元が上がる。
ゆらゆら揺れるクラシックな茶色のワンピースは胸元にフリルの装飾があって、高級そうなアンティークカメオなんかもついていて。まるでかわいらしい少女趣味。・・・その年でそれはどうなんだ。あかね。
                       
おまけにフリルのたっぷりついた入園式みたいな真っ白なソックスは、この部屋にはあまりにも不釣合い。
あかねがぱっと紙袋を目の前に出した。
「たちばな」と薄碧色で書かれたそれは、いつも自分があしげなく通っている和菓子屋の名前とぴったり一緒だった。
                        
「ハイお土産、江戸の隠れた名店《たちばな》のお団子セット!もうすんっごいおいしいの!」
「・・・何しに来たんだよホントに。つか江戸で俺への土産買ってどうすんだよ。」
                    
 わけがわからないという感情と同時にこの女はわざわざ調べてこの団子を買ってきたのかあるいは俺の味覚が悲しいことにこの年齢詐欺女と同じだっただけなのかどちらであろうかと迷う。
結局こいつは頭がすっからかんな原始生物だから、とい理論に基づいてその辺の売り文句に引っ掛かって買ってみただけなのだろうと結論づけた。
                 
ただしこの年代の少女というものはパフェだのアイスクリームだの新しいものが大好きで、
和菓子のわの字も好きな今どきっ娘☆(死語か)なんてどこを探そうが見つかるまい。
                   
 図々しい物言いも相変わらずだが、ちいとばかし気を抜けば小さく丸め込まれてしまう。
銀さんは遊ぶ方なのに、と心なしか悔しい。まるで手のひらで転がされているような感触で、やっぱりその辺は自分達より年上なのだなと感じさせられる。
         
まあそんなことは口に出さない。絶対調子に乗られる。
              
 じゃあとりあえず上がらせてもらうわさ、とあかねの声が聞こえ、無理矢理扉の隙間から室内へ入り込む。
靴を投げ出して足早に手前の部屋へ入っていった。
がちゃり、と鍵の音のようなものが聞こえたから、きっと部屋を閉めやがったにちがいない。
           
ふざけるなよ。意地でも開けてやろうと意気込んだ。