二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【オリキャラ募集】KAMISAMA!【銀魂】 ( No.47 )
日時: 2012/02/05 17:16
名前: 夏雲あざみ ◆iYEpEVPG4g (ID: WPJCncTm)
参照: http://loda.jp/kakiko/?mode



10 生きていく矛盾 【過去編】



松陽先生が死んだというのに、わたしはなんて冷静なんだろう。ああ吐き気がする。
明日、一斉に幕府の中心地へ天人たちが攻め入るという知らせが入った。まるで現実味が沸かない。がらんどうになった心は意思を失くして、今や情報と任務の意でのみ、こころとからだを繋ぎ合わせるものはない。今まで築いてきた全て、あっけなく終わってしまったかのように。今まで護ってきたもの全て、砂のように零れ落ちて失ってしまったかのように。納得も、理解もできない。しようとも、思わない。例え地面を這い蹲って土下座してでも、わたしはあの人に生きていて欲しかった。
きっと松陽先生のことだから、自分の生き方に、正直に、潔く。聖人のように、全てを受け入れた上で、全ての悲しみをその胸の奥底にしまい込んで。そうして笑って、死んだのだろう。尊い人を、失くした。決して彼の死を汚してはならないのだとようやく悟った。

———だから、わたしは。
            
あの人が居たから、皆が居たから。わたしはいつだって生き方をあなたたちに学んで、あなたちに助けられて。ありがとうと言える小さな幸せがあって、笑い合える家族ができて。いつだってわたしはあなたの脛をかじるようなものだった。
だからこそ思うのだ。あの人の死の重さを理解しながら、沸々と煮える憤りと痛みを。今すぐにでも戦場へ出向いて刀を振り回さんばかりのその怒りを。感情のまま、矛先を向けてはいけない。どうしてわたしが、彼の願いを、掻き消すようなことができようか。誰にだってする権利などない。もし、それを破るような者がいたら、わたしが血を以て制裁するだろう。例えそれが、仲間であろうと。家族であろうと。
 
「晋助や、辰馬には?」

「いや、まだ言っていない。」

「わたしから話す。それじゃあ二人とも、暫くは動かないで。ここは殆ど物資も無ければ天人たちの御眼鏡にかなうようなものなんかありゃしない。川を下れば偏狭なところだが小さな町がある。相当出血が酷いみたいだったし、もし容態が悪くなればそこで銀時を手当てして。」
 
「それでは戦力が。俺も行こう。」

「わたしを誰だと思ってんの。」
   
「しかし。」
 
「てかそれじゃあんたを付けとく意味がないじゃない。」

 納得のいっていない表情の小太郎に言った。
 
「あーほんとなんにもわかっちゃいないのねえ。」

「そいつ、ほっといて傷塞がる頃には刀ァ持ち出して松陽先生を殺した奴のところまで行きかねないよ。」

「あんたら二人分の遅れなんてわたしが行けば直ぐ取り戻せるってのに。・・・・・・少なくとも、其処に突っ立ってるひの木の棒みたいな奴よりはマシさね。」

  
 二人に背を向けて、右手を掲げた。この手のひらに、汚れきった手のひらに、数万の民のいのちがある。わたしはそれを、見殺しにはできない。救えるその手は、わたしのものではない。救わざるして、その手は業でしかならない。たとえ何万の敵を斬ることになろうと、わたしは、護るもののために戦わなければならない。それを教えてくれたのは先生、あなたでしょう。
        

あなたも同じでしょう、銀時。護るべきものを教えてくれたのはあなたなのだから。