二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【リク開始】KAMISAMA!【銀魂】 ( No.73 )
日時: 2012/04/12 01:24
名前: 帚木ちづる ◆iYEpEVPG4g (ID: ycpBp.uF)
参照: http://loda.jp/kakiko/?mode


 
     
 例えそれが意味なんてなくて自分が満足感を得られるだけの身勝手な行動だとしても、私はそうしなければ生きていけなかった。奪われたら生きていけない。だから多目に見てよ神様、なんてほざくつもりはない。幸せはゼロサスゲームらしい。私が救った一部が居たとしても、私が不幸にした人間は山の数程居るのだから、その分誰かが幸せになっているのだろうか。私だって辛い思いはしたくないし、悲しいことも当たり前に嫌いだ。普通に、幸せになりたいなんてささやかな願いがあって、国のために死ねと言われて死にたくなんかない。でもね、神様。誰かがやんなきゃいけないことからその場凌ぎに逃れても、結局は他の誰かがその役目をしなきゃいけないんじゃないかな。不幸を背負えば、きっと誰かが幸せになってくれると思った。だから、志願した。皆を護りますと、できもしない大層な言葉を吐いて。——実際は、負うべき負の感情を、たったの一人分の代わりに請け負っただけなのに。偽善といわれても仕方がない。だってそれは正に偽善なのだから。けれど、そのたったひとつの偽善が無ければとうに私は死んでいる。

        

 ◆鉛を呑んだ小烏
    ( やがて濁り熱を持ち、そうしてさらさらと崩れ土に孵る )
 
   
 どろりと袖に付着した血液が、浅葱の布地を黒く染めている。最初の頃は顔をしかめていたが、今はもう何の感情も覚えなくなった。天人の血は地球人のそれと何ら変わらなかった。自我があって感情のある生きものの命を奪ったのだと今一度自覚させられ、凛は苛立ちと背筋が栗毛だつような不安を覚えていた。大丈夫、きっと勝てる。絶対に負けたりなんかしない。私がこんなんでどうするの。何度も何度も、そう言い聞かせた。いつだったか、天人に襲撃にあって自身が死にかけた時、このまま死んでいい、と思った。でも、それは一瞬で、直ぐに現実へと引き戻されて、死にたくない無駄死にしたくないって必死に叫んだ。それから何のために戦っているのか、時々わからなくなった。
 
「夢だったらいいのに。」
  
 このまま、目が覚めたらあの頃に戻っていて、皆と一緒に平穏な暮らしができたらどんなにいいだろう。もし、だなんて。つまらない後悔なのは知っている。それでも願うだけなら自由だ。青く青く、何処までも透き通るような空の下、どうしてこんな綺麗な景色がそこらじゅうにあるのに、天人は何の躊躇もなく焼き払えるんだろうか。見渡した辺り一帯は焼け野原だ。焦げ臭く、血と死体の喉が焼けるような臭いが風に乗り突き抜ける。私も空になりたい、手を伸ばして、そう呟いてみた。推し量ったようにどこからか空は曇り、手に零れた一粒を境に雨が降り出した。乱雑する骸の上、血に汚れた剣を携え、雨に打たれるその姿はどこか神秘的ともいえる光景だった。激しさを増す雫が肌に突き刺さる。
 
「お前さあ、こんな場所に居たのかよ。ほら、早く行かねーと風邪引くぞ。」
 
 瞑っていた目を開けると、銀時が左手を引っ張った。随分長い間突っ立っていたようだ。体力の消耗のせいでふらついてしまう。手足が冷たい。
 
「嫌だ。」
「はあ? 何言ってんだよ、帰るぞ。」
「帰るって、どこに。」
 
 ざあざあと降り続く雨が言葉を掻き消す。掴まれた手を振り払った。
 
「・・・・・・ねえ、答えてよ銀時。帰る場所なんて、どこにあるのよ! 皆が辛いのは知ってる! 仲間の為に国のために戦わなきゃいけないのも! でも本当に私達のしてることって意味があるの? どうして私はこんなに苦しいんだろうって、逃げることばっか考えて、毎日毎日、どうしようもなく不安になるの。」
「意味が無くて無駄だったら、お前はこの戦争に参加してなかったと思うか?」
「わかんないよそんなのっ。私は、皆みたいに強くない。」
 
 生暖かい物が頬をつたう。どうしようもない不安に耐え切れず、後ろを向いて駆け出すと、嗚咽に似た苦しさが込み上げてきた。振り向きもせず息を切らしてひた走る。目の前なんか見もしないで、がむしゃらに足を動かした。弱いからこんなに苦しいのかな、皆の足手まといなのかな。ねえ、教えてよ。
 
「来ないでよ!」
 
 脚力では敵わないと知っていたから、そう言った。脈が波打ち鼓動が速さを増す。ぜいぜいと息を付いて膝を折った。
 
「帰る場所なんざどこにだってあるだろ! 誰のためだとか、くだんねえことで悩んでんじゃねえよ。」
「弱くてもいいじゃねーか。俺だってなあ! 弱いんだよ! お前は戦って国を、人を守ってる。そんでもって辛くとも今まで頑張ってきた、誇っていいことに違いねえ! そんだけ頑張ったならもう、自分の為に生きてたっていいんだよ! 偽善だの何だの、自分の信じてることをバカみてえに貫いても許されるんだよ!」
                                            
「それでも怖いってんなら俺がお前を護ってやるから。何の心配もねえ。だから、もう、自分のことそんな風に言うな。」
 
 抱きしめられたら人の温かさに安心した。まだまだ私は弱い。弱いけれど、この人たちを裏切るなんてできない。私は私の意志を貫いて、そうして生きていけばいいのだ。混雑した想いが一気にほどけてぱらぱら砕けて、すっきり軽くなった心の空き容量を埋めるようにあたたかさが身を包んだ。優しい人の優しさにまた涙が零れた。この人がいるから私は大丈夫。この人だけは、きっと私をずっと信じてくれている。
 
「銀時のバカ。アホ。能無し。天パ。」
「いや、最後の言葉何おかしくね?」
「おかしくないよーだ。あのね、ありがとう、ほんと。でも私、護られたりなんかしないよ。私、自慢じゃないけど結構な剣の腕はあると思うの。だから、自分を護るよ。それで、皆も護る。みんなみんな護ってみせる。」
「その心意気なら死にそうもねえな。今度泣きついてきたら笑ってやる。」
「な、泣いてない! 泣いてないよ!」
「ええーはいそうでしたねー、あー動画にでも撮ってやれば良かった。」
 
 辛くても生きていこう。私には大事な人がいる。私は、私の意志で此処にいるんだ。雨の中でも気分は落ち着いていた。手足の冷たさと相反して、だんだんとこころの内側が暖かくなってきた。銀時が濡れた自分の上着を被せてくれた。あまり防寒性は感じられないが、それでも嬉しいことがばれないよう、深くうつむいた。





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瑠々さまリク
◆鉛を呑んだ小烏こがらす/切ない?/銀時
   
レディ順番飛ばしてごめん(´・ω・`)
むっずかしいよおおおお!