二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: KAMISAMA!【銀魂】 ( No.8 )
- 日時: 2011/12/14 00:04
- 名前: 千鶴 ◆iYEpEVPG4g (ID: WPJCncTm)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel3/index.cgi?mode
04 【夜叉と羅刹】
戦乱の世。平和だった、幸せだった、平凡な日常が全てまるで脆い硝子のように砕けては消えて行く。
穢れなき魂でさえ汚泥の中でもがいては、その身を落とし鬼になる者、最後の最後までうつくしいままでありたいと死に絶えた人達。
怒りの矛先はその要因に向けられ、火種が弾ける。
何故苦しいのか何故壊されなければいけなかったのか。あいつ等が、殺した!
その戦場は地獄。人など存在できぬ場所。人を捨てた、鬼の住む場所。
***
わたしのことかい?戦時中にちょいと出向いただけの敗残兵さ。まあ。この年になるまで生き残ったしぶとい馬鹿だよ。
少し詳しく昔のお話をしようじゃないか、江戸に天人が襲来してきたあと、人々は恐れをなした幕府に憤りを感じ、主に侍、——武士だった人や、身分のない人々の多くが武装した。何の為だって、そりゃあ戦争の為にちがいない。
それでこいつらが起こしたのが、俗に言う「攘夷戦争」ってやつさ。
ところが当時最強を誇ってた有名な武将や軍なんかがこれまたばったばったと簡単に倒れてくもんでね。
まさに江戸っちゅーもんは井戸の中の蛙、つまり小さい世界だった。
それで姿を現して来たのが今まで殆ど無名だったような無法者。
そいつらの名前なんかみーんな知ったこっちゃなかったから、鬼神だとか闘神だとか大層な名前をつけてせめてもの救いを信じた。
白夜叉って知ってるかい?
わたしは何度も、見たことがある。真っ白い姿で刀を振り回しながら、あちらこちらで血しぶきが上がる。
あれは——鬼だと思ったよ。人でないと、本当に、思った。
そういう人間でもどっかは人間くささみたいなもんが残ってると思ってたが、そいつは夜叉の名に相応しかった。
悲しいぐらい、むしろ、もっともっと彼が弱い人間だったら、救えたかもしれないのに。
———羅刹天、って知ってるかい?
破壊と滅亡を司る神で、そりゃあ綺麗な赤い髪をしとるんだとよ。
破壊と滅亡を司るってのに神様だなんて全くもって馬鹿らしい。
壊すことしか、殺すことしかできやしないのに、何かを護ろうだなんてさ。
後悔するぐらいなら初めから殺すな。
分かってるでも謝らないといやなんです。
お前の目的は?江戸の大切な皆を守るためでしょ?
ごめんなさい弱いんです誇りに傷をつけてごめんなさい。
殺すことで守ってるんでしょ。
そうです矛盾してる。死にたい誰かに助けてもらいたい。
生きたくないんだったら死ねばいいじゃない。
ごめんなさい死にたくないです。死にたいだけの臆病者だから。
結局けっきょくわたしは、人に拒絶されるのが怖いんです。
自分のために生きてるくせに、理由を他人に押し付けて、生きてなきゃいけない理由がほしいんです。
ここは地獄だ。
わたしは人でもなければ鬼でもない。ましてや神でもない。
戦場を駆ける、赤い羅刹。
彼女が「違う」世界の人間だとは、誰も気付きやしない。
———いや、思ったかもしれない。あれは、人ではなく、何処か遠く暗い闇から来たのだと。
そして彼女の幸せもまた、理不尽に壊されて。
もしかしたらとうに壊れていたのかもしれない、彼女自身が、だ。
酷く優しい顔で仲間を見るくせに、酷く蔑んだ顔で自分を見る。
壊すときはとびきり悲しそうな、それでいてなにかを納得したような、冷たい雨が絶え間なく降り注いでいるような。
嵐の前の淀んだ、静けさで。
その瞬間が終わると、無慈悲な制裁が始まる。