二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ジョ−カ−の国のアリス ( No.20 )
日時: 2012/01/01 16:18
名前: 隼子 (ID: a1.gBlqJ)
参照: http://pasusitai

第五話「ジョ−カ−の森」








私は、今までにハートの城、帽子屋屋敷、クローバーの塔、遊園地、・・・・この順番で四季を全部見て回った。さすがに疲れた。そのうち、風邪でも引いてしまいそうだ。
今、私は森にいる。今は昼の時間帯だ。危険は無いだろう。しばらくここで休んで行こうと思う。ここには、季節が無い。体を休めるならここが一番だろう。
エイプリル・シーズンになってから皆に会ったが、みんな元気で、相変わらずだった。このワケの分からない現象を平気で受け入れていた。私はどうかといえば・・・・・・このわけのわからない現象を受け入れられずにいる。
(私はやっぱり・・・・余所者なんだわ)
こういう時ほどそう思う。私は、この世界では異質な子。・・・・余所者なのだと。その時・・・・・。


「やあ、お嬢さん。何をしょげかえっているの?ここで悩んじゃいけないよ。ここは楽しむ場所なんだから。」


声のしたほうを見ると、赤毛で、片目に眼帯を着けた男がいた。ピエロのような格好をしている。
彼には顔がある。この世界で役を持っている証拠だ。役を持っていない人達のことを、この世界では『顔無し』と呼ぶ。
顔が見えにくく、存在感が薄い。ある程度仲良くなってしまえば見分けられるが、この世界の人たちは皆見分けようとしない。逆に『役持ち』と呼ばれる人たちには、顔がありみんな個性が強く、存在感がある。
ここにいるピエロのような格好をした彼も、役持ちなのだろう。
「あなたは?」
「俺は見ての通り、ジョーカーさ。アリス=リデル」
何が見ての通りなのか分からないが、彼、ジョ−カ−は私のことを知っているようだ。
「名乗る前から知ってるなんて。私って有名人なの?」
「ん-----・・・・どうだろう。・・・・君は?」
「私はあなたのことは知らないわ。教えてくれる?」
ジョ−カ−「俺はジョ−カ−、サーカスの者だ。この森は俺の森で、勝手に入って来ちゃいけないんだよ?」
今ここは彼の森で、勝手に入って来てはいけないらしい。彼はサーカスの者だと言いていた。サーカスに関係することなのだろうか。
「関係者以外立ち入り禁止ってこと?」
だとしたら大変だ。今すぐ出て行った方がいい。
「でもいいよ。君は特別だ」
「私が余所者だから・・・?」
「あぁ、君は余所者だから。」
(また・・・だわ)
ハ-トの国の頃を思い出した。余所者と呼ばれることは気持ちのいいことではない。
「・・・・・・」
「そういやそうな顔しないでよ」
「余所者なんて呼ばれても嬉しくないわ」
「俺はいいと思うけどなぁ。羨ましいよ、みんなに好かれて、俺にも好かれる」
「・・・・どうも・・・」
嬉しくないがお礼を言う。
「俺は君を楽しませてあげるよ。サーカスで」
「招待してくれるの?」
「ああ。俺はみんなを楽しませてあげたいんだ。皆招待するよ」
「都合が良ければ行かせてもらうわ」
「来ないと駄目だよ。君には俺が必要になるだろうから」
「どういうこと?」
「今はまだ、エイプリル・シ−ズンになったばかりだから、何所へでも行けるけど、数時間帯経てば、自分の滞在している季節以外の場所は行けなくなるよ。」
「?・・・そんな・・・」
今まで同じ世界にいればいつでも会えると思っていたのだ。ショックを受ける。
「行きたいの?自分の滞在している所以外も?」
「行きたいわ!皆友達で・・・。」
皆、大切な友達だ。会いたいに決まっている。
どうやって行くのか知らないが、行きたい。
「じゃあ、俺とゲ−ムで勝負して勝てたら君の行きたい季節変えてあげるよ。」
ゲ−ム・・・・・この世界に来たばかりの頃、よく聞いた言葉だ。変な薬を飲まされたあの時、ぺ−タ−が私に言った、『ゲ−ムの始まりですよ』と・・・・。
(まさか・・・あのゲ−ム!?)
「普通のカ−ドゲ−ムだよ。君の知っているものでいい」
「・・・・・・」
この人は何を考えているのか解らない。
「ジョ−カ−は余所者のあんたとゲ−ムしたいんだよ、アリス」
「・・・・!!?」
(!?、誰??)
今、この森にいるのは、私とジョ−カ−の2人だけ・・・・のはずだ。なのに、声がする。
ジョ−カ−「君だってジョ−カ−だろ、ジョ−カ−?」
ジョ−カ−は驚いた様子もなく、普通に喋っている。
?「おまえだってジョ−カ−だろ!」
ジョ−カ−「出て来ないでよ。ジョ−カ−、ややこしくなるだろう?」
?「おまえが出てる時点でややこしいんだよ。お前が引っ込んどけ」
ジョ−カ−「だけど、大体において君だけが出てきていると、事が更にややこしくなっているじゃないか。・・・腐るほどに前例があるだろう、ジョ−カ−」
?「ケッ・・・・腐らせとけよ。今回もそうなるとは限らない」
「なになになに・・・!!??」
誰もいないのにジョ−カ−は喋っている。誰もいないのに。
ジョ−カ−「今の時点でも混乱を招いているじゃないか・・・これだよ、アリス」
そう言ってジョ−カ−は腰についてる仮面を指差した。仮面は白く、笑っている表情で、周りには薔薇の花が着いている。とてもシンプルだ。
「この仮面が喋ったの?!」
仮面「ああ、俺はジョ−カ−だ。よろしくな!」
耳を澄まして聴いてみると、本当に仮面から声が聞こえているように思えた。
「俺だってジョ−カ−だよ?ジョ−カ−」
だが、仮面から声が聞こえると思ったが、そんな事があるわけがない。ジョ−カ−はサ−カスのものだと言っていた。腹話術なのだろう。
「腹話術?」
仮面「違うよ、ボケ・・・・もがもが・・!!?」
ジョ−カ−は焦って仮面の口を塞ぐ。
「う・・・うん。・・まあそんなとこ。・・・・ごめんね?こいつ口が悪くてさぁ・・・・」
「腹話術だとすると『ボケ』とか言ってるのあなたって事になるんだけど」
ジョ−カ−「ジョ−カ−のせいだよ」
ジョ−カ−は困った顔で仮面を見る。
仮面「うっせ−よ。いいだろ、別にボケとか、カスとか言ったくらいで、〜〜〜〜とか、〜〜〜〜〜〜って言ったワケじゃねえんだからよ。」
ジョ−カ−「うわ・・・・!?わわ…だ、黙れれよジョ−カ−」
仮面「おまえこそ黙れよジョ−カ−」
(これも芸なのね)
これは芸、そう思えばコミカルで楽しい。
仮面は下品だが、芸だと思えば気にならない。
「楽しい人たちね。」
ジョ−カ−「え、そう?心が広いね君。」
仮面「この世界にしちゃぁな・・・・・」

と、そこで時間帯が変わった。夕日に照らされる。夕方の時間帯だ。
ジョ−カ−「時間帯が変わったね。そろそろ帰った方がいい」
「そうね。みんな待っているわ。」
仮面「また来いよ。」
「ええ。」
私は森を歩く。ジョ−カ−が手を振って見送ってくれた。

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今は城に帰る途中。街を歩いていたら、ビバルディに会った。
「おお、アリス!こんなところで何をしているのだ?」
彼女は、ハ−トの城の女王様で「首を刎ねよ!!」が口癖。彼女は夕方の時間滞が好きで、紅茶好き。よくお忍びで出かけている。今もそうなのだろう。髪の色が、紫で、美しい、ヒステリ−な女王様だ。

「今まで季節を回っていたの。今はその帰り道なのよ」
「そうか」
「森で、ジョ−カって人に会ったわ。」
「ジョ−カ−か・・・。奴は芸達者だから面白かっただろう」
「ええ。腹話術が上手いのよね。楽しかったわ!」
「ふふ。それは良かった。・・・・・今は恩赦の期間だから、純粋に楽しめばいい・・・」
「?」


恩赦の期間・・・・・・。それがどんな意味なのか、この時の私は知らなかった・・・。
恩赦の期間にサ−カスで楽しめなくなった時。
私は、・・・・あの、暗い場所に行くことになる。