二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼〜新選組の涙〜 ( No.62 )
日時: 2012/05/08 06:22
名前: カノン (ID: KjYpxfgY)



第3話「心の底〜音色〜」


女の人(以下少女)は悪夢にうなされていた。
目を開けると見えたのは窓から差し込む朝日と天井・・・・
ゆっくり体を起こすと周りを見渡した。
見たことのない部屋だ。
不意に横を見ると2匹の虎が座っていた。
2匹とも心配そうなまなざしで少女を見ている。
だいじょうぶだよ、と少女は2匹の虎に笑顔を向けて立ち上がった。
窓を開けるとまだつぼみの桜の木が見えた。
もう咲いてもいいころなのに、一輪も咲いてない。
春風が吹き、それのせいで少女の髪が揺らぐ。
「(咲けばきれいなのに・・・)」
少女はそう思うと柔らかな声で歌いだした。




この川の流れるが如く
穏やかに音色が聞こえる
吹く風が頬を撫でていく
懐かしい思い出が滲む


遙かなる空は
胸を裂くように
忘れかけた記憶を醒ます
溢れるは涙


白い桜の花の季節は
遠く夢の中にだけ
舞い散る花びらの囁いた
忘れられない言葉



☆★☆★☆★☆★☆★☆★



「総司、あの女をここに連れて来い」土方
土方は苛立ちながら言った。
まあ、無理もないだろう。
朝から原田・平助・新八の三人が魚の取り合いをしていたからだ。
沖田は何も言わずに薄く笑いながら部屋を出て行った。
ふと、外を見る。もう咲いていいはずの桜がまだ蕾のままだ。
「(咲けばきれいだと思うんだけどな・・・)」
自分でも珍しく思うが、すぐに歩き出した。
・・・・?
音が聞こえる。柔らかな・・・・声。




眠れない夜を一人きり
歩き出す ぬるい風の中
いたずらにはしゃいでいたまま
気がつけば思い出に変わる


月も雲隠れ
蒸し暑い日々の
消したい記憶も儚くは
止まらない涙




思わず立ち聞きをしてしまう。
その時、沖田の目の前をあれが通った。
そう、桜だ。
沖田の目の前を舞い散ったの方が正しいのかもしれない。
今まで蕾だったはずの桜が一斉に咲き始めた。





刻まれる時間は残酷に
ヒトを縛りつけ遊ぶ
青々と茂る桜の葉は
何も語りはしない


白い桜の花の季節は
遠く夢の中にだけ
舞い散る花びらの囁いた
忘れられない言葉







少女が歌い終わるころには、満開だった。