二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ぬらりひょんの孫 忘れないよ 第二章 ( No.95 )
- 日時: 2012/01/29 20:06
- 名前: 亜鶴 (ID: JFBEfYhr)
花手箱 第二幕 割れた関係
「こほこほ」と母の前で軽く咳が出た。今回は軽い咳だったので、血は出なかったけど蒼は心配した。風邪を引いたのではないかというが、もう風邪ではないことは確かだ。だって血が出たのだから。重病だろう。
桜は病気のことに少し詳しい。たぶんこの病だと確信している。その病名は「労咳」という。死病だ。でも労咳でないことを信じている。
蒼は心配性すぎる。安心させるためにも、明日医者に見てもらうことになった。
((どうか…労咳ではないように…))と必死に願うことしかできなかった。
そして——————その次の日の朝…
京の街中を一人で歩く。街娘たちは桜に見とれていた。桜のことを女子とは見ず、男子として見ていた。桜の服装は男装っぽいので、よく間違えられることがある。
「おにーさんはんおぶしていきまへんか?」
「いいです。所要があるので。」((ひどい…私、女ですよ?))と心の中でぶつぶつ言って、苦笑いして、断る。
それでも娘は桜の腕を掴んで「ちょいぐらええいではおまへんどすか?」と言う。
娘から逃れる方法はない。仕方がなくいつもお茶することになる。そして今日も。おかげで男子からは羨ましがれ、嫉妬され=喧嘩となる。
「有難うおました。またおこしやすね?」最後には念を押されてしまう。
死ぬ思いでやっとたどり着いた医者の屋敷—————
門前に一人の娘が箒をもって、枯葉を掃いていた。
「あの————」小さな声で娘に声をかける。
「…はい?」と振り返る。綺麗な娘だった。二人は目が合い、桜は普通にしていたが…娘は頬を染めた。
「御用は?あっ御診療どすか?」と訊ねてきた。
「はい。」と返事すると…娘はこちらへと言って、中へと案内してくれた。
娘の案内のもとで、医者のいる部屋へと入る。
まず最初に「先生、お久しぶりです。」と挨拶した。中にいた医者は驚いた顔をしていた。
「おおー桜君やないか。修業さかい帰ってきたちゅう噂はほんまやったか。」
「まあこに座ってくれ」と言われ、指定された場所へと腰を下ろす。
「今日はどないしたん?」といきなり質問された。そしてあの話を説明する。
説明し終わると、医者は怖い顔をしていた。先生?と声をかける。声をかける勇気が必要な程…緊張していた。
「あんたは労咳を煩っとる。」
…その言葉聞いたあと桜の時間は止まってしまった。
「やっぱり…予想していた通りです。」悲しいことなのに笑ってしまう。
「笑い事おへん!!すぐに戦いさかい離れて、療養どした方がええ。」と叱られ、今後の生活について言われる。でも笑いが止まらない。
「無理です…」
「嫌です」
「離れたくない」先生を無視するような言葉たちが口からたくさん溢れ出てくる。
「桜君…」
その時、がっしゃんと何か割れる音が襖のすぐ傍から聞こえる。先生はハッ!と気がついた。
「鈴、鈴…そこにおるのかい?」
「鈴…?」
「鈴を忘れたとしゃべるのか、桜君!!うちの娘や。」と怒鳴られた。でも先生の言葉は昔の思い出を思い出した。修業のことしか考えていなかったから、幼馴染のことすら忘れていた。
「鈴…」と口から彼女の名が溢れ出す。急いで立ち、襖を開けた。そこには湯のみの欠片が散らばっていた。鈴は泣きながら、欠片を集めている。彼女はさっき…案内してくれた娘だった。桜の病のことをタイミングよく聴いてしまった。親友の病のことをきいてしまったせいでショックみたいだった。
「痛いっ」彼女は欠片で指を切ってしまった。その指からは大量の血が溢れ出す。
「鈴っ!!」急いで彼女の傍に駆け寄って、血のついた指を触る。
「桜君、大丈夫だからっ…」と言う。桜に対して、笑顔を見せる。無理して、嘘の笑顔を作っていることが分かった。もう戻ることのできない関係。親友がすごい遠い所に行ってしまった気分だった。
もう…すべてが壊れてしまった。割れた湯のみのように…
続く…
アドバイス・ご感想などください。
京都弁ってむずいですね。
労咳…肺結核のことです。