二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナズマイレブンGO〜なくしたくない物〜 コメントください! ( No.129 )
日時: 2012/01/17 18:56
名前: 柳 ゆいら (ID: jIh6lVAe)

22.ウソばかり



俺と吹雪さんは、空の見える高いところ——つまり、屋上のようなところに出た。風はピューピューとふいていて、身をブルリと震わせた。
かたい石のゆかにふたりして座っている俺と吹雪さん。
沈黙がおとずれ、その沈黙を破った俺の言葉は、こうだった。

  「吹雪さん、これ。」
吹「え?」

俺がさし出した者に、一瞬吹雪さんはきょとんとした。えっ、そこきょとんとするポイントですか、吹雪さん!

吹「これ……。」
  「あの、見てのとおり、毛布ですが;;」
吹「あ、ああ、うん、そうだよね。ありがとう。」

なんだと思ったんだ! というツッコミはさておき。
俺らがここに来たのは、みんなを起こさないためなんだから。まあ、大声でつっこむと、下まで響いて聞こえちゃう可能性大なんですが;;

吹「ほんとうに君は、備えがいいね。おまけに、的であるはずの雷門中に対しても、とっても優しいし。」
  「えっ、そ、そんなことないです! ただ、その……こちら側にとってある『材料』になるみんなには、元気でいてもらわないと困るんです。」
吹「『材料』?」

俺は黙ってこくんとうなずいた。それだけだった。
じっと星を見つめ、目をスッと細める。

ユ(材料って言い方は悪いかもしれないな。いちおう人間だし。でも……。)

俺と吹雪さんは、3分ほど口をつぐんだ。どちらも口を開かない沈黙って言うのは、こんなにも重いものなのかと思った。

  「吹雪さん、なんで俺を見張る必要が?」

あんまりにもこの状況はいごこち悪かったもんだから、先に俺が口を開いた。いくら冷たいキャラがいるとは言え、こういう沈黙は苦手なんだな;;

吹「神童君たちからは、『とても強力なプレイヤー』って聞いていたからね。これは念のため、と思って……。」

あー、信頼ないってことですね、はい。
勝手解釈かもしれませんが、そのとおりだと思いますよ〜。

  「そ、そうだったんですか;;」
吹「とくに、剣城君はしつこいくらいに言っていたよ。『あいつはあなどれない。いつも誰かにウソをついてる。たとえ、1番親しい人にさえ。』ってね。」
  「剣城まで……俺ってほんっっっとに信頼ねぇ……。」

俺は片手で頭をかかえた。まあ、たしかにほんとうのことなんだがな;;
女子ってことだけじゃないし、あ、たぶんみんなは分かったと思うから言うけど、風丸一郎太のいとこの妹ってことも言ってないし、なによりもっと大切なこと、誰にも言ってないんだよな。
ていうか、なぜ冬に近くなった外は、こんな寒いんだ……。歯の根があわないで、ガチガチいってるぞ……。

吹「ユエ君は、シードをやっていて得なことはあるの?」
  「え、得?」

なに言い出すんだろ、急に。
でも、吹雪さん、まじめな面持ち。ここはふざけた返事をすると、まともに『エターナルブリザードを』くらいそうだな……。

  「……別に、得なことなんて、なにも。ただ……………………………………………………
















































































































































自分でいいな、と思うことはないけど、『ある人』に『うれしい。』って感じてもらえてる。それだけで充分なんですよ、俺は。自分が幸せになることなんて、もう3年前から考えたこともない……。」

マジ。マジです。
たしかに、自分がこれだと不幸かも、とかは思っても、幸せになりたいとは、ここ数年考えたことがない。まあ、異常かもしれないけど。
でも、ほんとうに『あの人』に笑ってもらえてるだけでいいんだ。
『あの人』——つまり、1番大切な人に。
笑ってもらっていれば。

吹「そ、うなんだ……。じゃあ、その人は、ユエ君がシードをやってること、知ってるの?」
  「そんなの、教える必要ありませんよ。」

俺は冷たく言い放つ。こんなの、この言葉ひとつで片付く。きょうは、さっさと用事を済ませたいんだ。

  「用事があるので、失礼します。」
吹「待って! まさか、フィフスセクターに報告に……。」
  「その予想、あたるかはずれるかは、俺次第ですね。」

俺はもう一度冷たくそうとだけ言い放つと、ひらけた屋上から飛びおりた。