二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナGO〜なくしたくない物〜 NEW:チップ ( No.410 )
- 日時: 2012/03/11 19:38
- 名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)
- 参照: 花粉症で目がかゆいのよ、くしゃみ出まくるのよ、鼻ズビズビなのよ((泣
57.希望
輝「ユエ!」
緋「ふう、やっと追いついたぁ。」
輝たちの声が、上から聞こえてきた。
ふり返ると、ふたりが息を切らしながら降りてきていた。思わず、また新しい涙が生まれて、泣きそうになる。
ユ「ひ……かる…………あか……し……。」
緋「ったく、心配させるなよな。やっぱ、ちゃんと手当てした方がいいって。保健室、行こうぜ。」
ユ「……いや。」
輝「いやじゃないよ。こんなときまで強がってちゃだめだよ。」
ユ「俺は……強がってるんじゃな……い……。そ……の逆……。」
輝「逆?」
輝がいぶかしげな声で聞いてきた。顔を見られたくないから、輝と緋詞の顔は見えない。でも、なんとなく分かる。
俺は、泣きながらうなずいた。
ユ「事情を聞かれるのが……怖いんだ……。先生の元にまで……あの……話しは……グズッ……伝わってて……も、し……信じてもらえなかったらと思うと……うっ……怖くて……。」
輝「だ、大丈夫だよ! だって、おれたちもいるんだよ? 絶対信じてもらえるって!」
ユ「……そう……かな……。」
俺は顔を上げた。輝と緋詞は、同時にうなずく。
そのことで、救われた気がした。
ユ「……ありがと。」
輝「じゃあ、行こうか。」
ユ「うん。」
?「待って!」
階段の上で声がした。
見れば、そこには……
ユ「天馬、みんな……。」
そう、サッカー部員がいたんだ。しかも、全員。
……今さら、なんなんだろう。あやまるってことは、まずないよな。
べつに、全然いいんだけどさ。
天「……ユエ。」
ユ「なに?」
おだやかな声で答える。ここで声をあららげたり、返事を返さなかったりするのは、ただの八つ当たりだと思うから、やらない。
ただ、ほほ笑んで答えはしなかった。
ユ「どうしたんだ?」
天「おれ、おれ……。」
あのー、「おれ、おれ。」って言われても、よく分からないんですがー。
天「その……ごめん!」
サッカー部「ごめん!」
ユ「へ?」
思わず、ひょうしぬけした声が出た。
ご、ごめん?
ユ「なんで、みんながあやまるんだ?」
天「だって、ユエを疑って、ごめんってこと。やっぱり、ユエの性格を考えてみたら、いじめることはないと思って……。」
ユ「……。」
天「ユ、ユエ? も、もしかして、やっぱり怒ってるの?」
俺はバッと顔を上げて言った。
ユ「まさか! 全っ然! べつにあやまらなくても、よかったのに。」
笑顔で返した。少し、無理がある引きつり笑いになっていないといいけど……。
でも、引きつり笑いだったみたいだ。
天「無理しないで、いいよ。」
天馬は、ゆっくり階段を下りてきた。
ユ「べつに、無理なんて……。」
天「ユエ、分かりやすいんだもん。そんな笑い方、ユエはしない。」
天馬がするどすぎるんだよ……。
天「今まで、気づけなくてごめん。つらかったんだよね。」
ユ「…………気づかれなくて、全然よかったんだ……。」
天「え?」
ユ「でも、気づいてくれて、うれしかった。」
天「ユエッ。」
天馬が、ギュウウッと俺の体を抱きしめた。
その手が、俺にとっての『希望』だと思えたことは、言うまでもなかった。