二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: イナGO〜なくしたくない物〜 NEW:希望 ( No.432 )
日時: 2012/03/26 12:27
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)
参照: http://www3.atpaint.jp/kakiko/src/kakiko1332389297627.png/img/

63.お母さんみたいですね。



ブロロロロロ——……
車の中。エンジン音だけがひびいていた。けっきょく、ユエはいつまでたっても来なくて、青山先輩がバスに乗って、ついて来た。

輝「ユエ……。」
剣「心配するな。きっと、なにかどうしても行けないような理由があったんだろう。」

となりの席にいた、剣城がひとりごとのようにつぶやいた。

輝「うん……そうだと、いいんだけど……。」

ユエ……大変なことになってないといいんだけど……。


      〜in神童の病室〜(最近神童出番多いなぁ……)


友「またきちゃいました☆」
神「またか;;」

きのうさんざっぱらあんな思い話をしたのに、まさか笑顔でここにくるとは……。
しょうじきビックリの神童である。

友「きょう、お兄手術って言ってましt 神「なんだって!? きょうは……。」そうですよねぇ。」
神「えっ……。」
友「たしかにお兄『明日決勝なんだけどなぁ〜。』って言って、かなりショック受けてました。あ、あと、あんまり成功率も高くないから、危険だとも。」
神「そのいい方で、ショック?」
友「う〜ん、そうとも言えますし、ちがうとも言えるんですよねー。お兄、自分のつらいこととか、悲しいこととか、ショック受けてることとか、全部かくそうとしちゃいますもん。だから、その言ってる内容で感じとるくらいしか、お兄がどんな気持ちか知るかの手段がなくて……。」

友撫がぺろりと舌を出す。でも、そこまで感じ取れるんだからすごいと内心神童は思うが、きっとこれまでの4年間、ずっとそうだったのだから、友撫にとっては、あたりまえだったのだろう。

神「そうか……。」
友「そこでテンション下がる意味がよく分かんないんですけど。」
神「テ、テンション下がってるわけじゃっ……。」
友「べつにあわてなくてもっ;; あっ、おわったのかな?」

友撫の見る先は、開いていたとびらから、看護師がかたまって歩いているすがたがある。

神「そうじゃないか?」
友「おわった……無事におわってたらいいんだけどなぁ。オワタ、じゃなくて。」
神「ちょ、友撫ちゃん、縁起でもない……。」
友「なにをしたって、ムダなのに……((ボソッ」
神「え?」
友「えへへ、なんでもありませんっ。あ、かなり試合、大詰めになってきましたねぇ〜。」

友撫が、つけられていたテレビを見て言う。もちろん、決勝戦の中継だ。今は後半はじめごろ、というところだ。

友「あ、そうだ、ちょっときいてきます。おジャマしましたっ☆」

Vサインを残して、車イスをおして去って行った。

バタン……

とびらがしまった瞬間、神童は「ふう……。」とため息をついた。はっきり言って、友撫のあの底抜けな明るさは、ユエに似ている。いや、似ていて過ぎてこまると神童は思う。
にしても、友撫はよくあそこまで元気でいられる。赤ん坊のときから一緒にいた、実の兄・姉のような存在のユエ。そのユエが、今あまり時間もなく、手術でも成功率が低く、危険なのに、あそこまで明るくふるまえる。
友撫のああいう底抜けな明るさは、ユエにはないものを感じさせる、そんな感じだ。

神「成功していればいいんだけどな、ユエ……。あ。」

そういえば、まだユエの本名をきいていなかったと、イマサラながら思った神童だった。


     〜ユエと言えば……〜


友「お兄、どう……たんで……か!?」

ん? この声、友撫? すっげえせっぱつまってる感じ……。
あ、そっか。俺手術したんだっけ。
でも、意識があるってことは……

ユ「大丈夫、成功したよ。」
友「お兄!」

ボスッ

ぐふう!!
ゆ、友撫、重い! いくらなんでも思いっきりジャンプして俺の上にダイブって……ハンパなく重い!
つか、友撫の車イスコントロール力もハンパじゃないな!? どうやってダイブしてんだ、オイ!!?
ぐああ!! どけ、そこどけ、友撫ああぁああぁあああっ!

友「あ、ごめん、重かった?」
ユ「あたりまえだ、おまえ、なん年だと思ってる?」
友「う〜んと……4年生?」
ユ「疑問系じゃなく、実際4年だろ。」

てか、なんで先生とか看護師さんとか、引き留めないんだ、おいっ。

先「こらこら、友撫ちゃん、どきなさい。それよか、月流君。君は、もう病室に行っていなさい。歩けるだろう。」

あたりまえだわっ!!
とは言わず。

ユ「はい。」

テキトーに返事をして、友撫を車イスにすわらせると、ひとつ角を曲がった。そのまま歩いて……はいかない。だって、病室なんて、行く気ないもん。
言っただろ? 抜け出すって。つか、成功したんだな、手術。すげww ミラクル・ザ・俺ww
先生が反対側に去って行くのを見とどけると、友撫と顔を見あわせ、足早に歩きだした、そのとき。

?「ユエ!?」
ユ「へ!?」

呼びとめられて、ひょうしぬけした声でふりかえった。見るとそこには……

ユ「神童先輩!?」
神「どういうことだ、ユエ。あ、手術、成功したんだな。」
ユ「それは友撫から聞いたんですね。」
神「ああ、まあ、そうだが……。」
ユ「ていうか、神童先輩、なにやってるんですか!」

だって、神童先輩は、松葉杖使って、歩こうとしてるんだぜ!?
まだ歩いていい状態じゃ、ないはずなのに……!

ユ「どこ行く気ですか! まさか、アマノミカドスタジアムじゃないですよね!?」
神「……。」

まわりに人がいないし、このへんの病室は、神童先輩以外だれもいないから、楽に声が出せる。
まあ、この場合説教にひとしいけど。って、なんで後輩が先輩に説教してるんだ??

ユ「ズボシってことなんですね、黙りこむってことは……。」
友「ひとりじゃダメですよ!」
ユ「そう、ひとりじゃ……って、え?」
友「友撫とお兄もお供します!」
ユ「ハアアアアアアァアアァアア!?」
友「いいよね、お兄!」

ちょ、友撫、そのウルウルアイ攻撃やめろっ……。

ユ「わ、わかった! わかったよ!」
友「ありがと、お兄!」
神(友撫ちゃんに弱いんだ……。)

なんか神童先輩が俺の弱点見つけてるような気もするけど、しかたない!

ユ「神童先輩、いきましょう! まあ、俺も行くところだったんで、案外都合いいですけどww」
神「あ、はあ……。」

俺と友撫、神童先輩は、コソコソしながら病院を抜け出す。うん……スパイみたいで楽しいいいいぃいい!!
って、ん? 背後に忍び寄る、この気配は……?

冬「ちょっと待ちなさい!」
ユ「ゲゲッ!」

冬香さん!
そうか、背後に忍び寄る気配は、冬香さんだったのか!

冬「どこに行くつもりなの、三人そろってっ。」
ユ「えっと……。」
冬「この組み合わせ……全員雷門中サッカー部に関わってる人ね。神童さんは元キャプテン、月流さんもチームメイトだし、友撫ちゃんは月流さんの妹さんだわ。」
友「うう、冬ちゃん、いつになくスルドい……。」

友撫は冬香さんを「冬ちゃん」って呼んでるのか〜って! なに新発見してるんだよ! しかもどうでもいい!!

冬「てことは、決勝が行われている、アマノミカドスタジアムに行くのね。」
神「オレじゃないとダメなんです! オレじゃないと……。」

へ? ……ヤバイ、話の流れがまったくつかめんっ!

冬「……仲間のためね。」

へ? ……あの、超いいシーンなのかもしれないけど、俺まったく分かんない……。

冬「でも、あなたたちだけじゃダメ。わたしも一緒に行きます。ただし、月流さん!」
ユ「はいいい!」
冬「あなたはムリしたらダメよ? ただでさえムチャばっかりなのに、手術後は体力も消耗してるし……。」
ユ「あ、はいはい! じゃ、行きましょう!」
冬「う……うまくまとめられた気がするけど、まあ、いいわ。そうね、行きましょう。」

冬香さん……冬香さんって、お母さんみたいですね。