二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D・Gray-man 〜銀色ノ死神ハ天ヲ舞ウ〜 コメ募集中! ( No.1 )
- 日時: 2012/01/07 13:52
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
プロローグ
「それじゃあ、いってきます」
ここはあまり人が立ち入らない古びた小屋の中。そこであたしは咲姉に別れを告げる。今から別世界へ旅立つ時だった。
「・・・・・・気をつけてね」
心配そうに咲姉は言う。咲姉はこれまでの旅で疲れ切っている。身に付けている巫女装束もボロボロだ。
「・・・・・・大丈夫だよ。樹もいるし」
「そうね。樹、レンをしっかり守るのよ」
「はい、咲夜様。咲夜様の代わりに僕が命を懸けて守ります」
樹は誓いの言葉を言うように力強く言う。こんな大人びた言葉づかいをしているが樹は十〜十一歳だ、たぶん・・・。
「それに・・・・・・この護身刀もあるしね」
あたしは腰に差している、我が家の宝刀———「天吹」を握る。
「・・・・・・ごめんね、レンまで巻き込んでしまって。私が・・・・・・私がいけないのにっ!」
自分を責めるように強く咲姉は言う。あたしそんな咲姉を優しく抱きしめて、
「何言ってるの、お姉ちゃん。あたしもあの時止められなかった・・・・・・。だから、あたしにも責任があるんだよ」
「でも、でも・・・・・・」
咲姉の頬に涙が一筋こぼれ落ちる。
「咲夜様、レン様。・・・そろそろお時間です」
「そうね」
そう言ってあたしは出発しようと樹の側へと向かう。
「待って」
咲姉があたしの肩を掴み、呼び戻す。
「これを」
そう言ってあたしの手の平にそっと置いたのは、
「これ、お姉ちゃんの結い紐じゃない!」
咲姉がいつも髪を結ぶために使っている朱色の紐だった。
「お守り。レンが無事に帰って来られるように」
咲姉はおさげに結んでいた髪を片方解いたまま、笑顔で言う。
「ありがとう、お姉ちゃん」
あたしは紐を握りしめ、ふたたび樹のもとへ駆け寄る。あたしは壁に立てかけてある「天吹」と同じ家宝の鏡の方を向く。そして、
「———————————————!」
別世界へ行くための呪文を唱えた。すると鏡は眩しいほどに金色に光り輝く。
「行ってくるね。必ず、必ず帰って来るから」
そう言ってあたしと樹は壁に立てかけてある鏡の中へ飛び出していった。
・・・ごめんね、咲姉。
咲姉は、きっとあたしが別世界へ行くのはあの目的のためだと思ってる。
でも、違うんだ。
たしかにあの目的のためもあるけど、あたしには違う目的もあるんだ・・・
ごめんね。あたし卑怯で・・・
ごめんね。「必ず帰ってくる」なんて言ったけど・・・
帰らないかもしれない。
ごめん・・・ごめんね。
〆 1月6日