二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: D・Gray-man 〜銀色ノ死神ハ天ヲ舞ウ〜 コメ募集中! ( No.10 )
- 日時: 2012/01/14 12:31
- 名前: 月那 ◆7/bnMvF7u2 (ID: IsQerC0t)
第二夜 「そして天使は妖しく笑う」
少女は孤独のまま、永い眠りへとつきました。
少女は話を終え、深いため息をつく。
「・・・そしてこの空間の名は『refusal space』という」
少女は静かにそう言った。しかしレンは、はてなマークを浮かべたままだった。
「・・・リフ・・・ザ? スペ・・・?」
「『リフューザル・スペース』だッ!!」
「・・・って、どういう意味?」
「〜〜ッ! そなたに分かりやすく言うと『拒絶空間』という意味だ・・・。ここは他の世界と交わらないよう、拒絶されているからな・・・」
最初はレンの頭の悪さに少し怒っていた少女だったが、諦めておとなしく説明する。
「? ・・・よく分かんないけど、・・・でも一つだけ分かった」
「! 何がだ?」
「・・・それは」
と、いうと宙に浮かぶ少女の足元まで行き、立ち止まる。そして少女に向かって右手を伸ばし、
「あんた、今友達いないわよね? だったら・・・あたしが友達になってあげるわよ、水鏡!!」
レンは茶色の大きな瞳をまっすぐ少女に向け、笑顔でいった。
「・・・!」
そう言われ、少女は驚きの表情を出す。そして過去に言われた言葉を思い出す。
『・・・あなた、友達いないの?だったら・・・私が友達になってあげる!』
(そういえば水仙も同じことを言ったな。冷たい態度をとっていた妾に、同じように手を伸ばし、漆黒の大きな瞳で、笑顔で・・・)
「・・・フッ」
「・・・何笑ってんの」
「・・・いや、やはりそなたは水仙の孫だと思ってな」
「えっ? 何? 聞こえな〜い!」
おそらく小声で呟いたからだろう。少女の声はレンには聞こえなかったらしい。
「なんでもない。では、よろしくな。逢生蓮華。」
そう言ってレンの右手に手をのせ、地面に着地しレンを見上げながら微かにに笑った。
「レンでいいわ、よッ!」
レンは友達となった少女———水鏡———に抱きつきながら笑顔で言った。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「さて、レンはなぜこの空間へ来た?」
「・・・あたしがここへ来たのは、・・・ある世界へ目的があるから」
レンは真剣な目で日本人形のように可愛らしい少女、水鏡へ言う。
「その目的とは?」
水鏡はレンに聞く。
「・・・それは・・・・・・お」
「ブッ! —————アハハハハハハハッ!!」
ためらったが言おうとしたその刹那、水鏡は腹を抱えながら高笑いする。
「何がおかしいのよ!まだ何も言ってないじゃない!!」
「アハハハハ・・・、すまんすまん。あまりのもレンが可笑しくてな」
水鏡は笑い涙を拭いながら言う。そして再び宙へ浮かび、足を組んで言う。
「思い出せ。ここへ来たときのことを。あのとき妾はレンの額と妾の額を合わせただろう? あのときにとなたが持つ記憶や知識、つまり情報を読み込んだのだ。これは『鏡』である妾が持つ力だ」
「へぇ〜〜じゃあ、あたしのことは何でも分かるの?」
「あぁ、例えば・・・そうだな、四歳のころおねしょをして姉に庇ってもらったことや、九歳のときに姉の制服を着てあ」
「きゃあぁぁあぁ!!もうやめて〜!聞きたくない〜〜〜」
レンは頬を赤らめ、耳を塞ぎながらその場で踞る。その様子を見て、クックックと薄笑う。
「では、話を戻そうか。そなたの目的は、兄を救うこと、だったな」
「・・・ええ」
(そう、その為にあたしはここへ来た。咲姉とも約束した)
レンは唇を噛み締め、下を向く。そして水鏡は、静かに、冷たく言う。
「————————しかし、それだけではないだろう?」
「!!」
レンは驚き、顔を上げる。すると水鏡は妖しく笑っていた。
「クックック・・・。やはりそなたはおもしろい。生まれつき持っているその力もだが・・・。クックック、おもしろいなぁ」
「・・・そうよ、あんたの言う通りよ。あたしには別の目的もある。咲姉にも黙ってたことが・・・。あたしは・・・卑怯だわ・・・」
レンはさっき強く唇を噛み締める。すると血が流れ、口の中は鉄の味がしたのをレンは感じた。
「いいや、そなたは卑怯ではないぞ!・・・しょうがないと思うがなあ。なにせ姉はあんなにも・・・」 「咲姉を悪く言わないでッ!!・・・悪いのはあたし。咲姉からも、運命からも逃げてきたんだから・・・」
怒り狂うレンを見て水鏡はため息をつき、
「そなたを怒らせてしまったことは詫びよう。・・・よし、許可しよう」
「・・・なにを」
「ここを通り、あちらの世界へ行くことだ」
レンは素早く顔を上げ、水鏡を見る。すると、やはり彼女は妖しく笑っていた。彼女を見た者は彼女を『天使』だと言ったそうだが、あの妖しい微笑みは悪魔にもみえる。レンはそう思った。
すると急に右手を挙げ、———パチンッ、と指を鳴らす。すると、目の前に十mほどある巨大な扉、・・・いや、門が現れた。門は———ギギギッと音をたて、開く。
「この門をくぐるとあちらの世界へ行ける。本来ならここを通るには試練を受ける必要があるのだが・・・、そなたの覚悟、決意と愉快さに免じて特別に通ることを許そ・・・うッ!」
言葉が途中で途切れたのはレンが水鏡に抱きついたからだった。
「・・・ありがとう、水鏡」
その言葉に頬を赤らめながら、水鏡は抱きついてきたレンを突き放す。
「は、早く行けッ!!これ以上は め、面倒見きれんからな!」
「うん!」
そう言ってレンは門の前へと向かう。すると水鏡は思い出したように、レンの額にキスをする。
「お守りだ。ただし、一回から使えないからな」
そういって水鏡は微笑み、レンに大声で叫ぶ。
「あっ、そなたといっしょに来た樹とやらは、とっくにクリアー(合格)していったぞ〜〜!」
「えっ、うそっ!!」
そう言ってレンは門の向こうへと駆けていった。
レンを見送り、門が完全に閉まったあと、水鏡は静かに呟く。
「・・・・・・モノガタリはまだ始まったばかりだ。レンにはこれから多くの困難が待ち受けている。・・・フフッ、楽しみだな」
そして少女はまた、妖しく笑う。
〆 1月14日