二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: ボカロ曲物語〜歌の世界を君に〜【桜歌END】 ( No.15 )
- 日時: 2012/01/14 21:24
- 名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)
【桜歌】
早く咲きすぎな桜が、ひらりひらりと風に舞っていく。
南は、そんな桜吹雪の中で桜を見上げていた。
川沿いの桜並木。
毎年綺麗な桜の花を咲かせ、近所ではかなり有名な場所だ。
南「今年の桜は早く咲きすぎかな。春までもたなそう」
南が悲しそうに呟いた。
南の言う通り、今年の桜は春までもってはくれないだろう。
そんな桜が、南の瞳に哀しく映っていた。
蒼「南ー!早くこっち来いよ。雨まじで降りそうだぞ!」
南「うん、今行くねっ」
そう言った時、突如雨は降り出した。
蒼は図書館の屋根下に居たからまだ良いのだが、南は・・・。
まだ図書館まで10mほどある場所に居た。
蒼「・・・。あーぁ・・・。」
南「最初から蒼の言うコト聞いておけば良かった!」
ぱしゃぱしゃと水が跳ねる。
やっと図書館まで辿り付くと、南がくしゃみをする。
蒼が、「だから言ったろ」と言いたげな顔で鞄からタオルを取り出した。
それを南に渡す。
南は「ありがと」と言ってタオルで頭辺りを拭いていった。
それから1時間弱、雨は止みそうにもなかった。
南「雨が上がるまでは此処で暇潰しだね。何読もうかな」
蒼「あぁ。あんま読みすぎるなよ」
南は明らかにわくわくしながら図書館の中に入っていった。
蒼も続く。
図書館の中はとても静かで、本を捲ったりする音意外あまり音が無かった。
川が見える方の壁は一面ガラスで、雨が容赦なく吹き付けている。
南はその方に行って、ガラスに手を添えて、外の様子を見ていた。
蒼「今年の桜は咲くのが早かったな」
南「うん・・・。春が来る時には散り終わってると思うな」
蒼「今年は花見の時期も早くするか?」
南「そうだね。桜見たいし!」
桜の花は雫で濡れている。
時折ぽつんと雨粒が落ちたり、花弁が落ちたりする。
それを、蒼と南がずっと眺めていた。
桜の枝は、蕾を早くに咲かせたいようだった。
そんな咲き急ぐ桜を、風は無言で笑っていた。
少しして、雨は止んだ。
2人は図書館を後にする。
そして桜の前に立つと、咲き誇った花弁が舞っている。
一枚の桜の花弁が、南の肩に止まる。
南はくすっと笑うと、その花弁を手にとる。
南「焦ることは無いよ。まだ・・・時じゃないだけだからね」
そして、もう一度舞わせてあげる。
南と蒼は、桜を見上げていた。
南「綺麗だね」
蒼「ああ。来年も咲くと良いな」
南「うん」
桜は、南の瞳にも蒼の瞳にも、哀しく、そして色鮮やかに映っていた。
【桜歌:END】