二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: キョンの消失 ( No.2 )
日時: 2012/01/07 19:17
名前: デストルドー (ID: GUeCGhoP)


《 第一章 》






「死」について考えたことがあるだろうか。人間にはもともと生きたいという欲求ともに死にたいという欲求が存在するという。あのフロイト先生が言っていたのだからそうであろうと信じたい。だが、今大事なのはそんなことではない。「死ぬ」とはどういうことなのだろうか。生物学的に言えば生命活動の停止とでもいったところだろうか。それとも人間として廃れたという意味での精神的な死だろうか。恐らく今俺の目の前に問題として現れているのは前者の方だろう。

「ちょっと待て、それはどういう意味だ」

今俺の前で何といったらいいか解らないと言った感じの哀愁漂う顔でこっちをみているキザ野郎は今何と言った。なんだその顔は、普段みたいに微笑を浮かべつつ御託を並べながら胡散臭い話をしないのか。急に文化祭の劇に向けての練習でも始めたのか。もしそうだとしたらなかなか筋がいいんじゃないか。昼過ぎにやってるサスペンスの刑事が崖際で犯人にあなたが犯人だと突き付けた感じがよくでているぜ。

「ふふ、お褒め頂きありがとうございます。しかし、これは演技ではありません、第一僕のクラスが文化祭で行うのは喫茶店ですし、SOS団としては今回は何も行わないと決まったばかりではないですか」

ああ、そういえばそうだったな。確かおまえはウェイターをやるんだったよな。朝比奈さんのウェイトレスだったら
喜んで見に行ったが、誰が好き好んでおまえのウェイター姿を見に行くかと思って記憶の片隅においやっていたことを思い出した。

「だとしたらどういう冗談だ、全然笑えないぞ」

古泉はふと視線を文芸部室の木目に視線を落とし、そしてもう一度俺の方をいつになく真剣な顔で見やった。

「冗談でもありません、非常に残念なことですがね……」

そういうと古泉は言葉を紡ぐのを辞めた。俺はよほど古泉を怪訝な顔でみつめていたのだろう、それに気づいたのか古泉は、

「やはりこういうことは僕でなく長門さんに伝えてもらった方が良かったでしょうか、信じてもらえてないようですね」

いや、今回ばかりは長門よりお前の方がいいだろう。長門にこんなことをいわれたら本当に死ぬのだと確信して絶望するからな。で、どういう魂胆なんだ、教えろ。

「いえ、魂胆なんてものはありません。ただ、これから起こる事実を伝えただけです」

古泉はいつもの愛想笑いの一つも浮かべず、重々しい雰囲気で言う。なんて言うか、話せば話すほど古泉の口調が暗くなる。俺はだんだん不安になってきた。

「それは起こりかねない事象だからそれを未然に防ぐとかそんな感じか」

「いえ、規定事項を伝えているだけです」

どうせ未来の規定事項を教えてもらうなら、朝比奈さんが良かったとか思っている余裕もだんだん無くなってきた。第一、朝比奈さんは俺が死ぬことを知った時点でわんわん泣き出してしまって俺に教えるどころじゃないだろうしな。

「なんで俺が死ぬことが規定事項なんだ」

古泉は口を噤んだまま俯いている。こいつはなんで答えないのか最初は解らなかったが、理由が解るのにそう時間はかからなかった。ただ、それを理解するのには時間が足りなすぎた。


アイツが……ハルヒがそれを願ったから−−