二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: キョンの消失 ( No.6 )
日時: 2012/01/08 12:05
名前: デストルドー ◆s4.FcLcEko (ID: COM.pgX6)


《 第2章 》









エントランス内のパネルでテンキーを708と押し、その後ベルのマークのボタンを押す。慣れた手つきで入力をしていると、この状況は一見するとまるで一高校生が彼女の家に遊びに来たように思える気がしてきた。こんな遅い時刻に一人暮らしの女子高生の家を訪ねるのだ、不純異性交遊だと思われかねない。と思ったが、相手は長門だ。まかり間違ってもそんなことにはならないだろう。俺にそんなつもりはないし、長門は尚更だ。尤も今更気にするようなことでもないが。

数秒の沈黙、その後、ぷつんとインターホンが接続する。

「よう、長門、俺だ」

再びの沈黙、すると

「入って」

と平坦な声が聞こえた。だが、俺の意識の中で初めて長門に会ったときに比べたら大分感情が感じられるようになったのだ。これは俺の勘違いではないだろう。でも、ストラディなんたらとかいう名器の音を聞き当てることができる一流芸能人でも判らないような変化であるだろう。恐らく、SOS団のメンバー以外は気づけないような微細な変化だからな。

そんな感慨に耽っていると、玄関のロックが解除されているのに気づいた。もうそこそこ遅い時間だ。急がないとな。

エレベーターに乗り込むとふと少々の後悔に襲われた。俺は去年の12月のあの事件以降、長門に頼りすぎないと決めたばかりではないか。アイツにはしっかりと心があって、エラーとかなんだいっていたが、要はストレスだってたまるんだ。なんと情けないことか、自分が死ぬとなったらうろたえちまうのか。俺は再びブルーな気持ちになっていた。やれやれ、メランコリーだ。

そんなこんなをしているうちに、七階に着き、708号室のベルを鳴らした。鉄扉は数秒の内に開いた。

「……」

「……入っていいか?」

俺がそう言うと長門は数秒の沈黙の後、顎を数ミリ引いてすっと部屋の奥へ向かった。どうやら入ってもいいようだ。

俺は靴を脱ぐと靴の数がおかしいのに気づいた。長門の靴、俺の靴、そしてもう一足、男物の革靴がある。恐らく学生が履くものではないだろうか。俺の持っているものでは無さそうだ。となると、アイツくらいか。

俺はリビングルームに入ると俺の予想した人物がそこにいた。なんだよ、これじゃ結局意味ないじゃないか。俺のプライドが若干のダメージを受けた。が、ある意味居てくれて安心したよ。

なんて、思っていると明らかにソイツの状態がおかしいのに気づいた。

「古泉……お前ッ…」

「んふ、どうも」

そこには制服の所々が破けてボロボロの古泉一樹の姿があった。