二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 夏目友人帳 甘き菓子  ( No.76 )
日時: 2013/07/14 20:08
名前: 睦月 (ID: q.UUedhu)


——玉露は優しい。

生地をお玉ですくいながらそんな事を思った。

「では、お玉の中の生地を中に落として薄く伸ばしてください」

フライパンの中で生地が薄く伸びていく。

すでにこの行為としては4回目。何回やってもうまくいかなかったのだが、今回は大丈夫みたいだ。

「うむ。いい調子ですぞ。では少し熱が通るのを待ちましょう」

「ああ」

玉露は1回もそのことについて怒らなかった。1回毎にアドバイスをくれた。

——それが、少しだけ今までと似ていて……。

別に怖いわけじゃない。ただ、少しぐらい怒ってくれても良いのに——と思う。

決してそんなこと言えないのだけれど。

「…殿?夏目殿、焦げてしまいますぞ」

「——え?あ、ま…まずい!!」

「慌てなくても大丈夫だから慎重にひっくり返すのです」

「あ、ああ……」

さいばしとフライ返しでゆっくりとはがしながらひっくり返す。

少しだけきつね色の生地がペラペラと宙で揺れた。