二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 背中合わせの志【参照800超感謝】 ( No.115 )
日時: 2012/05/17 23:11
名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)

55話「主の違う懐刀」


急に千鶴を返された一同は、呆然と言葉も出せずにいた。
只その場に居た山崎烝が、千鶴に怪我等がないかを外見から確かめていた。
そして、怪我の無い事を確認する。

烝「怪我は無いようです」

烝が沈黙を破って言った。
それを聞いて皆ほーっと息を吐く。

千「風間の事だから、新選組の皆さんの前で奪って行かなければ気がすまないのかもしれないわね」
君菊「同意します」

千が言う言葉を聴いて、土方が鬼の形相になる。
土方の周りにいた幹部達も、それに伴い真剣な面差しになった。

———

匡「おぉ。早ぇな」

匡は、ものの数分で帰ってきた海に声を掛けた。
海は一度無言で頷く。

海「特に話すこともありませんからね。さっさと置いてきましたよ」

千鶴を「物」として扱っているような海の口調に、匡が笑い声をあげた。
海は一瞬匡を見据えてから、屋敷の中へと戻っていった。
匡はまだ腹を押さえながら、必死に笑いを噛み殺して屋敷へ入っていった。
屋敷の中に入ると、天霧がまっていた。

天「仕事が早いですね。良いことです」
海「それはどうも」

海は天霧に一礼してから、何も見ずに進んでいった。
海の腰には、元々空の持っていた刀が差さっていた。

———

千「そういえば…空。貴女の隣にあるその刀…」

千が海に訝しげに聞いた。
空がはっという表情になった。
そして刀を手にもって、頭を垂らす。

空「御免なさい!!私の刀…!海に…」

言いかけた処で空が泣き出す。
言葉の端々に嗚咽を含む喋りを始める。
千がそれ以上は良い、と空を抑える。

千「盗られてしまったのね?」

空はこくりと大きく頷く。
千ははーっと溜息をついた。
そしてまだ開け放してある障子の外の星空を仰ぐ。

千「海にあの刀が扱えると良いのだけれど…」

ぼそりと呟き、空と、先程まで海が持っていた刀を抱いている空に眼を向ける。

千「そして…空にも」
空「…?何か言いました?千姫様」

空の問いかけに、いいえ、と首を振ってから、空の持っている刀に眼をやる。
空は、大事そうに刀を抱いていた。