二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 背中合わせの志【参照900超感謝】 ( No.126 )
- 日時: 2012/06/10 21:55
- 名前: 流夢 (ID: O72/xQMk)
65話「災い転じず禍となる」
カタン、と玄関から音がする。
風間家屋敷。
天霧と匡が、玄関前の部屋で話をしていたので、直ぐに気がつかれる。
匡「誰だ?」
其処に居たのは、海だった。
顔面蒼白で、入り口の扉に手を掛けたまま、荒い息をしている。
匡「海?大丈夫か?…おい?」
天「…聞こえていないようですね」
海は匡と天霧の方を見向きもしない。
声が聞こえていないどころか、存在にすら気が付いていないようだ。
ふらふらと危なっかしい足取りで、出て行こうとする。
が、直ぐにバランスを崩しそうになる。
匡「おい海、危ねェから中に居ろ」
天「海を部屋まで運びましょうか」
匡「あぁ」
匡が素早く海の肩を抱いてやる。
海は朦朧とした意識の中、匡に担がれた。
天霧と匡が互いを見合って、こくりと頷きあう。
二人は、海を連れて海の部屋まで行った。
海の部屋は、何時もはきちんと整頓されている。
が、今日は本が何冊か散らばり、少し汚い。
それを確認した天霧が、海を少し見る。
海はまだ顔色が悪く、汗をかいていた。
天「何かあったのでしょう。寝かせますよ」
天霧はそういってぱっぱと布団を出す。
匡はそこに海を寝かせる。
匡「こいつはとりあえず俺が診とくぜ?」
天「頼みます。私は書類を片付けなくてはならないので」
匡「任せとけ」
匡はにいっと笑うと、手をひらひら振る。
その様子に呆れつつも、天霧は出て行った。
———
千「…という訳。この説明で分かってくれたかしら?」
千は、「里の書」に書いてあることをさらさらと述べる。
それについてこられたのは、土方と総司、一位だった。
一が、分からない者の為に説明する。
一「つまり…己を傷つけるだけでは無く、その血判のせいで、
裏切り者には【無い筈】の幻聴や幻覚が聞こえたり見えたりする訳だな」
一の言葉に、千がしっかりと頷く。
千「それを解決する方法は私も知らないの…。何せ私が生まれるずっと前の事だし…」
空「じゃっ、じゃぁ海は如何なるの!?」
千「弌の方法としては、貴方も里を裏切って刀の力を手に入れるか…」
空「そんなっ!?やだよ!里を裏切るなんて」
君菊「もしくは、海を殺すか…ですね」
千鶴「殺す!?海さんを!?」
言い難い表情の君菊が言った言葉を聞いて、千鶴や空が声を荒げる。
暗く、重い雰囲気が漂った。
———
海「っ!」
海が目を覚ます。
何時の間にか布団で寝ていて、隣には転寝中の匡が居た。
が、少し目を閉じていただけなのか、直ぐに起きる。
匡「よォ。大丈夫か?」
海「な、何とか。ありがとうございます」
海は汗を拭きながら、まだ少し白い顔で言った。
匡は海が起きたのを確認すると、立ち上がり、出て行こうとする。
のを、海が引き止める。
海「あのっ」
匡「?」
海「私の…里にある血判を…千切ってきて欲しいのですが」
その場に深く沈黙が流れた。