二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 薄桜鬼 背中合わせの志【参照400超感謝】 ( No.71 )
- 日時: 2012/04/02 15:48
- 名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)
30話「八瀬の夜桜」
新選組の皆のお花見は、そのまま夜桜花見へと続く事になった。
原田、永倉、藤堂の3人は、相変わらず酒をかっ食らっている。
お酒が飲めない者達は、千の勧めで八瀬の桜並木を回る事にした。
海「千鶴様、足元にお気をつけて。」
雪「ありがとうございます。そういえば、空さんは?」
千鶴の台詞を聞いた途端、海の頬が多少引き攣る。
海「あの馬鹿は、味見した酒が気にいったとかで彼らと飲んでいます。
ったく、あいつは…」
雪「ええっ!?皆さんが持って来てるの、結構強いお酒ですよ!?
空さん、大丈夫なんですか!??」
海「さぁ。ただ、人には強いものでも、鬼にはそんなに強くない事が
多いですから。」
まっったく心配していない口調で海が答える。
土「お、風がでてきたな…」
千鶴と海の前。先頭を歩いていた土方が呟いて空を見上げる。
つられて海と千鶴も空を仰いだ。
雪「きれい………」
海「もう少しで小さな丘があります。そこなら、桜吹雪と星空が一層
美しく見えるかと。」
土「なら、さっさといくか。」
こうして3人は、緩やかな坂道を登って行く。
雪「わぁ…!」
土「ほぉ……」
丘に着いた千鶴と土方は早々に感嘆の声を上げた。そこには、まるで
幻想かと思うほど美しい光景が広がっていた。
海「しばらくここで夜桜を見ましょうか。」
海の提案で、3人は思い思いに夜桜に見入った。そして暫くたった頃
雪「あの、海さん…。」
海のもとに千鶴が駆けてきた。
海「何でしようか?」
雪「答えが出せた気がするんです。海さんの疑問の…」
そう言っただけで、海は彼女が何の話をしているのか分かった。
雪「実は、私の考えは空さんと似ていて、一緒ではないんです。」
海「…お聞かせいただけますか?」
一つ頷いて、千鶴はまるで暗記したての言葉を口にするかのように、
たどたどしく話し始めた。
雪「私は、鬼と人は違うと思っています。でも、共存できるはずだとも
思っているんです。」
海「共存……鬼と人が。」
雪「はい。私は自分が純血の鬼で、人の血なんて一滴も流れていないと
いう事も分かっています。でも、私は今まで人として生きていま
した。だからこれからも…」
そこで千鶴は、口を一度つぐんだ。まるでこの先の言葉をためらうかの
様に。
ファァァァア ザザ—…
風が吹いて桜が夜空に舞う。それを合図とするかのように、千鶴は
ハッキリと思いを口にした。
雪「…これからも私は、人として生きたい。」
海「…………」
雪「これが海さんの答えなのかどうかわかりません。でも、鬼の全てが
全て、人嫌いというわけではないんじゃないでしょうか?」
しばらく重い沈黙が降りる。沈黙に耐えられなくなった頃、ようやく
海が口を開いた。
海「雪村だけが…」
雪「え?」
海「鬼の中では、雪村の一族が唯一、人との争いも利用関係も少な
かったとききます。一番大きな一族でしたから、本当なら、もっと
あるはずなのに。」
雪「そうですか……アレ?」
千鶴にはその時、海がかすかに笑ったような気がした。
海「どうかなさいましたか?」
雪「い、いえ。何も。」
気の所為という事にして、千鶴はかすかに見た(?)海の微笑を
胸の奥にしまった。