二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 薄桜鬼 背中合わせの志【参照600超感謝】 ( No.98 )
日時: 2012/04/14 13:00
名前: 桜舞姫 (ID: O72/xQMk)

前回は海が大活躍したので、空が『出して〜』と泣いてます。
てわけで、今回は空に注目!



44話「帰る場所」

千姫の屋敷を飛び出した空は、君菊に見つかる前に森を抜けた。
空「はぁ、これからどうしよう。」
京の町は、少しだけ紅く輝いていた。千姫の屋敷に入ったのが昨晩
なのだが、昼前に呼ばれて話をして、そこから走ってきた事を考え
ると、夕暮れでもおかしくない時間が経過しているのである。
空「……戻りたいよぉ。」
空がその台詞と共に頭に浮かんだのは、千姫でも千鶴達新選組でもなく
海の顔だった。いつも無愛想で冷たくて、でもいつでも必ず自分を
守ってくれた海。そんな彼女の姿が、脳裏に浮かび消える。
空「ぐすっ……」
川辺に座り込んで泣き始める。橋の下なので大きな声を出さなければ
見つからない。
空「うっ、えぐっ……!」
場所に安心してか、小さな声で遠慮のない子供のような嗚咽を始めた。
今は仕事帰りの人々で橋は沢山の人が歩いたり走ったりしている。
空の嗚咽は、完全に聞こえない。
空「誰か、来てくれたらなぁ…」
来られたらそれはそれで困るのだが、今の空には、一人でいる事。
孤独こそが辛かった。こんな時いつも傍らに居て、自分の泣き顔を鼻で
笑い、不器用に慰めてくれた少女は、もう遠い存在。
空「もう一度、戻りたい…」
叶う筈のない願いを願う少女は、ただ悲しかった。
空「私、何処に帰ればいいんだろう…」
ため息をついて膝に顔をうずめたが、今度はすぐに立ち上がった。
空「帰ろうっ。」
その台詞と共に頭に浮かんだのは、新選組の幹部達の顔だった。