二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: カタストロフィーは永遠に、 〈inzm〉 ( No.16 )
- 日時: 2012/01/18 22:44
- 名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)
(5)
「あれ?晴矢もくるの?」
「……帰ったら文句言うのは一体何処のどいつだよ。」
「あ、なかなか気が利くんだ。……植物も侮れないんだね、今の世の中。」
「なんとでも言え、置いて帰るぞ。」
「……すみませんでした南雲さん。」
館内、玄関付近で展開されるショートコントはさておき。
広い館内。
甲冑、絵画、焼き物を筆頭に展示されている物はどれもそれなりに値段が張りそうな物ばかりで、何も知らない人に『ここは美術館です。』と言っても信じる人が大半を占めるだろう。
「相変わらず金あるんだねー、此処。」
「そりゃ人員も多いし、仕事もありそうだからな。少数経営の夢月とは格が違うだろ。」
「……此処と似たような環境下で働く君に言われると反論しにくい。」
「じゃあ黙っとけ。」
“うわ、ウザい。”とこぼしつつ結祈は歩き出す。
館全面に敷かれた足音を吸収するカーペットのおかげで歩きにくい。
辿り着いた階段、細かい装飾の付いた手すりに手をかける。
「本当なんでこんな無駄金かけるんだよ。」
手すりを掴んだ手から伝わる細かい凹凸。
夢月夜行が売れていないわけではない。むしろその逆だった。しかし人員数も、一仕事の単価も倍以上の“陽雷”には勝てない。
分かってはいるものの同じ接客業者としては少しばかり腹立たしいことに変わりは無い。
明らかに不機嫌が加速する彼女を見て南雲は肩をすくめた。
「……売り上げ気にするなら脱走してくんなよ。」
南雲の呟き、確かにそれは正論であった。
「……で、結局のところ何も見つかってないの?」
「仕方ないだろ、こんなこと初めてなんだ。文献調べてる“双子の嵐”(ジェミニストーム)からも現地捜査の“雪水晶の欠片”(ダイヤモンドダスト)からも連絡無し。“紅天の軌跡”(プロミネンス)なんか団長が誰かに連れてかれたし、動くに動けないんだ。」
「残念ながら“陽雷”も“宙天”同様、何も掴めていないの。動く人の数ばかり増えて手にした情報は誰でも知ってるような噂程度。」
「……“夢月夜行”の二人も望みは薄いぞ。」
会議室と書かれた扉の向こう側、室内で語らう四人の少年少女。
「まぁ、魔物の弱体化なんて私達戦う者としては嬉しいことこの上ないだけれど……。」
発した言葉とは裏腹に暗い顔をした茶髪の少女。
弓の使い手であり、火の補助魔法を得意とする“雷門夏未”。
「本部の<<ハルモニア>>が動いてるんだ。師団の“エレクトラ”、“ウラヌス”、“ネメシス”は動くしかないのだろう?」
椅子に座った彼女の真向かいに佇むのは灰色の髪に黒の目、白い服と全体的にモノクロカラーの少女、“光明寺透空”。
つらつらとカタカナの羅列を並べた彼女に“簡略名で呼んでくれない?”と唯一の少年が語りかける。
実のところ、此処の組織名“陽雷”、国民や一般人相手に通っている名前であって本当の名前ではない。
否国立組織、調和を意味する<<ハルモニア>>、第一師団“エレクトラ”が本来の組織名。
“円堂守”が率いる陽雷こと<<エレクトラ>>。
此処にいる少年“基山ヒロト”率いる宙天こと<<ウラヌス>>。
此処に姿は見えないが“フィディオ アルデナ”率いる<<ネメシス>>。
全三師団、多くの団員からなる自治組織をまとめて<<ハルモニア>>と呼ぶのだ。
「……“四つの涙”に悪影響がでなければいいのだけれど。」
エメラルドの少女は呟く。