二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:    カタストロフィーは永遠に、   〈inzm〉 ( No.29 )
日時: 2012/01/28 11:06
名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)

(8)







 「はい、そこまで。」

ヒロトが轟音と共に飛び交う火の玉、氷の弾丸の中に立ち、パンッと手を叩いた瞬間。

「流石、扱いに慣れてるのね。」
「まぁ、……ヒロトだし。」

会議室内に響いたのは、轟音でもなく、喚き声でもなく。

ラティアと透空の小さな呟き。



「……やっぱり<<軽重>>は便利だな。」
「本来はこんなことに使いたくないんだけどね、透空。」


感心する透空の先にはヒロト。

呆れ笑いのヒロトの周囲には












              空中で“静止した”炎と氷。


「うわ、ヒロトいたんだっけ。」
「うん、結祈さりげなく酷いよね。」

顔をしかめる結祈は、廊下同様、赤いカーペットに目を落とす。

上品な赤色、そこに走る光の軌跡。ヒロトを中心に広がる黒に近い藍色。

そして、

「喧嘩しにきたんじゃないでしょ?用件は?」

            精神年齢の低い戦いは終わりを告げた。









 「え、<<ハルモニア>>の師団でも分からないの!?」


青い目を見開き、叫ぶ。

「残念ね。正直此方としては神原さんと落妖君が知らないのなら最早手は無いと思ってたのだけれど。」


心底残念そうに、赤色の目が結祈を写す。

夏未は自身の傍らに座る少女、
身分上は此処“最上位の太陽”の隣国“四つの涙”の姫兼王位継承者、ラティア クラリスに視線を投げかけた。
黒い皮張りの高価そうな椅子に体を預けた彼女、ラティアは夏未からの視線に口頭で答える。


「“魔物の弱体化”。……気にはなるけれど利害で考えるなら間違い無くプラスの出来事。それにこうも情報がないなら何とも言えないわ。」
「<<ハルモニア>>は基本的に戦闘、護衛、暗躍を専門にしてるからね?」
「……へぇ、そっか。」


ラティアの言葉に付け足すように、ヒロトが口を動かした。
少し間を置いた後、納得したのか似合わない素直な返事を返した結祈は小さく小さく、呟きをこぼし、

















                意地悪く微笑む。



「<<ハルモニア>>も“大したことない”ね。」


さながら、勝者が敗者を嘲笑うように。





(……何、この空気。)

情報などには弱い南雲は急に重くなった空気に頭を抱えていた。

もともと陽雷独特の堅苦しい雰囲気が苦手なことに加え、この面子。
しっかり者で陽雷の事務員でもある夏未、齢十四にして一国を束ねるラティア、自身が所属する団の長ヒロトに、背中に黒光りする大鎌を背負った死神のような風貌の透空。

何も知らない自分に此処が場違いなのは明らかなのだ。
ふと見た壁にかけられている笑う少女の絵がこの空気の重さを自分に語りかけるようだ。








「……へぇ、そっか。」

半強制的に自分を連行してきた者も、何気なくその会話の中に混じっていることが物悲しい。



(疲れたし、早く帰らせてくんねぇかな。)


そう静かに思うも、

無意識に視線を移した先、絵から自身隣に立つ本物の少女を見た彼はここにきて、一番見たくないものをみる。



それは、疲れも寝不足も吹き飛ばすような















                とある少女の、無知を嘲笑う顔。