二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: カタストロフィーは永遠に、 〈inzm〉 ( No.34 )
- 日時: 2012/02/10 00:17
- 名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)
(1)
「まぁ、情報は誓許がいるし。店員は奏始と永恋でバックアップは透空。……ほら、僕の抜けた穴くらい埋まるでしょ?」
「まぁ……結祈が居る方が大穴そうだからね、夢月は。」
「黙れ変態。」
サボり兼脱走魔兼自由人に一蹴される円堂守のストーカーはさて置き。
「……そういうことだし、問題ないよね。」
「「「いや、問題しか無いんだけど。/!!」」」
カウンター席に腰掛ける結祈に突き刺さる和音。それは呆れ顔で壁極に佇む永恋、不機嫌そうな透空に怒りを隠さない誓許の発した声。
理由は勿論のこと、“暫く留守にする。”と言う台詞。
因みに店長にして一番身近で結祈の被害を受けて“いた”否“いる”の方が正しい、奏始はカウンター内側で机に伏せたまま微動だにしない。
戦意喪失。叱る気も怒る気も失せたのか、ただどんよりと重たい空気を漂わすだけの哀れな被害者である。
「……結祈、あなた店員の自覚はあるの?」
そんな奏始の様子を見かねたのか、ぽつりと落とした“四つの涙”の姫ラティアの問いも、
「何言ってんのさラティア、自覚なかったらわざわざ留守にする、なんて報告しないよ。」
ただ空気を重くさせる材料にしかならない。
大地を埋め尽くして猛る炎。
青い空を響き渡る金属音や銃声が鼓膜を突き刺す。
辺り一体、あるのは遺体と赤と武器と人々のうめき声。青い空が場違いに見える程、重く苦しい残酷極まりない景色。
「……呆れたものだわ、こんなことして。」
「煩い!!平民、反乱群、しかも女のくせに国下兵士にたてつくのか!?」
そしてそんな地獄絵図の中。
逃げ惑う人々とは逆方向に背を向けた女が一人。
黒一色で統一された衣類に映える金髪はゆらり、爆風で大きくなびく。
面を合わせるは中年にしては締まった体付きの大きな兵士。片手に大型の銃を持ち、胸には辺りの焼け野原を駆る兵士より高い位を表す勲章。
「たてつく?……そんな気なんて無いわよ。ましてや私、平民でも反乱群でもないもの。」
はっきりと、そう言葉を紡ぐ女の手には小さな少女。至る所から赤い液体を流し、呼吸もままならない。
この様子だと少女の運命は一本道。暗く終わらない“死”という道。
「こんな大男にたてつくなんて無知にも程があるのよ、だからたてつこうなんてしないわ?」
「……それならそのガキを渡して貰おうか。そいつは俺にぶつかった、汚い体でこの俺に触ったんだ。だから、」
“殺す”と動いた口から出たのは薄汚れた言葉ではなく、鮮やかな赤。
刹那間を置き、ドサァと崩れ落ちた巨体はビクとも動かない、否動けない。
「私は平民じゃないから国下兵士に従う必要は無いし、反乱軍でもないからこの女の子を助ける義理もない。でもね、
私は“医者”よ。怪我人を助けるな、しかも殺すなんてほざくような人に患者は渡せないわ。」
少女を抱いたのとは反対の手、男を失神させる程力を込めた拳を開き掌を作る。
そしてそれを優しく少女の額にかざすと、
「<<-Healing->>.」
赤い野原に一瞬、純白が瞬いた。