二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re:    カタストロフィーは永遠に、   〈inzm〉 ( No.43 )
日時: 2012/02/18 21:12
名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)

(3)







 「「「「「「!?」」」」」」


急に緊迫する空気の中、場違い過ぎる花の香りが揺らめく。


結祈達が店を出た直後、確かに聞こえた肉声はまだ耳に張り付いている。が、有るのは声だけ、気配など微塵も感じない、つまり人影など無いのだ。あくまで、






















           “視覚”上は。




 ふわり、入り口から季節に合わない生暖かい風が抜ける。刹那の隙間。

「奏始ッ!!」

金切り声に近い音で透空が絶叫する。
それと呼応するようにに店内に開く四つの陣と響き渡った金属音。






「……あらら、命拾いしたねぇ?天咲君。」
「いらっしゃいませ……という相手じゃないな、お前。」


「結祈……私は此処に戦いに来たんじゃないんだよ?」
「それならば早く陣を閉じたらどうだ?客同士の乱闘なんて店員も望まないだろう?」
「……残念ながら店の副店長として、アンタを客とは認めないわ。」


「もう、これだから血の気が多い人間は嫌いなんだ。」
「悪いなァ、オレの喧嘩っぱやさは天性なんだよ。」
「……私はそうでもないわよ。だから、そこの黒髪と同じ目で見ないでくれる?」


一言で言えば“襲撃”。

一瞬の嵐の後、音を無くした店内にあったのはカウンター付近で閃く二本の刃と赤、黄、緑、青の魔法陣。




「……“紫蝶”さえいなければ見つからなかったのだがな。」

薄い薄い青の髪に赤い目をした青年は呆れたように呟く。自身に向けられた赤と黄、ティアラと永恋の臨戦体勢の逆を行く自然体で。


「……アンタ、誰よ。」

焦りを、というより感情自体を見せない彼に永恋は問う。














{ “招かれざる客”は、 }



「……“瑞香”(じんちょうげ)、とでも呼んでくれればいい。」
「あ、じゃあ私は“蘭”。覚えておいてね?」
「アタシはねぇ、えっとぉ……“蓮”!!」


むせかえるような花の芳香の中で三人、否“三輪”は薄ら笑う。










 「何か今、店の方から金属音したよ……ね?」

驚きの色を作り、自分が背を向けた店を振り返るのは背中に大太刀を背負ったヒロト。

どこからともなく香る、フワリと鼻腔を突く甘い芳香は抑えていた胸騒ぎを誘う。そんなの聞こえたか?、と首を傾げる南雲に肯定の意を示し、店に駆けようと足に力を込めた。何にせよざわつきが収まらないのだ、言うなれば戦場に立たされたときのように。が、




「金属音……なら大丈夫、みんな無事だよ。」

まるで歌声のように、まるで子守唄のように、耳元に響いた声は暴れ回る胸騒ぎを鎮静させる。


「“金属音”なら大丈夫。“断末魔”じゃないんだから。……そうでしょ?」


甘い香りの中で、“紫蝶”は妖艶に微笑む。



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紫蝶 / ヴァイカフリンデル