二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: カタストロフィーは永遠に、 〈inzm〉 ( No.7 )
- 日時: 2012/01/16 15:04
- 名前: 天音 (ID: P/D0CuiW)
(3)
「弱体化……ねえ。」
『陽雷』の二人が店を後にし、天に高く陽が上った正午。
あったのは増えた客の応対なんて気にも留めずカウンターに肘を着き、虚ろな目で何かを考える結祈。
「調べないと駄目かなぁ、これって。」
風丸から了承を受け、一応コピーをとっておいた例の地図。
しげしげと眺めるも何の心当りもなく、ただ有限の時間が刻々と進む。
「あれ?此処……どこ?」
高く上った陽の下、首を傾げる一人の少女。
赤や桃、センスよく組み合わせられた服に映える彼女の金髪。燃える太陽のような両眼、光を跳ね返すように白い肌。
きょろきょろと辺りを見回すものの視界に入ってくるのは商人、旅人、買い物客、等々人ばかり。
足を置く交差点にも見知った店は無く、人ごみの中にも知った顔は見つからない。
早い話、彼女は迷子である。
「……確かに此処だった気がするのになぁ。」
世界の交点、と呼ばれる此処“最上位の太陽”こと『アインスフェーブス』。
国土も人口も世界最高を誇る国、国交も盛んで他国から商人も来るため商店街の大きさも尋常じゃない。
“しかたない、とりあえずどこか日陰でクレープたべよ。”と食料品店の多い北側の通りに足を踏み込む彼女。
そのとき、
「お姉さん?ど、どうしたの!?」
背後でした声に振り向く。
そこに居たのは見立て五、六程度の少年。
太陽の光に輝く銀色の頭髪で片目を隠しているが隠れていない片目は綺麗な空色、ダボダボの青いパーカーが妙に似合う。
明らかに焦っている少年、抱えていた紙袋の中で色とりどりな果実が揺れる。
「いや、『夢月夜行』ってお店に行きたかったんだけど迷っちゃって……北通りでクレープ食べようかなって思ってたんだ!!」
柔和に笑う少女の言葉に瞬きを繰り返す少年。
そして開いた口から出たのは、
「お姉さん、あそこ悪人だらけの南通りだよ?とてもクレープ何て……。」
よくよく見れば他の通りとは雰囲気が違う。と言うより全体的に暗い。
「治安の良いこの国で唯一治安の悪い所。そんなところに入って行こうとしてたからびっくりして……お姉さんよく店で見るから……。」
間違いなら良かった、と幼く笑う少年。綺麗な空色に少女が映る。
「ボクね、『流戯』って言うの。夢月夜行のみんなと暮らしてるんだ!」
店まで連れていってあげる、と荷物を持ち直し微笑む流戯。
刹那、小さな体を中心に開かれた空色の魔方陣。同時に少女の赤い目が見開く。
「え!?君その年で移動魔法使えるの?」
「うん。今みたいに、おつかい行くのに便利だからって奏始が教えてくれたの。」
手招きされ魔法陣に足を踏み入れた少女、“あ、そうだ”と何かを思い出したらしく流戯にこう告げた。
「私ね、ティアラ・クラリスって言うのよろしくね流戯君!」
言葉の代わりか、にこりと微笑んだ流戯。
次の瞬間、その場に二人の姿は無かった。