二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: ボカロ [悪ノ娘]現在進行中! 【短編集】 ( No.82 )
日時: 2012/04/03 21:54
名前: 麻香 (ID: 5fqeGTW2)

「シ、シルヴィアナさん‥‥?」

なぜこんな所に。
そう続けようとしたが、その前にシルヴィアナの後ろから女が顔を出した。
シルヴィアナと同じくらいの歳だろうか。
だが丸みを帯びたショートへアで少し幼なく見える。

「誰?この子」

女がシルヴィアナに聞く。
シルヴィアナに敬語なしとは。よほど親しい仲なのだろう。

「セレシュよ」

「あぁ。前にシルヴィが言ってた、使用人の子か」

女はにこりと人懐こく微笑むと、セレシュに近寄った。
そのまま握手を求められ、慌てて握り返す。
女性らしい滑らかな肌ではなく、男のように固くて温かい手だった。
男勝りな口調に人懐こい笑顔。どことなくフィーラに似ている。

「わたしはメル・ラクセス。シルヴィとは、悪ノ娘を一緒に倒してから仲が良いんだ」

「悪ノ娘‥‥‥?」

「あれ、聞いてない?」

‥‥‥いや、聞いたことはある。どこでだっただろう。村を出てから今までを思い返してみるが、わからない。
だがすごく気になった。なんとなくミリアに関係しているような気がしたから。
そして、悪ノ娘という単語を聞いた途端、セレシュの服を掴んでいるイリアナがびくりと震えたから。

「ラキティアナ国の若き王女のことだよ。国民に酷いことをしてた。‥‥‥わたしも、母さんを殺されたんだ」

ラキティアナ国の王女。
大量虐殺を起こした国。ミリアを殺しに来た、レイがいる国。
嫌悪感が再びこみ上げたが、それよりも後ろのイリアナが気になった。
セレシュの背中に隠れるように移動したのが。

どこか晴れ晴れとした悲しい表情で上を向いている、メルという女はそれに気がつかない。
だがシルヴィアナは目ざとく見つけ、笑顔で聞いてきた。

「ねぇ、セレシュ。後ろの可愛い女の子は誰?」

「あ‥‥あぁ、この子はイリアナ。帰る所がないらしいから、わたしと暮らしてるんです」

シルヴィアナは中腰になり、じっとイリアナを見つめた。顔がつきそうなほど。
イリアナの手が汗ばんでくるのがわかった。
しばらくそうした後、シルヴィアナがイリアナの耳元で囁く。

「Your brother is a courageous boy」

セレシュにはわからない異国の言葉。
だがそれを聞いた途端、イリアナは目をかっと見開いて、一歩さがった。
そして後ろには隠れるものが何もないことに気づき、さっとセレシュにしがみつく。

「イリアナ‥‥‥‥?」

唇を噛みしめ、イリアナはシルヴィアナと目を合わせようとしない。
それでもシルヴィアナはなにもなかったように微笑んだ。

「それで?セレシュはここになにしに来たの?」

「あ‥‥‥」

忘れていた。
セレシュは事情を説明しようとして、ふと気づく。

少年がイリアナのペンダントを売った相手。
女性2人。どちらもすごく美人。だけど、どちらもなぜか怖い人。
まさか。

「シルヴィアナさん。ペンダントとか‥‥買いませんでしたか?」