二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【薄桜鬼】 冬の桜 ( No.14 )
日時: 2012/01/19 18:03
名前: 雛苺 (ID: X9g0Xy3m)
参照: 元・悪魔ビビでございます。


 第4話

 「--------り、伊織」
 「ん・・・」
 聞き慣れた低く優しい声が耳に響く。伊織はそっと目を開いた・・・いや正確には右目だけを開いた。伊織はそっと左目に触れ、この不安定な視界の訳を知った。記憶をたどり、あの時の事を思い出す。伊織の左目には丁寧な治療が施されていた。
 「目・・・大丈夫か?」
 「うん。平気・・・少し痛いけど」
 「・・・ごめんな」
 「え?」
 伊織はきょとんと首を傾げる。それに対し、昴は弱弱しく言った。いつもは見上げる昴がとても小さく見えた。
 伊織は少し哀しそうに微笑みそっと昴の頬に手を添えた。
 
 「昴・・・そんな顔しないで?私は大丈夫だよ。目なんて見えればいいの・・それがたとえ片目でも。だから笑って?お願い、昴」

 「伊織・・・」
 伊織の瞳に真っ直ぐ視線を合わせ、昴はにこっと眉尻を下げて笑った。その時静かに襖が開いた。

 「あっ、目覚まされたんですね・・・よかったです」

 部屋に入って来たのは土方の後ろに隠された少年だった。少年はほっとしたように伊織を見て微笑む。
 「あの・・・起きたばかりで申し訳ありませんが、幹部がお呼びしています」
 「あぁ、分かった。伊織、立てるか?」
 「ん」
 伊織は昴の手を借りて立ち上がる。枕元にあった木刀を腰に刺し、着物を正した。
 「では、案内いたします」
 前を歩く少年の後に付きながら昴は伊織の耳元で囁いた。
 
 「こいつ-------------鬼だな」

 「うん。さすが昴、気付いてたんだね」
 「当たり前だろ?・・・でどうすんだよ」
 「大丈夫。上手くやるよ」
 珍しく楽しそうに口の端を上げる伊織を見て昴は思い出した。

 (あぁ・・そういやこいつ---------------------こういう状況大好きだっけ)

 「ふふ・・・」
 小さく・・・そして何かたくらんだような笑みを浮かべる妹を見て、昴は頬を引きつらせた。

 「着きました。ここです」

 少年は襖を開ける。その部屋の中には--------八人の男たちが伊織たちを真っ直ぐ見上げていた。