二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 【薄桜鬼】 冬の桜 ( No.6 )
日時: 2012/01/18 19:07
名前: 雛苺 (ID: X9g0Xy3m)
参照: 元・悪魔ビビでございます。

 第1章

 第1話

 満月の夜。伊織は静かに月を見上げた。丸く大きな月は明るく夜道を照らしていた。
 「伊織?どうかしたか?」
 昴は心配そうに伊織の顔をのぞき込んだ。そんな昴に伊織はゆっくり首を横に振る。
 「なんでもないよ。ただ月が綺麗だから・・」
 「確かにいい満月だよな」
 伊織の言葉に昴はにこっと笑う。伊織は静かに微笑んだ。美しい二人はそれだけで絵になる。ただ・・・場所が民家の屋根の上ということを除けばの話だが。
 
 「うわあああああ!!」
 「ば、化け物ぉ!!!!」

 「!」
 「やっとお出ましか」
 突然の叫び声に昴はにやりと笑った。伊織は冷たい目で声のした方を見る。
 「・・・夜の見回りに羅刹を使うなんて馬鹿じゃないの」
 「こーら!そんな事言っちゃいけません。・・・なんてなまぁいいだろ?おかげで俺は退屈しねぇよ」
 心の底から楽しそうに笑う昴を見上げ、伊織はため息をついた。--------------伊織は鬼が嫌いだ。それがたとえ元は人間でも関係ない。伊織は鬼を心の底から憎んでいた。

 「ひゃははははははは」

 狂ったように血を求め笑い続ける羅刹の前に飛び降りる。
 「よぉ羅刹・・・今日も愉しそうに笑ってんなぁ」
 昴は口の端を上げくくっと含み笑いを漏らした。月の光で出来た自身の影から巨大な-----------鎌を取り出した。漆黒で大きな鎌は地面に影を作らない。
 昴は鎌を振り上げ羅刹を斬った。大きな鎌を器用に振り回す昴とは対照的に伊織は腰に差していた木刀で羅刹の心臓を刺す。普通は木刀は人には刺さらない。しかし伊織の木刀は、対鬼、羅刹用にに昴が作った物だった。

 しばらくして辺りが真っ赤に染まる頃遠くから足音が聞こえた。
 「伊織!帰るぞ」
 「うん。-------------------ッ!」
 伊織の左脚に激痛が走った。視線を向けると、羅刹が伊織の袴に隠れた足を刀で刺していた。
 「・・・俺の妹になにしてる?」
 昴は伊織でさえゾッとする程低い声を出しなおも笑っている羅刹の心臓を一刺しした。
 「伊織!!大丈夫か!?」
 「っ・・・うん・・・平気・・・それより早くしないと人が---------------------」
 
 「おいっ!!お前ら何をしている!!」
 
 気が付くと数人の男達が伊織たちを囲んでいた。
 「ちっ・・・」
 忌々しそうに昴は舌打ちをする。男たちは全員おそろいのたんだら模様の入った浅葱色の羽織を着ていた。1人の男が鋭い声を出した。
 「てめぇらか・・・近頃こいつらを殺し廻ってやがるのは」
 「だったら?」
 伊織はズキズキと痛む足を押さえ冷たく言った。
 「何が理由でこんな事をしている」
 「あんたらには関係ない」
 「そういう訳にはいかねぇんだよ!」
 「・・・だったら・・何故鬼の出来損ないなんかを町に放している!」
 伊織は憎しみの籠もった声で言った。瞬間、男たちが息を呑むのが分かった。こちらに刀を向けている男はその鋭い瞳をさらに鋭くし、低い声で言った。
 「・・・何故、羅刹の事をしってやがる」
 「さぁな・・・わりぃけど帰らせてもらうぜ」
 「そうはいかねぇ!!」
 男は刀を構え斬りかかりに来たが昴の方が早かった。昴は伊織を抱き上げると地面を蹴り高く跳び去った。



 「副長!今の男たちはいったい・・・」
 「分からねぇ・・・だが絶対に捕まえるぞ!!」
 「はっ」
 夜道を照らす月を見上げ土方は低く言い放った。