二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

  I Love You ... ? ( No.2 )
日時: 2012/01/24 17:56
名前:  めーこ ◆RP5U9RTa.. (ID: NzSRvas.)


「先輩!」

 えんりの声に南沢は振り向いた。
 にこにこと愛らしい笑みを浮かべた後輩がぎゅう、と此方に抱き着いてくるのを受け止め、抱き締める代りにぽんぽんと頭を撫でながら問いかける。

「どうした?」

 彼女が"作り笑顔"で抱き着いてくるときはたいてい自分絡みのことだ。前に告白された時は酷く乾いた笑みを張り付けてとても強い力で抱き締めてきたんだよな、と遠い目をして南沢は心の中で溜息を吐いた。
 えんりは南沢の予想通り、むすっと先程の笑みを消し去り眉を寄せて不機嫌そうに話しだした。

「先輩のこと好きな子、多すぎるんですよ」

 何だそんなことか、と南沢は思う。
 正直、南沢もえんりのことは好きなものの、正式に付き合ってくれという告白をどちらもしたわけではなく、恋人とは思われておらず、他人からすれば仲の良い先輩後輩という印象が強いのである。二人とも両想いではあるが、恋人でも何でもない現状に満足はしている。
 が、お互いに独占欲の強い部分があり、えんりは周りの女子が南沢のことを、南沢は周りの男子がえんりのことを気に掛けていると如何しようも無く苛々してくるわけである。南沢は抑えが効くものの、えんりは精神面が非常に弱く傷付きやすい為抑えが効かずすぐに怒り出す、という中々面倒な性格をしているのだ。

「……はいはい、」
「夜野が先輩をいっちばん愛してるんですから!」
「……ばーか、俺もえんりを一番愛してる。だから落ち着け」

 怒っているのか、ぷるぷると体を震わせるえんりに苦笑を浮かべ南沢はその額に口付けた。ぴくり、とえんりが反応し、今まで怒っていた表情が嘘だったかのように笑顔に変わる。何処までも単純な奴だと南沢はくすくす笑い、やがてえんりを優しく離した。
 えんりはそれだけで満足したのかにい、と口の端を釣り上げて笑えば最後に南沢の頬に口付けぱたぱたと校舎の方へ消えていく。其れを見送って南沢もくすりと笑った。


 ——結局、お互いの弱いところは一番知ってるんだよな。


 小さくなっていくえんりを見詰めながらくすりと南沢は再度笑みを零し、自身もゆっくり校舎へと歩き出した。




 I Love You !!



( ずっと愛してる、から )








えんりはとある人をモデルにしていたり、