二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

MonsterInazuma ! ( No.4 )
日時: 2012/02/02 17:57
名前:  めーこ ◆RP5U9RTa.. (ID: Se9Hcp4Y)


 彼女がモンスターを愛したのではなく、モンスターが彼女を愛しただけである。

 つう、と彼女の頬から血が滴り落ちた。
 籠手を取り、素肌でゆっくりと血を拭って彼女はリオレウスをキッと睨みつけた。どちらも引かぬ——否、引けない状況にある。えんりは大事な村の為に、リオレウスは己の、空の王者としてのプライドの為に。
 此処で雌火竜と呼ばれるリオレイアが来たら厄介だな、とえんりは内心舌打ちして気力だけで足を走らせた。感覚はとうの昔に消え去り、気持ちだけで前に前に走る。その速さはリオレウスすら追いつけない程、また、本人も自覚できないほどの速さだった。


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 彼女の記憶に有るのは其処までだった。気が付けば己の手にはリオレウスを討伐した証拠に剥ぎ取った鱗があり、目の前にリオレウスが倒れ、ぴくりと動かないのを見ていた。彼女がリオレウスを狩ったのか、将又はたまた他の誰かが代わりに狩ってくれたのかは分からないが、後者の可能性は低い。リオレウスは強い。わざwざ貴重な素材をえんりに渡す筈が無く、また、えんりに助けられる義理は無い。
 拠点キャンプのベッドに腰掛けながらえんりはぼんやりと己の手を見詰めていた。「まだまだ甘いな」と呟いてえんりはベッドに寝転がる。今度はぼんやり天井を見詰めながらはは、と軽く笑って目を閉じた。心身共に疲れていた彼女はすぐに眠りについた。

「——先輩っ、大好きです、だから、」

 自分の、声がした。
 何も知らなかった頃の、無垢な、自分の、声が。

「忘れないで——っ……」

 聞き飽きた己の声が、すぐ傍で聞こえる。
 何も知らない己が、二度と帰らぬ人の名を呼び続けている。何も知らない己が、帰ってきてくれると信じている。何も知らない、何も知らなかった、何も知りたくなかった己が、泣き叫んで、認めようとせず、大事な人の名前を叫び続けている。顔もおぼろげな大切な人の、名を。

「……愛してる、"   "」

 確かに、心地良い声で、その人は、——違う誰かの名を呼んだ。

 びくり。
 肩を跳ねさせてえんりは飛び起きた。呼吸を乱しながら、胸元をぎゅう、と握り締めて乾いた笑いを溢した。
 下らないなあ、と目を細めて笑い、そしてもう一度ベッドへ身を沈めた。すっかり暗くなった辺りに視線を遣り、寝る前と同じように天井を見詰めた。体の疲れはすっかり回復して、傷跡が目立つも彼女自身疲れは感じていなかった。
 精神的な疲れは、彼女の中に今も残っているのだけれど。

「早く、帰らなくちゃ」

 ぽつりと小さく呟いた。
 この分だと明日の朝には出発できそうだな、とえんりは起き上がり、帰る為の準備を整え始めた。


 モンスターハンター × イナズマイレブンGO


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次回に漸く稲妻キャラ出ます