二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

たった一度、其れだけで良い ( No.10 )
日時: 2012/02/09 19:07
名前:  めーこ ◆RP5U9RTa.. (ID: MoBT/TTN)


 ————……寂しい。

 ぽっかりと心に穴が開いたみたいに、寂しさがオレの中に広がった。寂しさと、愛しさがオレを埋め尽くして、壊していく。その感覚に眩暈を覚えながら、オレは"一生会えない"彼女へ思いを馳せ、ベッドへと身を沈めた。
 ギシリ、とベッドのスプリングが音を立てる。
 見上げた天井は酷くぼやけていて、そっと目頭を押さえつけると生暖かいものがオレの指に触れた。
 泣いてる、のか。
 はは、と笑い声を漏らしながらも涙が溢れてくる。それを指で拭いながら、小さな声で、どうして、と呟いた。

 どうしてオレだけ、会えないんだろう。

 ——あの時、円堂守に敗けたあの時。
 オレ達は出逢ってしまった。愛し合ってしまった。
 だから提督はオレを認めてくれなくなった。オーガのメンバーが再び過去へと向かうのをオレは一人で見ているだけだった。
 通信を入れるのも立派な役目だろう、とバダップは言う。でも、オレは納得がいかなかった。提督がこうしてオレを未来に残しているのは、オレと彼女を会わせないように、だ。
 提督は冷たい人だから、オレと彼女が会えばオレに課せられた任務、否、オーガに課せられた任務に支障が出ると考えているのだろう。

「……アキ」

 最も、その通りなんだけれど。
 アキ——木野秋。彼女はオレの愛した、唯一無二の大切な人だ。アキは敵であるオレのことを愛してくれた。
 ——……二番目だったけど。
 彼女に愛されるなら番数なんて関係ないとは思った。彼女に愛されているだけで、オレは幸せだったから。世界が広がった気がしたから。
 アキが好きなのは、円堂守だった。オレはアキを応援していた。何時だってアキはオレの世界で、アキの世界は円堂守だから。
 オレの世界のアキの世界を壊すのは流石に気が引けた。円堂守に対して良い感情は抱いていない。だってアキを奪ったんだから。

 それでも、オレは円堂守を潰すことはできなかった。

「……アキ、大好き」

 口内で呟いてそっと目を閉じる。
 脳裏に浮かんだ彼女の顔に、もう一度目頭が熱くなった。

「会いに行くよ、絶対に」


 ——————……オレがアキを愛する限り、オレは。




 たった一度、其れだけで良い、
    ( もう一度だけ、彼女に会えたら )









 :/ ミス秋 
  有りですよね、円←秋→←ミス。秋ちゃんの性格が悪いように見えますが。