二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

その先に裏切りが有ると信じて ( No.17 )
日時: 2012/04/17 19:00
名前:  めーこ ◆RP5U9RTa.. (ID: rR8PsEnv)


「御免なさい、迷惑かけて」

 そう頭を下げてニヘラと笑うのは何時もの彼女なのに、何だか遠いような、不思議な感覚がして。
 思わず伸ばした手に重ねられた彼女の手は酷く冷えたもので、夏なのに、と考える頭を反面何故こんなに彼女の手が冷たいのかというのは理解している。
 ——彼女の手をこんなにも冷えさせたのは、紛れもない俺なんだから。
 正確に言えば俺の、俺等のチームのキャプテンとか、もっともっと正確に言うならばキャプテンの父さんとか、そんな存在。
 彼女は雷門という輪の中で手を繋いできっとホカホカに温まっていたに違いないのに、此処には仲良しとか仲間なんて綺麗な温かい言葉は無い。だから彼女の手はとても冷たいもので。
 彼女の手をぎゅ、と両手で握り、無駄だと分かりつつ温まるように軽く擦ってから彼女の手を引いて歩き出す。

「御免ね、私が強ければ良かった」

 違う。
 彼女が謝るのは、根本的に何かが間違っているのだ。
 彼女は、フィフスセクターという大きな大きな組織に盾突くことなく、その命令を忠実に、一言一句覚えたみたいに、正確に、忠実にこなしてきたんだから。
 彼女を責めたてるのも、彼女が謝るのもお門違いで。
 だけど、彼女を責めないというのもおかしい話なわけで。
 裏切りを命じたのはこっちだ。彼女には命令に逆らう権利はある。だけど引き受けたのは彼女だ。なのに向こうのチームに情があり、中々裏切るという行動に移せなかった彼女。
 それは、俺達の敗北にも関わってくることだった。

 別に、俺は俺のチームが弱いと感じたことは無い。
 ただ、出来る限りの情報を仕入れ、完璧な対策をして完璧な勝利を手に入れる。それは、俺達のプライドが掛かったものだった。

「ほんと、ごめんなさ——」
「馬鹿、」

 未だ謝ろうとするのは、俺達のことが怖いからか、罪悪感か。怒っているように、彼女の目に映ったのだろうか?
 彼女の腕を引っ張り、ぎゅう、と抱き締めて遣る。かあっと赤くなった頬に口付け、さらりとした髪を撫でた。
 大きな瞳がさらに大きく見開かれ、ぽろ、と涙が零れ落ちた。

「怒ってねえよ、」
「っでも、」
「お前、さ、雷門行けよ。お前の手、このチームじゃ温めらんねえよ」

 こっちまで泣いてしまいそうだった。
 彼女の手にそっと触れる。——ほらね、やっぱり冷たいままじゃないか。彼女はうう、と小さく唸って、俺の胸に顔を埋めた。
 ごめんなさいごめんなさいと何度も謝る彼女の後頭部に手を回し、顔を埋めさせ、気の済むまで泣かせてやる。
 小さい頃は、彼女にこうやって抱き締められてきた。
 10歳の頃まで彼女は俺より大きくて身長も高くて、だけど彼女の身長が、時が止まった。俺や周りばっかりが大きくなっていく。彼女は段々と小さく見えて行った。彼女の親が死んだ頃からだ。
 彼女は童顔だから、余計に小さく見えて仕方なかった。
 抱き締めると、壊れてしまいそうだった。

「……あ、りがとうっ、」

 そう言ってはにかむ彼女の胸元に見えたシルバーネックレスに見覚えは無くて。
 そりゃあ恋だってするよな、もう中学生なんだ。子供じゃ、無いんだよな。
 名残惜しいことを悟られないよう、あくまで離れるつもりでぎゅうっと最後に強く抱き締めそれから彼女を解放した。

「だいすき、——徹郎!」

 嗚呼、彼女はまた遠ざかって行くのか。





その先に裏切りが有ると信じて
 (そうじゃないと、彼女を送り出せるわけがない)







南沢さんが雷門に居る設定で護えん(御縁みたい、笑←)(護夜?)風味。
あくまでメインは南えん、なんだけど……。
護巻と大和とえんりは幼馴染っていう俺得設定。

何だかんだ言ってえんりが好きな護巻と大和可愛い。
だけどえんりは先輩一筋。