二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 少年陰陽師*神将と月将を使役せす者達* ( No.4 )
- 日時: 2012/01/25 19:33
- 名前: 翡翠 (ID: CWo1/r7X)
〜序章〜
あの日、先代であり、玉依姫と呼ばれていた母様は亡くなってしまった。
“玉依姫”とは家系内でもっとも霊力の高い人間のことをその様に呼ぶ。
私が生まれてから、五歳になるまで玉依姫の座は母様のものだった。
でも、それも、母様が亡くなってからは違った。
掟によって、霊力の高い者が玉依姫となる。
と、もう一つ、条件があった。
それは、『十二月将』を使役する才を持ち得る者かと言うものだった。
当時、私はまだ、やっと喋れるようになった五歳児で、流石にこんなに小さな幼子に十二月将が従うはずもないだろうと、討議もあったらしい。
例え、母親が十二月将の主だったからと言っても、この子にはまだ無理だろう、と。そんな言い争いが続くいたある日のことだった。
安倍家の安倍晴明様が玉依家に尋ねてきたのは。
友好関係の家柄でもあった安倍家の人間が来訪したことによって一時的に言い争いは収まったがそれも晴明様が言葉を発したことによって再び再開することになる。
晴明様が告げたことは、こうだった。
『その子はやがて立派な玉依姫となることでしょう。それも、先代を超えるほどの。しかし、今はまだその時ではない。——どうでしょう、その時が来るまでその子を安倍家に、いや、この安倍晴明に預けてはくれませぬか?』
急な申し出に玉依の者は皆が皆戸惑った。
確かに安倍晴明はこの都でも先代と同様名の知れた人ではあったが、大事な跡継ぎを預けても良いのか、と。
沈黙がその場を覆ったが、最終的に玉依の者は安倍晴明にその跡継ぎである、琥朝を預けることとしたのだ。
——そして、私が安倍家に来てから、もう、十二年と少し。
安倍家に来るとき、私が持ってきたのは母様の唯一の形見である紅い勾玉だけだった。
そして、日々は過ぎていき、私がもう、十七になった日のこと。
安倍家の人達は賑やかで温かくてとても優しかった。
そんな中、晴明様からずっと聞かされてきたことがあった。
それは、“十二神将”と“十二月将”の存在。
何でも晴明様は神将の主であるらしく色々と私がこの家に来たときから話して聞かせて下さった。……そして、最近になってようやく彼等の姿がはっきりと目に映るようになった。
突然見えるようになったことに驚いたけれど、今ではもう、十二神将の姿を見て話すことにもすっかりと慣れている。
急に見えるようになったのは私の霊力が知識を得て日々を重ねて体が成長するごとに格段に上がったからだそうだ。
それを聞いて、とても嬉しくなった。
霊力が上がったということは、母様がその座に居た、玉依姫に近づけたってことだから。
それがとても、嬉しくて胸が高鳴って、真っ青で美しい空を見上げたときのこと。……それは空から、突然、私の目の前に降ってきた。
「ってぇ……」
空から降ってきたのは明らかに異形のもので、大きさは犬や猫とほぼ変わらないくらいに思えた。黒い毛並みに金の瞳と銀色に輝く額の模様が印象的に思えた。
「……」
何も言うことが出来ず、無言でその異形を見つめていると、
「何、ジロジロ見てるんだよ……」
……喋った。
確かに喋ったのだ。確かに異形の物の中には人語を理解し話すものも多いがどうゆうわけか、この異形が喋った事実には驚いてしまった。
「貴方……何処から入ってきたの?」
咄嗟に出た言葉はこんなこと。
だって此処は安倍邸の敷地内。並の妖怪や異形では進入など不可能なはずだ。それなのに、この異形は空から降ってきたのだ。
「あぁ? 俺をそこ等の奴と同じにするな」
何だか怒ってるみたい。
だけど、それよりも……。
私の手はまだ何か言おうとしている異形に伸びていき、そして、捕まえた。
「うぉっ!?」
「やっぱり、ふわふわする!」
異形を捕まえた瞬間、私は頬をすり寄せて抱き締めてその抱き心地を堪能していた。……何かこの毛触り癖になりそう。
そんな風に思いながら擦り寄っていると、異形が暴れだす。
「こら! 離せーーっ!」
「暴れないでよ! 異形さん!」
「……」
私の言葉を聞いた異形さんの動きがピタリと止まった。
よかった、暴れるのやめてくれた……。
そう思えたのもつかの間で次の瞬間には異形さんの絶叫? が安倍邸に響き渡っていたのは言うまでもない。
「だーれが、“異形”さんだってーー!!!」
——これが私達の最初の出会い、こんな出会いだったけどこれから長い付き合いになるのだから、縁とは不思議なものである。