二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 夢中結愛信仰歌 【inzm】 ( No.71 )
- 日時: 2012/03/23 16:58
- 名前: 颯(元、天音) (ID: HSCcXZKf)
- 参照: 解明してみた。
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「よっ、と。」
がさがさと枝を掻き分け、垣根の隙間から身体を滑り込ませる。
そして制服の至るところにまとわりついた木の葉やらを払い落とし、一息。
「も……死ねよぉ。」
「嫌だよ。」
やはり眠っていたのか、浮ついた声で理不尽な暴言を吐く馬鹿の頭を小突き、はっきりと拒否宣言。
それが気に入らなかったのか、ふいっと明後日の方向を向いた従兄弟を横目に、赤い双璧が写したのは見知らぬ顔の少女。
紺色のボブヘアーに同色の瞳、頭に乗せた可愛らしい赤い眼鏡。そして、見たことの無い制服からして此処の生徒で無いことは明確。
いきなりの第三者の登場に目を丸くする彼女は言葉が浮かばないのか、地に揚げられた魚の如くぱくぱくと口を開閉するのみ。
本当なら結祈を引っ張り帰路に着きたいところだが染み付いた良心がそれをゆるさず、
「……あの、どうかしましたか?」
自然と口が動いた。
他人に気を掛け過ぎだ、と自身でも思いはするが、これが性なのだから仕方がない。
一度手放したものが帰ってくるとは限らないのだから。
気が付けば、目の前でしどろもどろになる少女に無意識に他人の面影を重ねる自分が其処に居て。
(それは哀れな奏者の愚行、あれは何時かの聖女の消失)
ざわり、色鮮やかな花弁が舞う。
「あらあら、随分と楽しそうな御様子で。」
「当たり前だろ?こんな大掛かりなゲーム、楽しくない訳がない!」
狂ったように、けらけらと声を挙げる誓許。
そんな彼の隣に怪しく揺らぐ二つの金色。特徴的な編みかたを施した髪は、毛先に連れて白くなっていく黒髪。
「悪趣味、と言いたいところですけどそれは私も変わりませんから言えませんね。」
「……幾千年も生きて、色々と見て来たアンタだ。実際何とも思ってねぇだろ?“グロリア”。」
ククッと小さく笑う誓許に、グロリアと呼ばれた黒い少女は肯定の意を示す。
そして、
「私の場合、悪趣味と言いましょうか……こんなことをしたりするのも好きですよ?」
すく、と立ち上がり何を思ったのか、片手でゆるりと宙を凪ぐ。
「鮮やかな花も素敵ですが、
“花の死体”も中々に美しいのをご存知ですか?」
刹那、視界を彩ったのは文字通りに色を無くした、枯れ果てた花園。
「……本当、アンタは恐ろしいや。」
肩の横に両手を挙げ、そう零して見せる誓許。
ふんわりと微笑みを返したグロリアの手中では黒く色を変えた花がぐしゃりと音を立てていた。
「恐ろしいのは私ではありませんよ。本当に恐ろしいのは貴方のところの“聖女”様ですよ?」
(それは余りにも無惨で、余りにも美しい。)