二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: 夢中結愛信仰歌 【inzm】 ( No.77 )
- 日時: 2012/04/30 11:01
- 名前: 颯 (ID: y3VadgKj)
-02-
音無をコートに送り届けたのが、今から一時間程前のこと。
「そーしー、其処にある僕のケータイ取ってー。」
家に帰るなりさっさと着替えた結祈は、今や長袖パーカーにショートパンツと軽々しい格好で畳に寝そべっていた。部屋の入口付近を我が物顔で陣獲り、ころころと転げ回る姿は非常に腹立たしい。
そのため、
「邪魔、どけ。踏み潰すぞ、サッカー部の脚力なめんなよ?」
「……君がケータイ取ってくれたらどいたげる。」
希望が叶うこと無く、足蹴にされたのは当然だったのだろう。
「い、痛いッ!痛いからぁ!!」
「……煩い。誰が悪いかよく考えろ馬鹿。」
げしげし、と容赦なく蹴られる姿はさぞかし滑稽なことであったに違いない。
「……ね、わたし達ってさ、」
「……絶対気付かれてないよな。」
その証拠とでも言うかのように、今しがた部屋の入り口に姿を現した二人の少年少女は薄ら笑う。
「そろそろ結祈が可哀想だし、止めてあげようかな……?」
美しい金髪に光を弾かせ、明るい緑の瞳は細められた。
「ったぁ……、まったく何するんだよぉ……。」
“悪いのは頭か、頭なのか?軽い衝撃加えれば良くなるのか?”
と、軽いどころか重点的に目一杯蹴られた頭をさすりつつ少女は呻いた。
ばっさばさに乱れた頭髪を手櫛で直そうとするものの、自分を散々蹴飛ばした従兄弟のそれよろしく、癖の付きやすい面倒な髪質はなかなかどうして直ってくれず。
むっすぅ、と擬音語が見える程あからさまに顔に出せば、聞こえてくるのは笑い声。
「ふふ、やっぱ結祈は幼いなぁ。」
「奏始も大変だよな、こんなのとずっと一緒に生活してるとか。」
「……煩いよ哀零。それと真翔、喧嘩売ってるの?高値で買い取るけどどうする?」
自身が招いた客人達にじっとりとした視線を突き刺し幾秒、結祈はふん、とそっぽを向いた。
「……だからそんなところが幼いんだろ?」
赤目を伏せ、奏始は小さく呟いた。
そんな彼の上着ポケットで携帯電話が着信を知らせていたことなど、誰一人として気づかないのだ。
「奏始の奴……出ないな。」
鳴り止まないコール音をBGMに軽く舌を打つ。
客で賑わう白昼のショッピングセンター。ざわざわと通り過ぎていく人々を横目に小さく吐いた溜息は、自らの弟分に対する呆れやらなんやら。
「……さて、どうするかなぁ。」
気怠そうに開かれた青黒い瞳。
青年は模索する。
して、数秒後。
「あ、そう言えば。」
“今アイツって京都にいるんだよな?”
思うが速い。
持ち直した携帯をカチカチと操作し、ニヤリと笑う。さながら悪人の様な笑みは何処かの誰かと酷似しており、嫌でも通り過ぎる人の目を引く。
断続的な音の後にコールが鳴る。
一回、二回、三回。四回目の途中で途切れたソレの代わりに聞こえたのは、
「あ、もしもし?
……久しぶりだなぁ、“有人”。」
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神坂祈守/コウサカ_イスズ
言わずもがな奴の兄。
(お知らせ。)
次期主人公の名前を変更します。
空城灯織/ウツシロ_ヒオリ