二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ

Re: 魔天使マテリアル<悪魔と人間のはざまで> ( No.21 )
日時: 2012/02/26 10:50
名前: 柳 ゆいら ◆JTf3oV3WRc (ID: z52uP7fi)

>>>愛弓さん

更新頑張ります!
そして、今から更新します!

って、お気に入りに登録してくれてるんですか!? ありがとうございます!!

3.水晶



午後5時14分。
神舞町デパート前に、サーヤたちは来ていた。そこは、神舞町で1、2を争う大きなデパートで、7階建て。中には、ふだん使う物から特別なときに使う品まで、すべてがそろっている。その店の数、約50以上とも言われているほどだ。
この中から悪魔を探し出すのは、困難だろうと、ひとりをのぞき、思っていた。

志「3〜5階には、雑貨洋品がたくさんあるようですね。水晶なんかもありそうです。」
光「水晶?」

志穂の「水晶」という言葉に、光(予知睡)が肩を震わせた。志穂は一瞬、きょとんとしながらも、コクリとうなづく。

志「はい。アンティークショップなんかもありますから。」
光「アンティークショップ、か……。」

光は、苦虫をかみつぶしたような顔をして、ななめ下を向いた。その横顔は、切なく、悲しみばかりが浮き上がっているように、サーヤには思えた。

サ「予知睡君?」

サーヤに呼ばれ、やっと光は我に返ると、さっきのようにとげとげしい口調で言った。

光「『予知睡』じゃなくていいって言っただろう。だいたい、下の名前で呼べ、とも。光って呼べ。」

光はぷいとそっぽを向くと、ずんずんひとりで、デパートの中に入っていく。
その後ろ姿を、三人はため息をつきながら追いかけたのだった。



サ「わあ、きれい!」

サーヤは、代に置かれた紫水晶をながめながら、大きくため息をついた。
ここは、4階にある石屋。おもに手頃に帰る石が多いが、この紫水晶は特別、4000万円の値段が付いていた。
こんな高い物をわざわざ買いに来る人なんているのかなという疑問はありつつも、その美しさと大きさに、サーヤは思わず見とれた。

サ「こんなにきれいで、こんなにおっきいんだったら、4000万円も無理ないかも。」
志「そうですか? 無理ありすぎでは?」
光「もっと高いの、僕は見たことあるよ。たしか……ダイアモンドの指輪で、10億円のを。」
サ「えぇっ、た、高すぎ!」

光の言葉に、思わずサーヤが声を上げた。光は苦笑すると「事実だからね。」と言った。
ハッとして今考えると、デパート外での光の様子と、デパート内での光の様子は、ずいぶん違っていた。おそらく、マテリアル保持者がいないところでは、優しく振る舞っているのであろう。

徹「なぁ〜、なんか食おうぜ。腹減ったぁ〜〜〜。」

徹平がうめくと、志穂は大きくため息をついた。

志「まったく、稲城さんったら……。」
光「しかたありませんよ。どこかでおやつにしましょうか。」
徹「うっしゃあ! メシ!」
光「ただし、リーダーは自腹でお願いしてもいいですか?」
徹「なんで俺だけ!?」

徹平の問いに光は答えず「Eiffeltower(エッフェル塔)」という看板の出された店に歩いていく。その後ろ姿は、ボーイッシュな女の子にも見てとれるほどかわいらしいものだった。
なのに、あんな性格だなんて……と、サーヤはちょっともったいない気持ちになった。
と、いうのは、当の本人には失礼なのだろうが。
また、志穂と言えば、光のマテリアルのことばかり考えていた。
そして徹平は、何を食べるかしか考えていないのはあたありまえ。
そんなこんなで、みんながボーっと立ち尽くしていると、光は振り返り、

光「なにやってるんですか? 早く来てくださいよ。」

と満面の笑みを向けた。内心、きっとうんざりしているんだろうなとサーヤはひとり考える。
しかし、志穂と徹平がうなずき、走っていくと、サーヤもそのあとに続いて走っていく。
と、その瞬間。

サ「痛っ!」

突然首筋にピリリとした痛みが走った。
これは——

全(悪魔!?)
女「キャアッ!」

人ごみの中で、ひとりが悲鳴をあげた。
見やると、男性がひとり、倒れているのが見えた。
光はチッと舌打ちする。

光(おそかったか。)

光はぐるりとあたりを見まわした。悪魔を見つけられるかと思ったが、さすがにこの大勢の人々の中では無理がある。

光(やむを得ない。“力”を使うか。)

いやいや使う、というわけでもないのだが、少しめんどうくさい気持ちになった。
光は、体力を消耗させるのは、あまり好きじゃないし、つかれは相当使わないと襲ってこないが、使い分けがめんどうくさいのだ。
光はまぶたを閉じ、一気に気を集中させる。
すると、まぶたに光りが差し込んだ。デパートの中での、さっきの出来事。この数分後の映像である。
人々が普通に行き交う中、人がまたひとり、たおれるのが見えた。
光はそれを見ると、その人の外見をじっくり見て行く。
青い帽子、黄色い服、茶色い肩までの髪で女の子。だいたい6歳くらい。
そこまではあくすると、光はゆっくり目を開けた。さっきと似たような光りが飛びこんでくる。
しかし、目の前にはサーヤがドアップになっていた。

光「わあっ!」

光は思わずのけぞり、そのまま後ろに頭からたおれるハメになった。
打ちつけた頭をさすりながら、キッとサーヤを睨んだ。

光「なにするんだ。」
サ「え、いや、ずっと目をつむったままだから、どうしたのかなーって……。」

サーヤがうつむきかげんに光を見た。その目には、純粋に心配していた、という気持ちが表れている。
光はそれを見取ると、大きくため息をついた。
しかし、次の瞬間、ハッとし、あたりを見まわす。さっきはあくした人間をさがしあて、その人を徹底的にマークしなければ。
チラリと、6歳くらいの女の子が見えた。

光「ちょっと着いてこい!」
サ「え? う、うん。」

三人は光の突然の行動にとまどいつつも、後に付いていく。

志(なにか、分かったんでしょうか?)

疑問をいだきつつも、志穂はいそいであとについて行くと、いきなり光がストップした。もちろん、あの女の子のうしろあたりでだ。

徹「んでいきなり止まるんだよ。」
光「ちょっと黙ってて。もうすぐかもしれないんだから。」
徹「なにがだy 光「いまだ!」は!?」

飛び出した光の瞳は、
紫色に輝いていた。そして、そのつき出した左手には、青白い光りが!

光「光りよ、邪悪な力を打ち抜け!」

光の指先は、女の子の高等部より少し上を指している。なんとなく状況がつかめたサーヤは、いっきに青ざめる。

サ「ダメ!」

指先から光りの砲弾が放たれた瞬間、思わずサーヤは飛び出し、女の子を抱くと、たおれこんだ。
そのおかげで光りの砲弾はあたらなかったものの、壁には大きな穴が開き、光の顔は、険しいものとなった。

光「おまえ……!」
サ「なんで女の子にこんなこと……!」
光「ジャマしないでくれ! おかげで敵を倒しそこねたよ!」
サ「え……?」

サーヤは思わずきょとんとしてしまった。
光は瞳の色をもとに戻し、女の子を立たせると、そのまま行かせ、再びサーヤをきっと睨みつける。志穂と徹平も、ゆっくりふたりの近くに寄りそった。

光「おまえがジャマしなきゃ、奴はたおせたんだ……!」
サ「でも、女の子にあたっちゃ……。」
光「あんなの、きちんと計算してやってるに決まってるだろう。」

さけんではいないものの、怒りのこもった声が、サーヤに降り注ぐ。
しばらくの静けさを打ち破ったのは、志穂だった。

志「あっ、悪魔!」
全『えっ!?』

光以外のさんにんが一声にふり返ると、そこには、黒いもやをまとった、白いチョウチョウ。
気づかれたと察したのか、そのきれいな羽根を、ゆっくり羽ばたかせて逃げてゆく。

徹「待て!」

徹平、志穂、サーヤは、いそいでチョウチョウを追いかけた。