二次創作小説(紙ほか)※倉庫ログ
- Re: イナズマ 【幻想で響くシャンソンは】 東方project ( No.37 )
- 日時: 2012/04/22 18:46
- 名前: ドロップ ◆8WWubVa7iM (ID: Jp7wPE2D)
『東方幻奏夢』
ぺらっ…ぺらっ……
本のページをめくる音だけが、人形屋敷に響いている。
それ以外の音は、まったくと言っていいほど、静まり返っていた。
そんな屋敷の中、魔法使いが声を出した。
「ねぇ、魔理沙。」
— 七色の人形使い アリス・マーガトロイド —
「ん〜?どうしたぁ?」
人間の魔法使いは、本を読み、眉を寄せながら返事をした。
「貴方…魔女になる気はないの?」
魔女。
それは、人間が人間を捨て、妖怪になる一つの手段である。
「貴方なら、魔法使いじゃなくて、立派な魔女になれると思うの。」
魔法使いと、魔女の違い。
魔法使いは、人間が魔法を使えるようになった時の称号。
魔女は、人間が妖怪となり、魔法使いよりも自由自在に魔法を使える称号。
「そう、だなぁ……」
魔理沙は、わざとらしく考え込むしぐさをしている。
「私は、魔法使いのままでいいかな。」
「…何故?
魔法使いなんて、魔女きどりの人間よ?」
「あぁ、だから私は魔法使いであり続けるんだぜ。」
魔理沙は、パタンと魔導書を閉じると、
満面の笑みを、アリスに向けた。
「私は、ずっと人間であり続けていくって、決めたんだ!」
「…そう、貴方は妖怪にはなりたくない…そういう事ね?」
アリスの表情が、能面のように消え去った。
「———なら、」
響く爆発音。
それも、一つではない。何度も、何度も爆発していく。
「アリス!?一体、何を——っ」
「幻想郷とともに、去りなさい。」
‡ ‡ ‡
「幽々子様〜?」
冥界のお城、そこで妖夢は手を口の周りに当て、少し大きめな声で発した。
「あら、妖夢。
もう帰ってきたのね。」
「それはこっちの台詞ですよ〜…
幽々子様も、紫様との話し合いはすんだんですか?」
「すんだから、ここに居るんじゃないのぉ。」
幽々子は、ゆっくりと優雅な笑みをこぼす。
「あ、幽々子様、今日の晩ごはんは何にします?」
「…そうねぇ、最後の晩酌ぐらい、豪かじゃないとねぇ……」
「…幽々子様?それって、どういう……」
幽々子は、普段と変わらない表情で、妖夢にいった。
「そのままの意味よ?」
妖夢は、その言葉に暫し動揺していた。
「最後って…い、意味が分りません。」
「もう…妖夢って、そんなに頭が悪かったかしら?」
全くかみ合わない、二人の会話。
「妖夢、貴方は私の指示通りに行動すればいいの。
いつだって…貴方は、そうしてきたでしょう?」
「な…なんの話ですか?」
「妖夢、私からの最後の指示よ。」
その瞬間、桜が舞った。
蝶が舞った。
そして————
「幻想郷を、出て行きなさい。」
西行妖が、咲き誇っていた。